インタビュー

Interview 使用電力量をコントロールすることで省エネルギーを追求する。

当社では、エネルギーを有効に活用するためのさまざまな取り組みを行っています。電車を動かすには電力が必要であり、電車に搭載した回生ブレーキによって発生した「回生電力」の活用もその一つです。昨年度は、それまで以上に回生電力を有効に活用することで、電力会社から受ける電力量の低減を実現しました。今回は、この取り組みについて、日々電力の有効活用を考える担当者に話を伺いました。

回答者

小田急電鉄株式会社
電気部 電気司令所 司令助役 稲村 学さん

全線に30カ所ある変電所・開閉所の運転状態や全線への送電状況を24時間体制で監視するなど、電車を正常に走らせるための電力の安定供給を司る役割を持つ電気司令所において、司令助役として従事。回生電力の有効活用策の検討についても、同司令所において中心的な役割を担っている。

 

―――はじめに、回生電力とはどのようなものか。そして、回生電力を生むための仕組みについてお聞かせください。

 

自転車のライトを点灯したとき、ペダルが重くなった経験はないでしょうか。モーターを発電機として利用するブレーキを「回生ブレーキ」、そのときに発生する電気を「回生電力」と言います。自動車のハイブリッド車もモーターを発電機とした「回生ブレーキ」を搭載し、発生した「回生電力」を充電して走行に利用します。電車では、発生した「回生電力」を架線に戻して近くの電車に利用させます。

―――では、その回生電力の有効活用が、なぜ省エネルギー化につながるのでしょうか。

電車を走らせるには、一定量の電気によるエネルギーが必要です。例えば、電車1車両を走らせるために必要な電力量を100kWhと仮定します。このうち、95kWhを変電所から供給されたもの、5kWhを回生電力で賄ったものとイメージしてください。

次に、この内訳を、変電所から90kWh、回生電力から10kWhとするよう割合を変えてみます。そうすると、回生電力はいわば自家発電によるものですので、必要な電力量は確保しつつ、変電所から得る電力量を5kWh分削減できたことになるのです。

つまり、電力会社から供給される電気の使用量を抑えることで節電につながり、ひいては、電気を生むためのさまざまなエネルギー資源を守ることにもつながると考えています。鉄道会社が使う電力量はとても多いものですから、回生電力量を増やし有効的に使うことは、省エネルギー化に十分貢献できると思います。

―――ちなみに、回生ブレーキを搭載した車両は、どのくらいあるのでしょうか。

当社保有のものでは、全ての通勤車両に回生ブレーキを搭載しており、特急車両を含む搭載率は98.8%となっています。

―――それでは、回生電力を生むための回生ブレーキ搭載車両は100%に近い状況にあり、つまるところ、回生電力量はこれ以上増えないということなのでしょうか。

いえいえ、回生電力は十分に確保できている状態にあり、むしろ、それをまだまだ有効に活用することができるというのが課題認識です。

複々線が完成すれば、列車本数を増やすことができますので、必然と運転電力量は増えますし、回生電力も増えます。このことを見据えて回生電力を使う割合を増やし、変電所から受電する電力量をより削減しようと、運転車両部、安全・技術部といった関係部署と連携して、回生電力の有効活用を推進するプロジェクトを2010年度から立ち上げ、現在も研究を重ねています。

 
ロマンスカー・VSE(50000形)も回生ブレーキを搭載
 
電力量の使用状況などを蓄積し、有効利用を追求

例えば、朝夕のラッシュ時間帯に比べれば、列車本数が少ない時間帯があります。この時、発生した回生電力を使えるはずの電車が遠くにあり、うまく供給することができないケースがありました。そこで、電車に搭載している回生電力を架線に戻す機器を調整し電圧を上げることで、回生電力の供給範囲を拡大したのです。電車、架線両方の調整が必要であり、実行と検証の繰り返しでしたが、変電所からの受電電力量の削減につながることが確認できました。

また、上り、下りと同一方向を走行する電車のみに回生電力を供給する状態にあった区間で、ジャンパー線という、離れた上下線の電気回路間をつなぐ「上下一括き電方式」を採用しました。結果、逆方向を走る電車にも回生電力を供給することができ、これも有効活用策の一つとなりました。

 
 

―――回生電力を効率的に使えるようにし、いかにその割合を増やすか、ですね。そして、それが省エネルギー化につながると。

そうです。先ほどの回生電力を架線に戻す機器の調整では、それまでの架線電圧1,650Vを1,700Vへと、回生電力を50V分上乗せできる環境にしました。

他に、変電所にある変圧器の出力切替というのも行っているのですが、こちらは、通常1,500Vに設定している架線電圧を1,470Vに引き下げ、受電電力量を減らしています。替わりに、回生電力を30V分上乗せして使う環境をつくっているということなんです。つまり、合計して80V分の回生電力使用量を増やしたことになるのです。

 

使用する回生電力を増やし、一方で受電電力量を減らす。まさに省エネルギー化を実感できる結果が見えてきました。このことは、車両1両を1km走行させるために必要な電力量を示す「運転原単位」という数値結果にも表れています。2014年度の1.704kWh/car・kmに対し、2015年度は1.637kWh/car・kmと、1日あたりの運転電力量は約3%減少しました。

しかし、これで終わりというわけではありません。当社では、受電電力の削減目標を設定しており、その実現のためには、さらなる回生電力の使用量増加が必要です。今後も実行と検証によって省エネルギー化を追求していく考えです。

 

―――貴重なお話、ありがとうございました。

※ 内容は2016年9月現在のものです。