Interview 快適と環境、2つの共存を考える。

さらなる輸送力の増強に向けて、現在、工事を進めている複々線化事業。連続立体交差事業と同時に行っており、2013年3月には、東北沢~世田谷代田間の在来線の地下化を行い、この区間にあった9カ所の踏切を撤去しました。これにより、交通渋滞の緩和や街の回遊性の向上といった効果が見られるようになりました。その地下化から一年半、それに至るまでの振り返りと今後の展望を語ります。

回答者

小田急電鉄株式会社

複々線建設部 下北沢工事事務所

副所長 宮田 浩平(右)

小田急電鉄株式会社

複々線建設部 下北沢工事事務所

主任 山口 大河(左)

複々線化事業を推進する当社において、東北沢~世田谷代田間の事業区間における工事に関する業務を直接担当するのが下北沢工事事務所。「連続立体交差事業」の事業主体である東京都や世田谷区、渋谷区と連携し、地域の方々とコミュニケーションを取りながら、円滑に工事を進める重要な役割を担っている。

———はじめに、工事を進めるうえで、主に沿線の方の生活環境に関わる環境対策について、どのようなことを行われたのでしょうか。

東北沢~世田谷代田間では、工事箇所と住宅地が近接しているため、工事中は騒音や振動をできる限り抑える工法を選んでいます。また、地下トンネルの構築のための掘削作業や資機材の揚重作業には、低騒音・低振動型の建設機械を使用しました。その中でも一部作業においては、ディーゼルエンジンを使用する重機ではなく、特注の電動の重機を使用することにより、騒音・振動を抑えるように努力しました。

東北沢駅の解体の様子
東北沢駅の解体の様子

それでも、現場の状況は日々変化していきます。防音シートで工事箇所を囲ったり、場合によっては騒音の発生源を丸ごと覆う防音ハウスを設置したりすることが必要でした。近隣にお住まいの方々にご迷惑をお掛けしないよう、柔軟な対応策を講じてきました。(山口)

沿線の方の生活にもっとも影響を及ぼすのが、夜間作業です。道路を通行止めにして行う夜間作業などでは、周辺住民の方々から多くのご理解、ご協力をいただきながら行ってきました。また、その他線路内や駅の通路などに関わる作業など、終電後の真夜中でしか行えない作業もあります。それについても、工務部や電気部といった社内の関係部門や、実際に工事に携わる建設会社、時には東京都と協議を重ね、なるべく夜間作業を減らすべく作業計画や施工方法の見直し、調整を行ってきました。

工事用の仮囲いなども活用し事業を広報
工事用の仮囲いなども活用し事業を広報

さらに、沿線の方々に向けては、3ヶ月に一度、作業工程などに関する説明会を開き、直接対話を通じて、地道に皆さまの不安を取り除くように努めました。(宮田)

———騒音、振動対策以外に行われた環境への取り組みについてお聞かせください。また、地下駅となった東北沢駅、下北沢駅、世田谷代田駅の3駅について、どのような環境対策を講じられたのでしょうか。

回生バッテリーを搭載したエレベーター
回生バッテリーを搭載したエレベーター
低速・停止待機型エスカレーター
低速・停止待機型エスカレーター

工事期間中の省エネや環境負荷低減の施策としては、工事に用いる照明のLED化や作業員詰所の壁面緑化などを行いました。また、地下トンネルの構築にあたっては、掘削による周辺地盤の崩壊や地下水の流入を防ぐため土留め壁(どどめへき)を築きましたが、掘削した土砂をモルタルの材料として再利用し、廃棄物の削減に努めました。これにより土砂の搬出などにかかるCO2排出量は、従来に比べ約1/4に削減された計算となります。(山口)

地下駅となった3駅では、常時照明を点灯し、換気を行う必要があります。また、昇降機も必要となるため、地上駅と比べてエネルギー量が増えることは避けられません。そのような状況において、当社はエネルギー量を少しでも減らすべく、回生バッテリーを搭載したエレベーターや低速・停止待機型エスカレーターといった省エネ機能を搭載した昇降機を導入しています。また、東北沢駅、世田谷代田駅の一部空調では、年間を通じて一定である地中熱の特性を活用した地中熱ヒートポンプシステム(※1)を採用しています。(宮田)

  1. ※1 空気熱を利用する従来型と比較してCO2排出量を年間約30%低減できる(見込み)ほか、ヒートアイランド現象の緩和にも寄与する空調システム。

———緩行線の工事とあわせて現在、建設が進められている東北沢駅、下北沢駅、世田谷代田駅は、どのような駅になるのでしょうか?

新駅舎については、「安全」「使いやすい」「人にやさしい」「環境にやさしい」を駅づくりの共通コンセプトに、それぞれの街との調和やアクセスの向上などを図る予定です。3駅では、さまざまな環境への配慮がなされており、3駅共通の施策としては、太陽光発電パネルの設置やLED照明の導入、コンコースの自然換気、エコ給湯の導入や節水型トイレの設置、お客さまトイレへの人感知センサー制御の導入などを予定しています。

また、東北沢駅では機械設備棟の壁面緑化を、下北沢駅ではガラス屋根の設置による採光面積の最大化を、世田谷代田駅では光ダクトを使ったホームへの自然光の採光(※2)など、それぞれの駅にあった工夫を施す予定です。(山口)

  1. ※2 採光のためにダクト内に鏡を組み込み、光の屈折を利用して目的地まで光を届ける仕組み。
下北沢駅のイメージ
下北沢駅のイメージ
東北沢駅のイメージ
東北沢駅のイメージ
世田谷代田駅のイメージ
世田谷代田駅のイメージ

———在来線の地下化から約一年半が経過し、沿線の方からの声にどのような変化を感じますか。

踏切がなくなったことで交通渋滞が緩和され、回遊性が高まり、街の活性化につながっています。ただし、在来線の地下化はあくまで複々線化事業完了までの通過点に過ぎません。これからも引き続き、沿線住民の皆さまのご理解とご協力を得ながら工事を進めていきたいと考えています。住民の方からは、「線路の跡地には何ができるの?」といった期待の声をお寄せいただくなど、周辺の環境変化に対する期待感を少なからず感じるようにはなってきました。一日も早く複々線化工事を終わらせ、魅力ある街にしてほしいというのが皆さまの総意だと思います。

複々線化の完成による鉄道の輸送サービスのさらなる向上と、皆さまが安心して生活できる、利用できる環境づくりを念頭に、沿線の方々をはじめ、小田急線をご利用のお客さま、関連する鉄道他社、地域社会と積極的に対話を行いながら良好な関係を構築し、無事に工事を進めていきたいと考えています。(宮田)

———ありがとうございました。

  • 内容は2014年9月現在のものです。

環境に配慮した取り組みの推進(環境報告書2014)