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神奈川県内トップの人口増加率を誇る海老名において、小田急電鉄㈱は地域と密接に関わりながら、Quality of Life(QOL)を上げ、長く住み続けられる愛着を育むまちづくりを進めています。海老名でのまちづくりにかける思いを、小田急電鉄 エリア事業創造部の本間慎一さん、上井悠大さんに聞きました。
人口増加率は県内トップ。成長し続ける海老名
駅周辺の商業施設やオフィスビルの開業に続き、新築マンションの建設ラッシュで移住者が増加する海老名。小田急電鉄では、2002年に海老名駅直結の商業施設「ビナウォーク」を開業して以来、このまちの発展に力を注いできました。そして、2023年には、新宿だけでなく海老名にも本社を構えるなど、まちとの関わりを一層深めています。
(本間)海老名は小田急、JR、相模鉄道の3つの路線が乗り入れる鉄道の町として、徐々に発展してきました。ただ、駅前が農地だったこともあり開発のスピードは緩やかでした。「ビナウォーク」の開業によって駅周辺の開発が本格化しましたが、近隣の厚木市や相模原市と比べると新しいまちと言えます。昔ながらの商店街やまちづくりを主導するような既存の団体も、そう多くありませんでした。その分、地域の方々と一緒に一からまちづくりに取り組むことができるという点ではやりがいを感じます。
(上井)郊外におけるまちづくりでは、昼は自宅から都心へ仕事に出かけ夜になると帰ってくるという、いわゆるベッドタウンのイメージが強いですが、当社では駅とまちの一体開発により、「職、住、商、学・遊、ウェルネス」をテーマに、多彩な機能が揃うまちづくりを目指しています。2022年に竣工した「ViNA GARDENS PERCH(ビナガーデンズ パーチ)」では、物販だけでなく、上層階にフィットネスジムやクリニック、教育・サービス系の施設も入っており、”コト消費”などの現代の価値観に合わせた開発とともに、地域の方々の生活の質の向上にも努めています。
(本間)これまで、海老名に暮らす方々は、休日は新宿や横浜へ出かけることが多く、また、自分の住むまちに愛着や誇りを感じにくいという側面がありました。市でもその点を課題と捉えていたこともあり、商業施設には今まで海老名になかった機能を持たせ、市民の皆さんの満足度を高めるようなテナントを誘致していきたいと考えています。
プレーヤーのシビックプライドをくすぐる環境づくり
まちへの愛着や誇りをどうすれば高めることができるのか。その解決手段の一つとして2021年に始まったのが、ビナウォークに囲まれた海老名中央公園をメイン会場に、毎月開催されている「海老名クラフターズマーケット」(以降、クラフターズマーケット)です。今ではまちの人気イベントに成長したこのイベントは、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。
(本間)当社は、海老名市から「海老名駅自由通路及び海老名中央公園」の指定管理を受託しており、一般利用申請の窓口にもなっています。そうした中で、地域の方々や法人・団体からの問い合わせや相談を受けるうちに、さまざまな方との関わりが生まれました。クラフターズマーケット実行委員長でもある白井勝弘さんも、その一人です。白井さんは、海老名に貢献したいという思いを持った方で、「この人とだったら何かできそうだな」と感じ、まちの魅力を知ってもらうイベントとしてクラフターズマーケットを開催することになりました。
「小田急さんとの取り組みで、駅前全体が”生き物”のように動き出したと感じています。特に駅前や広場でのイベントが増えたことで、『海老名に行けば何か楽しいことがある』という期待感が広がっていきました。実際に、『初めて海老名を訪れる方が増えた』『出店者同士や地域団体のつながりが広がった』という声もありますし、子どもから大人まで、海老名に立ち寄る人の熱量の高まりを実感しています。
今後は子ども向けのワークショップや学生さんによるアート展示など、未来のまちづくりの担い手と地域をつなぐ場をつくっていきたいですね。地元の農産物や伝統を取り入れた企画も強め、『海老名らしさ』を感じてもらえるマーケットとして皆さんと一緒に育てていきたいです」(白井さん)
当初は大きな目標は立てず、ここに行けば何かあると思ってもらえる場所づくりを目的としてスタートしたという本間さん。その後の変化についてはこう話します。
(本間)イベントで大切にしているのは、出店者が楽しいと思って参加してくれること。私たちは極力前に出ず、出店者が自主的に運営できるよう「出店者ファースト」を心がけています。今ではすっかり浸透して、市や近隣の団体から、クラフターズマーケットとしてイベントに出店してほしいといった要請もありますし、海老名と周辺地域の農家さんだけを集めた農家マルシェなどの派生イベントも多く開かれるようになり、集客力も高まりました。
人と人、まちと人をつなぐハブとしてできること
クラフターズマーケットをきっかけに新たなつながりや価値が生まれるなど、海老名エリアにおける小田急の役割は大きなものになっています。最後に、海老名をより魅力的なまちにしていくためにどんな思いを持っているのか、二人に尋ねました。
(本間)今取り組んでいるのは、東西一体となったまちづくりです。鉄道のあるまちならではの課題なのですが、鉄道を境にまちが分断されてしまうので、それを少しでも改善したいと考えています。東側ではクラフターズマーケットを開催していますが、2年前からは西側のまちづくりを推進する(一社)海老名扇町エリアマネジメントとの連携イベントも始めています。その連携をさらに強めて、東西の交流を増やしていく方法がないか考えているところです。これまでを振り返ってみても、潜在的にまちに貢献したい人は多いんですよね。海老名に長く暮らしている方、商売をしていた方は何かやりたくてもきっかけがなかったと言いますし、これからも地域の方々のチャレンジを支えていきたいと考えています。
(上井)本間さんとまちを歩いているとたくさんの人が声をかけてきて、人を巻き込んで地域と一緒にまちづくりをしていることを強く実感します。私は人とのつながりを通して、何かをつくる仕事がしたくてこの会社に入りました。開発を通じたまちの価値向上はもちろんですが、地域の皆さんが表現できる場を一緒につくっていくことが大切だと思っています。最近、海老名青年会議所に入会しましたが、そこには海老名のために何かしたいという若い方のパワーを強く感じます。私たちももっとまちのために動いていかなければいけないですし、地域の方々との関わりを深め、「地元ファースト」でそこに住む人たちに喜んでもらえるようなまちにしていきたいと思います。
(本間)大型開発を通したまちづくりも、私たちに期待されている部分かもしれませんが、上井さんも言っている通り、人と人をつなぐハブのような役割が一番大切だと思いますし、その役割を当社が担っていければと思います。人と人とがつながることで、できることは確実に増えますから、今はその種まきを懸命に行っているところです。そして、いつの日か「このまちに小田急が本社を構えてくれてよかった」と言ってもらえる日が来れば、うれしいですね。
海老名のまちでは2025年以降もさまざまなイベントが予定されています。また、さらなる開発も進行中で、ますます目が離せません。そんな海老名のまちづくりに欠かせないのは、地元を愛する一人ひとりの思い。小田急電鉄は鉄道会社の役割を超え、地域に密接に関わりながら地元の方たちの思いを形にするために、これからも尽力していきます。
※内容は取材時のものです。