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新宿駅を中心に100年に一度といわれる開発が進む新宿エリア。特に西口では、小田急百貨店新宿店本館の跡地に高層ビルの建設が予定されており、現在、地上と地下でいくつもの工事が進行しています。今、まさに大きく変わりつつある新宿は、この先どのような姿になるのか。小田急電鉄㈱で「新宿駅西口地区開発計画」の推進やエリアマネジメントに携わる小河原洸次朗さんと寺田絵理さんに、プロジェクトの進捗や新宿の未来像を聞きました。
まちをアップデートし、新たなにぎわいや人の流れを生む
新宿は絶えずアップデートを繰り返しながら進化してきました。1960年代の小田急百貨店新宿店の開業、小田急線新宿駅の改良工事もその一つです。それから、半世紀以上の時が経ち、更新期を迎えるビルも多い中、2018年には東京都と新宿区による「新宿の拠点再整備方針」が発表され、西口エリアを含む新宿全体の大規模なまちづくり計画が動き出しました。現在は再整備方針に基づく「新宿グランドターミナル構想」をもとに、「『交流・連携・挑戦』が生まれる人中心のまち」を目指し、新たなにぎわいや人流の創出、ビジネス交流拠点としての整備が進められています。
(小河原)小田急百貨店新宿店本館の跡地に建つ地上48階・地下5階建てのビルが2029年度に竣工予定で、これが「新宿グランドターミナル」における再開発プロジェクトの第1弾という位置付けです。都庁を超える高さのビルということもあり、生まれ変わる新宿の象徴的な存在になると感じています。私たち民間の再開発により新たな魅力を創出することはもちろんですが、東京都による土地区画整理事業では、JR線上空の2階に新たな自由通路が設けられ、駅を中心とした東西南北の回遊性や滞留性の強化を目指しています。新宿にこれまで以上に人を呼び込み、そこから各エリアへ来街者が広がる仕掛け作りに官民一体となって取り組んでおり、多くの人が集まる新宿という場所のポテンシャルを最大限生かせるような計画を進めています。
高層ビルの建設と並行して、小田急線新宿駅でもリニューアル工事が進んでいます。
(小河原)駅構内には、新たに吹き抜け空間やテラスを作り、ホームへ入ってくるロマンスカーの姿を眺められる場所を設ける予定で、新宿の「玄関口」として象徴的かつ快適な駅空間へとアップデートさせていきます。また、小田急百貨店新宿店本館や新宿ミロードの跡地では建物の解体と新たなビルを建てるための準備工事を行っているところですが、他社の線路や多くの建物が近接している中、通常どおりの鉄道運行をしながらの工事ですので、安全への一層の配慮が求められ、一歩ずつ着実に進めていく必要があります。
新宿の「今」と「これから」をさまざまな形で発信
2人が所属する新宿プロジェクト推進部では、新宿というまちの魅力を来街者へ伝えるため、新宿で事業を行う鉄道各社と共同でさまざまなイベントや実証実験の企画・運営、そして情報発信に向けたブランディングの検討などを行っています。その一環として2025年10月に実施したのが、開発工事が進行する現場を見学できる一般参加型のツアーです。
(寺田)普段は立ち入ることのできない仮設構台(工事車両等が使用するためのスロープ)から、工事が先行している西口駅前広場と開発計画の内容を中心に、新宿がどのように生まれ変わるのかを解説しました。小田急百貨店新宿店本館が解体されたことで、西口側から東口側が見えるようになりましたが、これも新たなビルが建てば再び見えなくなる、今だけのもの。少しずつ姿を変える新宿の姿とともに、私たちが目指す新たな新宿の未来像を感じていただけるような内容にしました。参加者の方もそれぞれ新宿に思い出があり、当時と今を重ねたり、「いつも通勤で利用する新宿がどのように変化していくのかがわかってよかった」「工事が進んだらまた見に来たい」と前向きな声をいただきました。
(小河原)実施に向けては、プロジェクトに参画している鉄道5社の目線合わせに加え、行政や実際に工事を行っている建設会社の協力が欠かせません。特に、現在工事が進んでいるのは西側のエリアであるため、計画がまだ先の事業者にも趣旨を理解いただき、どう巻き込んでいくかが大きな課題ではありましたが、「新宿をもっと良いまちに、人が集まる魅力的なまちにしたい」という思いは各社共通の思いのもと、関係者間で目線をそろえることができ、実施に結び付けることができました。
さらに、工事が続く駅や通路では、新宿の過去、現在、未来を伝える試みも行っています。
(寺田)通路が複雑化していることもあり、駅や通路でも誘導サインの設置や誘導員の配置など、駅利用者の利便性をできるだけ損なわないための対策を取っています。ただ、仮囲いで覆われた工事エリアは内部が見えず、利用者の方にとっては「ずっと工事をしているけど、変化がわからない」という印象をもたれがちです。そこで、仮囲いを活用して新宿の歴史や文化などを発信することで、来街者の興味喚起や気付き、さらに「これからはどう変化していくのかな」と思いをめぐらせられるような取り組みを、㈱小田急エージェンシーを中心に小田急グループ一体となって推進しています。
「新宿だから行きたい!」にマインドをチェンジ
新宿駅周辺でのにぎわいづくりや開発プロジェクトの推進を通して、2人が感じた新宿の魅力についても尋ねてみました。
(小河原)まずは利便性ですね。買い物、遊び、観光、宿泊、仕事。どれをとっても新宿は圧倒的な規模ですし、新宿に来れば何でもできるというのは大きな魅力です。その一方で、「新宿だから行こう!」という期待感や「新宿に行ったらこんな体験ができた!」という驚きは足りないのかもとも思っていて。買い物や仕事など、目的が起点となって訪れる人は多いのですが、「新宿に行けば何かしら楽しめる」というモチベーションを生み出すことが、私たちエリアマネジメントを担う者にとっての課題の一つです。
(寺田)私も、新宿をもっと「選ばれるまち」にしていきたいと思っています。新宿中央公園では継続してキャンドルナイトのイベントを開催していますが、毎年訪れているという方もいるんです。他のイベントでもやはり「継続して実施してほしい」という声をいただく機会が多いですし、一度限りではなく継続的にイベントを実施することで「新宿に行けば何かあるかも」と期待して訪れる人が増える可能性を感じていて。一方で、新宿はエリアごとに分断され、それぞれのエリアで目的が完結する印象が強いのも事実です。だからこそ、点ではなく面で捉え、新宿エリア全体の回遊性を高めるような施策を打ち出していく必要があると考えています。
(小河原)官民の境界なく東西南北あらゆる空間でにぎわいが連続し、もっと自由にまちを回遊して楽しめたらいいですよね。そのためには、第1弾となる新宿駅西口地区開発計画だけではなく、そこから続くさまざまなプロジェクトが一体になることで実現できると考えています。だからこそ、私たちのプロジェクトが竣工してからも、新宿エリアに関わる者として、長期的な目線でのにぎわいを生む活動やブランディングに関わっていきたいと思っています。
新宿エリアの再開発は、2045年ごろまでと長期にわたるもの。その時、新宿はどのような姿を見せ、人々の出会いを生み出しているのでしょうか。2029年度の本計画のビル竣工は、新たな新宿の始まりの瞬間となるはずです。
※内容は取材時のものです。