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人が集い、にぎわいや
つながりが生まれる
バス停からはじまる、
ゆたかなくらし

なりわい賃貸住宅「meedo」のイメージ

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小田急バス㈱では今、バスの折返場やその周辺地域に新たな価値を生み出そうとする動きが活発化しています。2021年10月には東京・武蔵野市内の折返場に「hocco(ホッコ)」を、2025年6月には東京・調布市内の折返場に「meedo(みいど)」を開業しました。

バスの折返場に新たな価値を与え、同時にそこに住まう人々や訪れる人々にゆたかな時間や価値を提供する小田急バスの取り組みについて、下村友明さん、中山晴政さん、萩原真希子さんに聞きました。

バスの「終点」を、にぎわいの「起点」に

2021年10月、武蔵野市桜堤で生まれた「なりわい賃貸住宅」を核としたhoccoは、店舗設備も備えた地域コミュニティの創出拠点として、入居者によるイベントなども定期的に行われ、にぎわいを見せています。

「小田急バスではバス事業と不動産事業を軸に事業を展開していますが、バス事業は慢性的な運転士不足や整備士不足といった課題に加え、社会情勢にも左右されやすい事業形態となっています。そこで、不動産事業がクッション的な役割を果たしてバランスを取るという形で経営を行っています。その中で、小田急グループの目指す姿として経営ビジョンで掲げている『地域価値創造型企業』の実現に向けて、バス事業と不動産事業を融合させた新たな事業ができないかと考え、hoccoの検討が始まりました」

なりわい賃貸住宅の第一弾「hocco」イメージ
なりわい賃貸住宅の第一弾「hocco」

そう語るのは、hoccoの開発に携わってきた中山さん。バス事業と不動産事業の融合の試みとして、折返場や所有はしているものの未利用であった周辺地に目を向け、周辺地域の課題をリサーチしながら開発を進めてきました。

中山さんイメージ

プロジェクトをリードしてきた下村さんも次のように続けます。
「不動産をただ持っているだけでなく、未利用の土地であった折返場をしっかりと活用して収益を生み出せる形を模索する中で、モビリティとコミュニティのかけ合わせというキーワードにたどり着きました。バスで訪れる終点から始まる買い物であったり、帰宅途中に立ち寄れる場所があればというニーズも見えたので、小さなお店と住居が同居する“なりわい賃貸住宅”の形が解として見えてきました」

下村さんイメージ

モビリティ×コミュニティ×防災・共助をキーワードにしたmeedo

こうして武蔵野市桜堤に開業したhocco。かつては春の花見客であふれていたというエリアのにぎわいを再び取り戻したいという思いも込め、小田急バスが主体となってイベントの開催も行ってきました。近隣の学校の吹奏楽部が出演するイベントでは、児童・生徒の家族だけでなく外部からの来訪者も多く、1,500人を超える参加者が集まった日もあるのだとか。

近隣の学校の吹奏楽部が出演するイベントイメージ

「開業から3年半が経ち、入居者さんたちのつながりも構築されてきたと感じます。昨春には地域の幼稚園・保育園の園児たちに参加してもらい、鯉のぼりを飾るイベントを行いました。そのほかにも、七夕や餅つきなど季節の行事を通して地域へのhoccoの認知も進みましたし、“ついでにhoccoにも寄ろう”という人流も作り出せていて。入居者同士のつながりや、訪れた人との交流もしっかりと根付いてきています。当社が旗振り役を務めてきた運営やイベントの企画・実行も、hoccoに入居されている方たちだけで自走できる形が作れてきたかなと思っています。“モビリティ×コミュニティ”というコンセプトが、まさに花開こうとしているところです」(中山さん)

hoccoを先行事例として、次の舞台となったのが深大寺エリアです。折返場は、深大寺から徒歩15分くらいのところにあり、住宅地とも近く、hoccoと近い条件がそろっていたため、第2弾であるmeedoの場所として選ばれました。周辺の方から「休憩できる場所として整備を進めてほしい」「折返場周辺で人の流れをつくりたい」といった声が聞こえ、hoccoの手法を活用してmeedoの開発に着手します。開発に携わった萩原さんが、深大寺の魅力と、それを生かしたmeedoの特徴について教えてくれました。

なりわい賃貸住宅「meedo」イメージ
なりわい賃貸住宅の第二弾「meedo」
きれいな水に金魚が浮かんでいるイメージ

「深大寺は江戸時代から『そばどころ』でもあり、きれいな水がわき出すことでも有名な土地です。その魅力に触れていただくため、meedoには人工の池や小川を配し、子どもたちをはじめ訪れた人が水に親しめるようなレイアウトにしました。敷地内に昔ながらの手押しポンプの井戸も作り実際に水をくみ上げることもできます。かつては『絵堂(えどう)』と呼ばれる農村集落があったことから、meedoのネーミングにも『edo』を入れました」(萩原さん)

萩原さんイメージ

さらに、深大寺は「国分寺崖線」に位置し、地盤のよさと高台にあることで災害リスクが低い土地とされています。そこで、hoccoで実践してきたモビリティ×コミュニティに加え、「防災・共助」というキーワードを新たな価値として取り入れることに。災害時協力井戸や太陽光発電・蓄電池による電力供給、風力と太陽光のハイブリッド照明、かまどベンチやマンホールトイレなど、災害時の拠点としての機能も備えています。

「災害時の対応には、住民の共助が不可欠です。入居者や周辺の方がコミュニケーションを取れるような仕掛けとして、敷地内を通り抜けできる小道を作ったり、棟内のシェアキッチンを外部の方にも開放したり、オープンな場として運営しています。入居者の方もそうした取り組みに理解がある方が集まっていますね」(萩原さん)

井戸と緑の小道のイメージ
地下50mからくみ上げる井戸の水は施設内を循環させるなど環境にも配慮。緑の小道は散歩にもぴったりで、回遊性の向上にもつながっている

小田急バスの走るまちって「いいね」を目指して

地域に開かれたコミュニティとして生まれたmeedo。調布市内で活動していたプレーヤーが集まる形で、出店者も順調に増えています。

「上棟式では周辺から50名ほどの住民の方が集まってくれました。調布市内でも北部に位置し、中心部からは少し外れた立地なので、当社も含めてここを一緒に盛り上げてくれるプレーヤーは歓迎されている印象です」(下村さん)

「hoccoが順調に成長し、地域に溶け込んでいっているのを見てきたので、meedoもそのようにして地域に根付いていけばいいですね。特にmeedoに出店する方は深大寺や近隣エリアで既に活動している方も多いので、こうしたプレーヤーから派生してつながりも広がっていくのではないかと期待しています。賃料などの面からも、チャレンジしやすい条件がそろっていると思います」(中山さん)

イベント「梅しごと」のイメージ
シェアキッチン「meets meedo」でのイベント「梅しごと」

さらに、hoccoやmeedoといったコミュニティづくりのプロジェクトは、社内にも好影響をもたらしています。

「運転士にとっても、何もなかった折返場にきれいな建物ができたり、少し休憩できる施設があるとモチベーションにつながります。閑散とした起終点よりも、にぎわいのある場を通って仕事ができることで張り合いができたという声も実際に聞きますし、採用の場でも、hoccoを目にして小田急バスの事業の独自性に関心を持ったという応募者が増えていて、これらの面にもよい影響が出ているのはうれしいですね。今後の課題は、桜堤や深大寺のような条件とは異なる場所での展開です。人が集まりにくいなど、にぎわいづくりの難しいエリアも残されているため、どのような形で土地活用に取り組むべきかを議論していきます」(下村さん)

下村さん・中山さん・萩原さんイメージ

モビリティとコミュニティ、そして防災。meedoのコンセプトを体現していく主役は入居者や地域住民の方々。路線バスを担う企業だからこそ持てる地域へのまなざしを大切に、小田急バスの走るまちに「住み続けたい」と選ばれるような取り組みを模索し続けています。

※内容は取材時のものです。

INTERVIEWEE

小田急バス㈱
取締役 不動産ソリューション部長 下村 友明
不動産ソリューション部 課長 中山 晴政
同           課長代理 萩原 真希子

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