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A.子どもの成長の基礎には離乳期の食事が関わっている 離乳期の「食」というのは、食物をかむ力を育てて消化機能を発達させたり、子どもの成長に従って母乳やミルクだけでは足りなくなってくるエネルギーや栄養素を補うなど、さまざまな役割があります。今回のガイド改訂では、最新の科学的な知見に基づいて離乳の開始時期などが示されていますが、同時に以前よりも「親の気持ち」に寄り添う支援を重視するようになりました。 その背景の一つには、この約10年間で働く女性が増え、育児を取り巻く環境が変化していることがあります。離乳食においても、「手作り」にこだわらないで、改訂後はベビーフードなどの加工食品を上手に使用することで親の負担を減らすことも一つの方法である、と捉えるようになりました。というのも、手作りは素晴らしいことですが、それが親の時間的・精神的負担になってしまうのでは本末転倒だからです。 離乳期の子どもは味覚が発達途上にあります。そのため、ひと口食べたときに「おいしいね」「よく食べたね」などと声掛けをすることで、味わうことの楽しさに出会います。そして成長とともに、自分が食べると家族が喜んでくれる様子や、目の前で「おいしい」と食事をしている親が幸せそうであることなどに気づいていきます。このような「食事の場は楽しい」という経験が、保育園で友達におやつを分けてあげたり、学校で会話を楽しみながら友達と同じペースでお弁当を食べたりなど、健やかな思いやりの心を育む基礎になります。これは離乳期のみに限ったことではなく、子育て時期全般を通じていえることです。この「共食」体験が不足すると、食事を単なる栄養素等の補給として捉え、人と一緒に食べるのが煩わしいという感覚につながりかねません。時には市販品の手も借りて、子どもと心を通わせながら食事を楽しむことで、健やかな成長を助けていくことが望まれます。親ができる子どもへの食育とは!?100点を目指さなくても大丈夫 親たちの食に関する悩みQ & A医師、助産師、保健師などの専門家が、一貫した育児サポートを行えるようにと厚生労働省が定める「授乳・離乳の支援ガイド」が12年ぶりに改訂されました。その研究会委員でもある相模女子大学の堤ちはる先生に“初めての食事”でもある離乳食が、子どもの成長とどのような関わりがあるのか、お話を伺いました。子どもの好き嫌いや料理に関する悩みなど、子どもの食を通じて起こるパパ&ママの日頃の心配事について、堤先生に質問してみました!文・取材/木内アキ監修/堤 ちはる先生相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授食べず嫌いが多いのですが、どうすれば食べるようになる?手作りの離乳食を全然食べなくて……悩んでいます。仕事で忙しく、平日はお総菜を買いがち。大丈夫でしょうか?食事のとき母親は子どもにかかりっ切りで大変。父親の僕にできることは?人間には、初めて見る食べ物を警戒する「新奇性恐怖」という感覚が備わっています。そこで「これ、食べるかしら……」と自信なさげに見つめると不安をあおり逆効果。一緒にいる人がおいしさを感じられるような楽しい雰囲気で食べましょう。子どもが食べたら「おいしいねぇ」などと声掛けすると、新たに知るおいしさとして印象づけられます。離乳期の子どもは食事のリズムも未発達。親の思うように食べないこともあります。それが重荷になるなら、市販のベビーフードを与えるのも一つの方法。食べればうれしいし、食べなくても自分の料理が下手だから、と落ち込むことがありません。ベビーフードにゆで野菜を足すなど、ひと手間加えるとよりよいですね。家庭の味を教えるのは離乳期の後でも遅くはありません。料理ができない日は、できる範囲でベストの選択をします。お総菜を買うときは、揚げ物など茶色の食べ物ばかりにならないよう、ほうれん草の緑や人参のオレンジなど、食卓の彩りに意識を向けてお惣菜を選ぶと栄養バランスがよくなります。料理できなかった……とクヨクヨするより、楽しい雰囲気で食事をすることが大切です。マジメな人ほど「なんとか食べさせなくては」と、一生懸命になりがち。お母さんが難しい顔にならないよう、まずはお父さんがお母さんの作ってくれた食事を「おいしい!」と口に出して褒めること。お母さんのモチベーションも上がって笑顔が増えますし、食卓の雰囲気がよくなると、子どもにとって「食べることは楽しい」という感覚が芽生える食育になります。Q.Q.Q.親たちの食に関する悩みQ & AQ.A.A.A.(お子さま10カ月、4歳のママ)(お子さま2歳のパパ)(お子さま1歳のママ)(お子さま小学1年生のママ)14日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、助教授、日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に『あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド』(新星出版社)など。

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