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昔ながらの食事や土との生活が理想 ここ50年ほどの間に、日本人の暮らしは食事や住まいはもちろん、街を含む生活環境すべてが大きく変わりました。以前は土間のある家に住み、舗装されていない地面が当たり前で、それらの土に含まれるさまざまな細菌層が免疫力の形成に影響を及ぼしていたと考えられます。兄弟姉妹が多く大家族で暮らしていたころは、赤ちゃんは上の兄弟姉妹が持ち込むさまざまな感染症の危険にさらされていました。現代では道は舗装され、公園の砂場を除菌するところも。兄妹姉妹が減り核家族化が進行した今日、感染症で亡くなる子どもは減り、生活は電化されてずいぶんと便利になりましたが、アレルギー人口を増やす環境になってしまいました。理論的には土に触れる暮らしをした方がアレルギーになりにくい体がつくられると考えられますが、少しの時間を公園で過ごしたところで、昔と同じように土からの影響を受けることはありません。身近に土と触れることができるように、今後は地域レベルで土のある街づくりがされるといいですね。 家庭ですぐに取り組めるアレルギー対策をあげるなら、毎日の食事を昔ながらの献立にするのが理想的です。以前は米や豆に自家製のみそ、魚や野菜が中心の食事でした。そんな伝統的な食事が腸内の善玉菌を増やし、アレルギーになりにくい体づくりにプラスに働く可能性があります。成人病の予防効果も期待できますから、妊娠中のお母さんもぜひ実践してみてください。ご自身の健康とお子さんのアレルギー対策にプラスになると思います。知っておきたい子どもの健康と発育親の不安や悩みを解消!子どものアレルギー子育てにおいて、親たちがいちばん心配なのは、やはり子どもの病気や健康について。特に子どものアレルギーは、みんなが気にしている悩みの1つでもあります。そこで、なぜアレルギーが起きるのか、対策や予防法はあるのかなど、小田急沿線にある国立成育医療研究センターの先生にお話を伺いました。取材・文/西村依莉監修/国立研究開発法人・国立成育医療研究センター・アレルギーセンター長大矢 幸弘先生乳幼児期からの保湿でアレルギー対策生まれてくる子どものために妊娠中にできること□ 禁煙する□ 昔ながらの食生活をするアレルギーになったら早めの治療がおすすめ赤ちゃんのなかには、お肌が乾燥しやすい体質の人がいます。その場合、毎日の保湿ケアでアトピー性皮膚炎になる確率を少し減らすことができたという報告があります。実は食物アレルギーは、離乳食で摂取するより前に荒れた皮膚から入った食物の成分に免疫細胞が反応しやすい体質の場合、アレルギーになるリスクが高まることがわかってきました。ですから、乾燥した肌から食物成分が入らないためにも、保湿して傷のない肌を保ってあげましょう。乳幼児のアトピー性皮膚炎は、2〜3歳ごろまでに発症する子どもが多いので、そのころまでがスキンケアを続ける目安になります。食物アレルギーは、その原因となる食物を使わずに調理した食事を基本に、医師と相談しながら少しずつ与えて免疫寛容を働かせることで改善できます。ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、いずれも早めに専門医に診てもらい、体質に合う薬を処方してもらいましょう。妊婦さんができるアレルギー対策はこの2つ。確実ではないけれど、確率を少し下げられるかもしれません。喫煙は特に子どもがぜんそくになる確率が高く、母親の喫煙はもちろん、副流煙もNGです。家族に喫煙者がいる場合は、禁煙や完全分煙などの対処を。出産後も禁煙するよう努めて。妊娠がわかった後に禁煙したとしても、そのまま喫煙し続けた場合よりはリスクが下がります。伝統的な食事をすることで、アレルギーが極めて少なかった昔の人の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)に近づくことができ、アレルギー体質の予防効果があるかもしれません。ちなみに、妊娠中や授乳中に母親が卵や牛乳など食物アレルギーの原因となる食物を除去しても、子どものアレルギーへの予防効果はないことがわかっています。14小児科、アレルギー科を経て、2002年から国立成育医療センターアレルギー科医長に。小児のぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど小児アレルギーが専門。著書に『子どものアレルギー アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・ぜんそく』など。国立成育医療研究センター新生児や小児、妊産婦の病院と研究所が一体となった、国内トップレベルの小児・周産期医療研究センター。[最寄駅]小田急線・祖師ヶ谷大蔵駅、成城学園前駅よりバスで約10分。https://www.ncchd.go.jp

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