「環境負荷の低減」への取り組み

企業活動は、社会との関わりなくしては成り立ちません。資源を限りあるものとして、エネルギー効率を高め、廃棄物を少なくしていくことは、持続可能な社会にしていくために不可欠であると考えています。

電車は便利な移動手段であると同時に、自動車や飛行機といった他の交通機関と比べてもエネルギー効率が高く、地球温暖化への影響が少ない乗り物です。しかし、列車運行には多くのエネルギーを必要としています。

電車や施設の更新時には、最新技術の導入や自然エネルギーの活用などにより、使用電力の削減を図っています。また、列車運行の際の振動・騒音は鉄道会社にとって重要な問題であると同時に、乗車されるお客さまの乗り心地にも大きく影響します。車両と軌道の双方を工夫し騒音・振動を抑制するとともに、廃棄物のリサイクルにも努めています。

列車運行の環境負荷を低減する取り組み(イメージ)
 

使用電力の削減

(1)車両

当社では、運転用電力量の削減に効果のある回生ブレーキを搭載した車両を省エネルギー車両と呼んでいます。

2007年から導入を進めている省エネルギー車両の4000形車両では、旧型の5000形車両と比較して使用電力を46.8%削減して走行することができます。また、1000形のリニューアル車両は、リニューアル前と比べ使用電力を40%削減することができました。2016年度末時点で、4000形車両や1000形リニューアル車両を含め、省エネルギー車両の導入率は98.8%です。

車体の軽量化の推進

鋼製の車体からステンレスやアルミニウムの車体に変更し、車体の軽量化を図っています。現在、1988年に走行を開始した1000形車両からステンレス車体を、また、ロマンスカーは2005年に就役したVSE(50000形)からアルミ車体を採用し、これらの車体の導入率は2016年度末時点で70.7%となっています。

ステンレスは鋼製の車体と比べ、1両編成で2トン程度の軽量化が図れるとともに、さびにくく車体を塗装する必要がないため、定期検査時に使用する塗料(※1)や塗装乾燥用の燃料(※2)を削減できます。2016年度はステンレス車体の定期検査車両が178両だったため、塗料3506.6kg、燃料(都市ガス)8561.8立法メートルを削減できた計算となります。

  • ※1 1両あたり19.7kg
  • ※2 1両あたり48.1立法メートル

VVVFインバータ制御装置の導入

VVVFインバータ制御装置は、電車の加減速を効率よくコントロールするものです。以前の抵抗制御の電車は、抵抗で電圧を変えることによりモーターへ流れる電気をコントロールしていました。この方法では電気を抵抗で熱消費させていることになるため、効率は良くありませんでした。一方、VVVFインバータ制御は、抵抗を使わず交流モーターの電圧や周波数を変化させるため、抵抗制御の電車と比べて消費電力を4割以上削減できるようになりました。当社では、1988年に運転を開始した1000形車両以降、このVVVFインバータ制御装置の搭載車両の拡大を図っており、2016年度末時点で導入率は97.6%です。

なお、2014年度より運用を開始した1000形リニューアル車両と2016年度より運用を開始したEXEαには、主回路素子に世界で初めてフルSiC(炭化ケイ素)素子を採用したVVVFインバータ制御装置を使用しています。これにより1000形リニューアル車両は、制御装置の大幅な小型軽量化(体積・重量約80%減)と、消費電力削減(約40%)を両立できたことなどが評価され、第12回エコプロダクツ大賞 優秀賞を受賞しました。

また、温室効果ガスの削減効果が高い車両の導入を促進している「エコレールラインプロジェクト事業」(国土交通省連携事業)からも支援を受け、今後も順次、車両のリニューアル時にフルSiC素子を使用したVVVFインバータ制御装置への換装を進めます。

  1000形リニューアル車両VVVFインバータ制御装置(赤枠部分)
eco products awards 2015
 

回生ブレーキの有効活用

回生ブレーキは、電車がブレーキをかけたときにモーターを発電機として作用させ、発生した電気を架線に戻して、運行している他の電車のエネルギーとして再利用(回生)する仕組みです。

当社では、エネルギーの有効活用の観点から回生ブレーキの搭載を推進しており、2016年度末時点で98.8%の編成にこの装置を採用しています。

また、回生電力を有効に活用するため、変電所から架線に送る電圧を30V下げ、車両から架線に戻す電圧を50V上げ、回生電力の使用量を増加させました。また、新松田〜小田原間や江ノ島線では、上り線と下り線の架線をジャンパー線という電線で結び、上下線を問わず回生電力を使うことができる「上下一括き電方式」を採用するなど、回生電力を有効に活用して運転用電力量を削減しています。

 
 

LED車内照明/側面行先表示器消灯制御の採用

電車の車内照明は、長寿命で省エネ・節電効果に優れたLED照明に順次交換し、節電に向けた取り組みを推進しています。

車両側面の行先表示器は、乗車されるお客さまに電車の種別・行先をお知らせするためのものです。しかし、駅間の走行中や車庫内では表示の必要がないため、新型車両や車体を更新した一部の車両では、消費電力の削減とLED式表示器の寿命の延長を目的に消灯制御(※)を導入しています。

なお、消灯制御は、2016年度末時点で68.3%の車両に導入済みです。

  • ※ 速度50km/h以上で消灯。速度45km/h未満または停車駅手前450m地点で点灯

熱線吸収・UVカットガラスの採用

赤外線・紫外線をカットすることで車内温度の上昇を抑え、冷房負荷を軽減し運転エネルギーを削減しています。2016年度末現在、68.9%の車両に採用されています。

 

(2)駅施設

自然エネルギーの活用

太陽光発電

太陽光発電は、11カ所の駅、4カ所の小田急グループの商業施設のほか、喜多見電車基地にメガソーラを設置して、年間で約796,000kWhを発電しています。

駅で発電した電気は駅構内の照明や多機能券売機、自動改札機、エレベーターなどの電力として使用しています。

小田原駅の太陽光発電パネル 小田原駅の太陽光発電パネル

自然採光(ガラス屋根、トップライト)

全線の多くの駅で自然採光方式を採用しています。駅舎の屋根や壁に、透明なガラスなど採光性のある素材を用いることで太陽光を採り入れやすくし、特に、昼間の時間帯では照明を間引いたり、消灯したりすることができます。

トップライトを採用した東北沢駅のコンコース トップライトを採用した東北沢駅のコンコース

地中熱ヒートポンプシステム

一般的なエアコンは、屋外の空気を利用して室外機(ヒートポンプ)で冷媒の温度を下げ、室内を冷やします。また、発生した排熱は、室外機を通して大気中に放出します。

一方で、地中熱ヒートポンプシステムを使ったエアコンは、地中にホースを埋め込み、一年を通じて15℃と一定している地中の温度を利用して冷媒の温度を下げ、排熱は、再び地中に放出します。地中熱ヒートポンプシステムは、日本の鉄道の地下トンネル区間では初めて東北沢駅と世田谷代田駅に設置され、1年間を通して、一般的なエアコンと比較して使用電力は30%程度削減されています。

■一般的なエアコン
■地中熱ヒートポンプシステムを使用したエアコン

光ダクト

世田谷代田駅では、屋上から採光した太陽の光を、鏡の反射で地下階まで運ぶ光ダクトを採用しています。

 

環境に優しい機器の導入

LED照明、案内板、信号機

各駅でLED化が進んでおり、加えて、ホームの行先表示装置など、駅構内の各種業務掲示板についてもLED化をさらに推し進めています。なお、LED化は、信号機の信号灯や踏切のせん光灯といった保安設備で使用している電球についても実施しており、全ての変更が完了しています。

トップライトを採用した東北沢駅のコンコース 信号灯は全てLED化

回生電力を使用したエレベーター

世田谷代田駅のエレベーターでは、運転時に、発生する熱を回生電力に変換、バッテリーに蓄電し、蓄電した回生電力と通常電力を併用しています。これにより約20%の省エネルギーとなり、また、停電時は、バッテリーに蓄えた電力だけで約10分間の応急低速運転が可能です。

人感知エスカレーター、券売機

各駅にある券売機について、電力消費の少ない人感知の多機能券売機への交換が、70駅全てで完了しています。この人感知多機能券売機に変更したことにより、使用電力は、70駅319台で年間約67,000kWh削減しています。また、一部の駅では、お客さまが近づいたことを感知して作動し、乗る人がいないときは停止する人感知エスカレーターを導入しています。

(3)その他

変電所のスケジュール運転

2000年以降、運転用電力を供給する変電所での省エネルギー対策としてスケジュール運転を実施しています。スケジュール運転とは、すべての時間帯に整流器をフル運転させるのではなく、列車本数の少ない時間帯に部分的に機器の運転を停止し、架線電圧を一定の範囲で下げることで回生電力を有効に活用し、使用電力量を削減しています。

変電所の設備

地球温暖化防止のため、オゾン層破壊係数ゼロで高効率な電気設備への更新を進めています。

絶縁材料に六フッ化硫黄を用いない「低圧力ドライエア(乾燥空気)複合絶縁技術」を採用した受電開閉設備、冷媒にフロンガスを使用しない「HFE(ハイドロフルオロエーテル)冷媒」や「純水冷媒」を使用した沸騰冷却式シリコン整流器を使用しています。

また、変圧器には「低損失磁性材料」を使用し電気の損失を最小限に防ぐ、高効率型を採用しています。もちろん磁界の漏れや騒音対策を考えた機器・ケーブル配置によって、近隣住民の方への住環境にも配慮しています。