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小田急不動産と
仲間たちによるリビルドで
住んでいた人と家屋の物語を
リライトする

小田急不動産 山尾さん、山岸さん、髙橋さんイメージ

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住まう人のいなくなった「空き家」が社会問題となっています。
小田急不動産㈱では空き家となっている過疎地域の古民家に目を向け、良質な構造材を活用した移築・再生に取り組むプロジェクトをスタートしました。その第一弾が、新潟県阿賀町の古民家で使用されていた古材を使用し、神奈川県開成町に完成させたモデルハウスです。

木は800年も持ち、時間が経つにつれて強度が増していくと言われています。今回、小田急不動産の山尾正尭さん、山岸求さん、髙橋由紀さんに、そんな木材を生かす古民家の移築・再生に着目した背景やプロジェクトに込めた思い、今後紡いでいきたい価値について話をうかがいました。

空き家問題から考える、住まいのあり方

全国的に増加傾向にある空き家。治安の悪化や防災面でのリスクなど、都市部でも空き家がもたらすさまざまな問題に直面しています。地方においては、人口減少などから住む人がいなくなり、家が放置されたまま、次の住み手をなかなか見つけられない状況が続いています。

空き家イメージ

(山尾)地域に根差して企業活動を行う私たちにとっても、空き家問題は切実な課題の一つです。地域住民の方を対象にした相続関連のセミナーなどを開いたりもしていますが、家や住まいに対する考え方、価値観は地域やエリアによっても異なります。

例えば、都市部では土地に資産性があり、次々と新しい住宅を建てるサイクルがありますが、地方では代々受け継いできた土地や家屋を守るという志向が根強いこともあり、住まずとも相続だけするというケースが見られます。また、移住を受け入れ空き家を減らそうにも、今回パートナーとして協業いただいている阿賀町では冬場の厳しい積雪によって移住者が定着しにくいという課題があり、有効な打ち手がありませんでした。

山尾さんイメージ

(山岸)2015年ごろから、小田急不動産でも小田急沿線の人口減少や、空き家問題への対策として、地域課題の解決に取り組んできました。今後は、特に沿線西部地域の定住促進がより重要になってくると感じています。山や川などの自然が豊かなエリアであることを生かした魅力づくりを模索する中で、パッシブハウス(自然エネルギーを活用できる設計で、冷暖房の使用を抑える住宅)などサステナブルな家づくりに目を向けるようになっていきました。沿線にある古い物件をリノベーションしたり、廃棄物の出ない構造材を使用するなどの新たな取り組みを検討していましたが、既存の住宅ではどうしても耐震や断熱などの性能に限界があり、住む方のニーズを満たせないという課題がありました。これからの時代に求められる住宅の品質を突き詰めていく中で、地方に眠っている「古民家」に目を向けていきました。

山岸さんイメージ

(山尾)そこで地方に目を向けてみると、たくさんの価値ある古民家が眠っていたわけです。そこには、住まいを丁寧に手入れしながら住み継ぐくらしが息づいていて、非常にエシカルなライフスタイルだなと感じ、これを沿線へ持ってくることはできないかと考えました。

「語り継ぎ」に込めた思いを皆で具現化

こうして古民家のリノベーションではなく、「移築」による再生の可能性を探り始めた山尾さんたち。古民家の所有者から梁(はり)などの良質な古材を受け取り、その思いとともに新たな家へとつないでいく。ものだけでなく古民家の歴史や住んできた人の思いも伝えたいという思いを込め、プロジェクトは「KATARITSUGI」と名付けられました。

(山岸)朽ち果てていくのを待つだけの状況にある良質な古民家が、地方には数多く眠っています。それらはときには100年以上前に建てられたものでありながら、しっかりとした構造材が残っているものも多く、品質や安全性を確認したうえで再利用ができるんですよ。建てて壊して、また建てて…というサイクルでは、いずれ家はゴミになってしまいますが、別の場所で次の住み手へ引き継いでいく、住まう人もそれを選ぶことができるという選択肢が生まれればいいですね。

(山尾)同じ志のもとで活動されていた(一社)全国古民家再生協会ともコンタクトを取り、解体や古材の加工を行う職人さんとも繰り返し話をさせていただきました。最初は「本当にそんなことができるのか」と懐疑的だった皆さんも、「本気でやるなら」と応えてくださり、本格的に移築プロジェクトが動き出し、協会を通じて、阿賀町にある築約160年の古民家の梁を提供いただくことになりました。

阿賀町の職人さんイメージ
阿賀町の職人さんイメージ

阿賀町に何度も足を運び、対話を重ねることで、地元の職人さんとの信頼関係を築きあげた

(髙橋)実際の工事では、耐震性能等を担保した上で梁を新築住宅の部材として活用する形を採用しています。私は設計やプランニングに携わりましたが、古材を使うのはもちろん初めて。古材を取り入れるにあたり、新潟と関東の施工業者の間で作業の割り振りや加工の方法など密なコミュニケーションが必要でしたし、手探りで進めなければならないことも多かったですね。

髙橋さんイメージ

モデルハウスの立地に開成町を選んだのは、ここが古民家とのゆかりの深い場所だから、と山尾さんは語ります。

完成したモデルハウスイメージ
完成したモデルハウスイメージ

新築の建設現場でも開成町と阿賀町の職人同士が力を合わせる

(山尾)沿線西部から発信する「新しいくらしのスタイル」という視点でも、開成町はシンボル的な役割を果たしています。また、開成町には瀬戸屋敷という築300年を超える古民家を活用した施設もあり、コミュニティの中心として機能しているなど、古民家との相性がいいエリアでもあります。都心からは少し離れますが、自然も豊かで区画整理も進んでいて、住みやすいエリアとして発展しているので、ここを一つのモデルケースにプロジェクトの発信拠点にしていきたいと考えています。

古民家が紡ぐ新たなくらしのストーリー

完成したモデルハウスを起点に、古民家が歩んできた歴史や所有者から託された思いを次に住まう人に向けてどう伝えていこうとしているのか。お三方に尋ねてみました。

山尾さん、山岸さん、髙橋さんイメージ

(山岸)モデルハウスで表現しているのは、建物としての機能や見栄えの良さだけではありません。脈々と受け継がれてきた古民家の歴史や思いといった見えない価値に心を寄せて、大切に語り継いでいくというくらし方そのものを提案しています。

(髙橋)購入されるお客さまにとっては、おそらく通常の注文住宅より手間がかかると思います。梁にもそれぞれ個性がありますし、照明計画も色々なパターンが考えられます。でも、そういった工程も楽しんでいただけたら素敵だなと思いますし、モデルハウスで過ごしているとやっぱり「いいな」と思うんですよね。

古民家の梁や瓦イメージ

(山尾)古民家の所有者さんにお聞きした家の歴史や思い出をまとめた「家史(いえし)」という冊子を作成するなど、情緒的な価値を感じていただける工夫も取り入れています。家に使われている古材がどんなまちのどんな家で過ごし、ここへやって来たのかを知ることで、そのまちの関係人口の創出につながったり、もしかしたら所有者と購入者、そして購入者同士をつなぐことがあるかもしれません。さらに、KATARITSUGIでは古材や人の思いだけではなく、職人さんたちによる技術も受け継がれます。失われつつある貴重な技術も次世代へつないでいく、そんな役割も果たせればと考えています。

古民家の歴史や思い出をまとめた冊子「家史(いえし)」イメージ

「KATARITSUGIの家を選ぶ人たちは、きっと似ている」。山尾さんはそう言います。KATARITSUGIで使われる古材がまちとまちを結び、昔と今をつなぐ。古民家が歩んできた歴史を感じながらも、快適に過ごせる住まい。そうした価値に共感した人たちが互いにつながれたなら。またひとつ、ゆたかな暮らしの選択肢が増えるかもしれません。

※内容は取材時のものです。

INTERVIEWEE

小田急不動産㈱
仲介事業本部 仲介営業部 
企画推進グループリーダー 山尾 正尭

仲介事業本部 
リノベーショングループリーダー 山岸 求

同      リノベーショングループ 
上席チーフ 髙橋 由紀

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