企業活動は社会との関わりなくしては成り立ちません。資源を限りあるものとしてエネルギー効率を高め、廃棄物を少なくしていくことは、持続可能な社会にしていくために不可欠であると考えています。

電車は便利な移動手段であると同時に、自動車や飛行機といった他の交通機関と比べてもエネルギー効率が高く、地球温暖化への影響が少ない乗り物です。

しかし、普段何気なく乗っている電車も、動かすためには多くのエネルギーを必要としています。また、いつも利用する駅でも、エスカレーターや改札機をはじめ、エネルギーを必要とする場面は少なくありません。

安全運行と定時運行に努めること。設置するエレベーター、エスカレーターを省エネにすること。お客さまにとって快適な空調管理に努めること。これらはすべて、エネルギーの効率化にもつながります。私たちは、さまざまなアイデアや技術、努力を結集し、「環境」と「サービス」の両立に努めています。

鉄道を走らせるために必要なエネルギーと効率を高める取り組み(イメージ)

太陽光/風力太陽光発電システムの導入

鉄道事業を営むための電力は、電車を走らせるための運転用電力と駅などの設備にかかる付帯用電力に分けられます。

自然エネルギーを活用した付帯用電力量の抑制の取り組みとして、これまでに湘南台駅、小田原駅、多摩線5駅(五月台駅・栗平駅・黒川駅・小田急永山駅・小田急多摩センター駅)に太陽光発電システムを、さらにはるひ野駅に風力太陽光発電システムを導入しました。

新百合ヶ丘駅・五月台駅・栗平駅・黒川駅・はるひ野駅は、「かわさき環境ショーウインドウ大賞2012」にて、省エネ創エネに関する取り組み事例が評価され、入賞しました。

発電された電力は、各駅構内の照明や多機能券売機、自動改札機、エレベーターといった電力の一部として使用され、付帯用電力量の削減につなげています。

自然採光方式による駅舎改良

新百合ヶ丘駅自由通路
新百合ヶ丘駅自由通路

2004年度に完成したはるひ野駅、2005年度に大規模改良工事を行った多摩線5駅、2008年度に改良工事が終了した新百合ヶ丘駅の各駅の駅舎に、自然採光方式を採用しています。

駅舎の屋根や壁に透明なガラスなど採光性のある素材を用いることで、太陽光を採り入れやすくなり、昼間の時間帯に照明を間引いたり、消灯することができます。

地中熱ヒートポンプ空調システムの導入

東北沢駅と世田谷代田駅の一部の空調は、環境にやさしい地中熱ヒートポンプシステムを採用しています。空気の熱を利用する従来の空調システムと比較してCO2排出量を年間約30%低減できる見込みであるほか、ヒートアイランド現象の緩和にも寄与します。

なお、世田谷代田駅の地中熱ヒートポンプシステムは、環境省の地球温暖化対策技術開発事業として当社が補助金を受けながら工事を進めています。

多機能券売機の導入

駅施設では付帯用電力量の抑制のため、省エネルギー型機器の導入を進めています。各駅の券売機についても電力消費の少ない多機能券売機へ交換し、電力の使用を抑えています。

人感知エスカレーターの導入

一部の駅施設では付帯用電力量の抑制の一環として、お客さまが近づいたことを感知して動作する人感知エスカレーターを導入し、電力の使用削減に努めています。

省エネルギー車両/ステンレス車体の導入

当社では、運転用電力量の削減のため、VVVFインバータ制御装置や回生ブレーキの搭載、車体の軽量化などを施した車両を省エネルギー車両と呼んでいます。2012年度までに省エネルギー車両を全車両の95.0%以上にすることを目標としてきました。

2007年から導入を進めている省エネルギー車両の4000形車両では、旧型車両と比較して約半分の電力(46.8%削減)で走行することができます。2012年度末時点での省エネルギー車両の導入率は95.7%となり、目標を達成することができました。

さらに、1988年に走行を開始した1000形車両からステンレス車体を、また2005年に就役した50000形(VSE)からはアルミ車体を採用し、これらの車体は2012年度末の時点で70.1%に達しています。

ステンレスは車体を軽量化するとともにさびにくく、車体を塗装する必要がないため、定期検査時に使用する塗料(※1)や塗装乾燥用の燃料(※2)を削減でき、2012年度は定期検査車両が142両だったため、塗料2,797kg、燃料(都市ガス)6,830㎥を削減できた計算となります。

  1. 1両あたり19.7kg
  2. 1両あたり48.1㎥

VVVFインバータ制御装置の導入

VVVFインバータ(赤枠部分)
VVVFインバータ(赤枠部分)

インバータとは、「直流」の電力を「交流」の電力に変換する装置です。VVVFインバータ制御装置は、電圧や周波数を変化させながら交流モーターを制御し電車の加速力や速度を制御する装置のことで、これにより電気抵抗を使わずにモーターの回転数を効率よく制御することができるため、省エネルギー化につながると言われています。

当社では、1988年に運転を開始した1000形車両以降、搭載車両の拡大を図っており、2012年度末時点で95.7%の車両の編成にこの装置を採用しています。

変電所のスケジュール運転

2000年以降、運転用電力を供給する変電所での省エネルギー対策としてスケジュール運転を実施しています。スケジュール運転とは、すべての時間帯に整流器をフル運転させるのではなく、列車本数の少ない時間帯に部分的に機器の運転を停止するものです。

また、架線電圧を一定の範囲で下げることで回生電力を有効に活用し、使用電力量を削減しています。

COLUMN:電車が動く仕組みを知ると、省エネルギー化の仕組みも見えてきます。

小田急線の変電所には、電力会社から交流66,000Vまたは22,000Vの電気が送られています。この電気を電車が走るために必要な直流1,500Vに変換した後、線路の上部にある架線へと送り、そこから電車のパンタグラフを通ってモーターへと流れ、電車が動いています。

回生電力は、電車がブレーキをかけたときにモーターを発電機として作用させて発電するもので、その電気を架線に戻して、運行している別の電車が使うことで電気使用量を削減できるメリットがあります。電車が回生電力を架線に戻す際、その電力を使う別の電車がいない時に架線電圧が必要以上に上昇しないよう抑制しています。この抑制する上限値と架線電圧の差が回生電力を活用できる範囲となります。電車が比較的少ない時間帯において、スケジュール運転により2台ある機器のうち1台の運転を停止して、架線電圧を一定の範囲で下げることで、より多くの電気を回生電力として有効に活用することができます。

膨大な電力を供給する変電所でスケジュール運転を行うことは、電気使用量の削減につながり、回生ブレーキによる電気の再利用は変電所からの電気使用量を抑えることとなり、さらなる削減につながります。

■電車が動く仕組み(イメージ)

LED照明/側面行先表示器消灯制御の採用

2011年の東日本大震災以降、安全を損なわない範囲内で車内照明の一部を取り外しているほか、長寿命で省エネ・節電効果に優れたLED照明を採用し、節電に向けた取り組みを推進しています。

車両側面の行先表示器は、乗車されるお客さまに電車の種別・行先をお知らせするためのものです。しかし、駅間の走行中や車庫内では表示の必要がないため、新型車両や車体を更新した一部の車両では、消費電力の削減とLED式表示器の寿命の延長を目的に消灯制御(※)を導入しています。

なお、消灯制御を導入した車両の編成は、2012年度末の時点で61.0%に達しています。

  • 速度50km/h以上で消灯。速度45km/h未満または停車駅手前450m地点で点灯。

駅の照明や保安設備のLED化も進めています

ホームや改札口、トイレなど、駅構内で使用している照明のLED化も進めており、今年3月に地下化になった下北沢駅のホームの照明にもLEDを採用しています。今後、駅構内のLED化をさらに進める予定です。また、信号機の信号灯や踏切の閃光灯といった保安設備で使用している電球については、全てLED化への変更が完了しています。

LED照明を採用している下北沢駅ホーム
LED照明を採用している下北沢駅ホーム
信号灯は全てLED化
信号灯は全てLED化
踏切の閃光灯も全てLED化
踏切の閃光灯も全てLED化

回生ブレーキの導入

回生ブレーキは、電車がブレーキをかけたときにモーターを発電機として作用させ、発生した電力を架線に戻して、運行している他の電車のエネルギーとして再利用(回生)する仕組みです。

当社では、エネルギーの有効活用の観点から回生ブレーキの搭載を推進しており、2012年度末時点で98.2%の車両の編成にこの装置を採用しています。

COLUMN:鉄道は、環境負荷の低い乗り物です。

鉄道は、運行時に多くの電力を使用します。一方で、人ひとりを1km運ぶ際のCO2排出量は自家用自動車のおよそ8分の1に過ぎず(グラフ参照)、他の交通機関に比べてエネルギー効率が高く、地球温暖化への影響が小さい移動手段です。

その鉄道の中でも、当社は高機能な省エネルギー車両の導入と係員の努力により人ひとりを1km運ぶのに使うCO2排出量は10gと、鉄道の平均と比べてもエネルギー効率が高い鉄道会社だといえます。

■旅客輸送機関別の二酸化炭素排出量

出典:国土交通省HP[運輸機関における二酸化炭素排出量]より(2013年7月)

  • 小田急電鉄分は当社で加筆。

鉄道業界では、こうしたことを広く知っていただくため、2005年以来、「鉄道でエコキャンペーン」を展開するなど、国土交通省とも連携し、鉄道の利用率の向上が地球温暖化などの環境問題の改善につながることをPRしています。

———そして、運転士が挑むCO2低減プロジェクト。それがエコ運転です。

2006年から始まったエコ運転の取り組み。3000形車両への置き換えをきっかけに、同プロジェクトが始まりました。

3000形車両は、平均的な駅間距離において、旧型車と同じような速度調節をして運転した場合、一駅間で5秒程度早く走ることができるようになっています。この“わずか数秒の余裕”を運転士の腕でコントロールすれば、電車の運行に必要な電力を削減することができる、そう気づいた運転士が自ら列車走行シミュレーターソフト「eco運転シミュレーター」を自作開発し、実際の運転における電力使用量と省エネ効果(CO2削減量)を“見える化”しました。

このソフトを活用して、さまざまな条件下での走行シミュレーションを繰り返し、最適な運転方法を見出し、開発した運転士が社内でキャンペーンを行い、各運転士に「地球温暖化の現状」や「運転操作による消費電力量の違い」などについて解説しています。さらに、エコ運転を実践してもらうための目安速度を掲載したカードを配付し、運転士全員が目的を共有、また、全体の実施状況の把握も行っています。

環境に配慮した取り組みの推進(環境報告書2013)