子どもの成長に欠かせない運動とは体を動かすことは、子どもたちの人生を豊かにしてくれる!子どもの体力を養い、体のスムーズな動かし方が身に付く「運動」。適度に体を動かすことは、体だけでなく心の成長にも働きかけることをご存じでしょうか。子どもの健やかな発育を助け、人生を豊かにする「運動」の効果について、専門家にお話を伺いました。6〝遊び〟という運動が「自ら考える」力につながる 人間は、生物の中でも高度な体の機能を持っています。それだけに成長にも時間がかかり、何もできない赤ちゃんが二十年ほど時間をかけ、経験を積みながら体の動かし方や状況判断などを学んでいきます。この成長プロセスにおいて、大切な役割を持つのが運動です。運動は体力を養い、けがをしない身のこなしを学ぶという面があるのはもちろん、目標を立てて努力する自己管理力や、仲間と協力して物事を進める協調性など、勉強だけでは得にくい「非認知能力」を育ててくれるのです。 子どもたちはこれまで、日常の「遊び」を通じてそういう力を身に付けてきました。友達と集まり、今日は何をしようか意見を合わせ、体を動かす。それを行う中で、自然と体力や状況判断力を養っていたのです。このとき重要なのが「楽しい」という感覚。楽しいからこそ子どもは集中し、自分で考えて状況を切り開こうとします。しかし、子ども同士が自由に遊ぶ機会が減っているのが現状。スポーツスクールに通って体を動かすことは体力づくりや技術の向上面ではいいのですが、大人が作成した練習メニューや作戦に沿って動くだけでは、子どもが自ら考える余地が少なくなります。与えられる、指導されるだけの経験にならないためにも、親は子どもに幼少期の“遊び”という運動をたくさん経験させてあげるとよいですね。「できた!」という喜びが折れない心を育む要因に 運動=何かのスポーツ種目と考えがちですが、日常の中にある道具を使って、体を動しながら遊ぶことも立派な運動です。例えばタオルを放り投げてキャッチする遊びなら、家のリビングでもできますね。そのうち子どもは頭でキャッチしたり足で蹴ったり、好きなように遊ぶようになります。そこで「創造力」が養われるのです。また、広げたタオルなら手に引っかかりやすく、何度か繰り返せば必ず「取れた!」という成功体験が味わえます。多少失敗しても、やり方を変えれば成功できるという肯定感を、遊びを通じ て身に付けることが子どもの「自信」を育てるのです。一つできれば少し難易度を上げ、結んでボール状にしたタオルをキャッチするというように、成長に合わせた成功体験ができるよう親が調整してあげるとよいでしょう。運動の習慣をつくることが子どもの将来の可能性を広げる 早くから運動をさせて将来はスポーツ選手にと、夢を抱く親御さんもおられるでしょう。しかし、本来運動がもたらすものとは、音楽を聴いたり、映画を見たりするのと同様、人生を豊かに楽しく生きる「力」です。運動をせず体力がないままだと、日々の生活だけで疲れ、気力も湧きません。体力は加齢とともに落ちていくので、もともとの筋力が弱かったり、体の動かし方が身に付いていないと、老後に苦労することが多くなるかもしれません。 つまり基礎体力があれば、勉強や仕事の場において意欲を保ち、踏ん張りがきくようになるのです。体を動かすことで集中力や困難に対処する力が身に付くと、勉強においても集中して取り組むことができ、学力アップにもつながっていくでしょう。子どものうちから運動の楽しさを体験させ、体力や非認知能力を伸ばしてあげることは、子どもが将来豊かな人生を切り開いていくための大切な財産になる、と言えるでしょう。監修/知ち念ねん嘉よし史ふみ先生東海大学体育学部生涯スポーツ学科 准教授東海大学大学院体育学研究科で学んだ後、幼稚園勤務などを経て、同大学の准教授に就任。青少年の体力や運動能力の向上を目指し、子どもの頃に楽しく運動すること・遊ぶことの大切さを研究している。基礎となるのは幼少期の自由な遊び運動で発達する子どもの心と体体を動かすことで筋力が高まるのはもちろんですが、運動には意欲や自発性など「非認知能力」を伸ばしてくれる側面もあります。運動がどのように子どもの心身の発達に影響しているのか、その背景を学んでみましょう。取材・文/木内アキ(P6-8)知念先生が引率し、東海大学の学生と小学生でアウトドアを体験。初めてのカヌーに子どもたちも大喜び!
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