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持続可能なまちづくりに
必要なこと
それは、まちが「健康」に
なっていくこと

熊澤さんと野村さんイメージ

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小田急線町田駅が名称変更によって誕生したのは1976年。一方、町田市をホームタウンとしたFC町田ゼルビアが誕生したのが1977年。ともに半世紀近くにわたり町田に根差し、地域に活力を生み出してきた両者。

今回は、FC町田ゼルビアで地域連携をリードする地域振興部長の野村卓也さんと、小田急電鉄㈱で町田駅長を務める熊澤巌さんに、このまちでどのような価値を創造し、提供していきたいのか。そんな思いを語っていただきました。

まちへの深い愛着とくらしに根付いたそれぞれの活動

特急ロマンスカーも停車する小田急線有数のターミナル・町田駅と、プロサッカークラブ・FC町田ゼルビア(以下、ゼルビア)のホームタウンでもある町田市。まずは両者が「町田」という場所をどのように捉え、どのように関わってきたのか尋ねてみました。

(野村)ゼルビアの前身は市民の力で発足されたFC町田トレーニングセンターという少年少女の選抜活動なのですが、それも含めて市民活動がとても盛んなエリアだなと感じます。地域での課題解決や、まちの魅力をより高めていこうと自発的に行動する方が多いですし、そうした団体や市民の皆さんのつながりも強い。町田への愛着が強い人がたくさんいらっしゃる印象です。

(熊澤)私は神奈川県座間市の出身で、幼少のころから「町田に来れば何でもある」という印象を持っていました。町田駅の規模感を考えると、新宿に次ぐ “ナンバー2”の駅だと思います。コロナ禍を経て、乗降人員の面では乗り換え利用の多い代々木上原駅にナンバー2の座を奪われる形になりましたが、駅周辺には百貨店や繁華街もあり、やはり小田急電鉄にとっても存在感の大きいまちです。

小田急百貨店町田店
現在の町田駅。小田急百貨店町田店をはじめ、駅周辺には商業施設などが立ち並び、にぎわいを見せている

(野村)ゼルビアは市民活動から生まれたというクラブという歴史もあって、地域との関わりは非常に大切にしています。「町田市民が誇れるクラブ」「子どもたちの健全な育成と夢の創造に貢献する」「地域の発展に貢献する」をクラブ理念に掲げ、それらの理念を体現するために、地域の皆さんとの交流や地域貢献活動に注力してきました。

野村さんイメージ

(熊澤)町田には子育て世帯も多く、小田急百貨店町田店でもファミリー向けのイベントを開催するなど、町田の魅力を発信し、町田エリアや周辺地域の方に届ける取り組みを行ってきました。また、鉄道を利用していただくことも私たちにとっては重要なミッションですから、エリア外から人を呼び込むことも重視し、企画に取り組んでいます。

熊澤さんイメージ

スポーツや駅を接点に、市民や来街者との関わりを深める

ともに長い歴史を持ち、町田というまちとともに成長してきたゼルビアと小田急電鉄。地域や市民とのコミュニケーションにも注力してきました。

(野村)私たちは、50年近い歴史の中で市民クラブとしての矜持を変わらず受け継ぎ、「地域活動は当たり前のこと」という価値観を全員で共有してきました。試合の興行やサッカー教室といったサッカーを通じた地域交流に加えて、市内の団体が開催しているワークショップなど、一見するとサッカーとは直接関わりのなさそうなイベントにも関わっています。サッカーだけでなく、町田というまちに愛着を持ってほしいという思いのもと、サッカーに親しむ機会がない方々にもアプローチし、町田市の魅力を知り、その人が心豊かな生活を送れるきっかけになるような活動も大切にしています。

フェスタまちだ2025
町田の大型市民祭「フェスタまちだ2025」での様子

(熊澤)小田急電鉄では子育て層にフォーカスして、「子育て応援」の施策を多く打ち出しています。例えば、小児IC運賃を全区間で50円にしたり、小さなお子さんが乗車しているときにも周囲のお客さまに温かく見守っていただけるよう、通勤車両と特急車両のどちらにも「子育て応援車」を設けるなどの全社的な施策を行っています。さらに町田エリアでは、小田急グループとして、市内のママさんたちが立ち上げた団体「らぶふぁみ」のイベントやワークショップなどに小田急百貨店がスペースを提供したり、町田市産の食材を使った駅弁を販売したりと、市民団体や観光コンベンション協会とのコラボレーションも行い、地域の方々との交流や小田急電鉄が得意とする「鉄道」を切り口とした価値提供に取り組んできました。

まちだの駅弁
町田市産の食材を使った「まちだの駅弁」の販売

(野村)子育て世代といえば、ゼルビアでも市内在住のお子さんの誕生や定期健診、入学など、節目節目でマスコットキャラクター「ゼルビー」のグッズを配布しています。開始から4年ほどで、寄付したゼルビーのぬいぐるみは1万体以上。地元にクラブがあることでクラブの認知向上や愛着醸成につながればと思っています。

取り組みの成果が出る一方で、まだ足りないと感じる点もあります。

(熊澤)さまざまな子育て応援施策を出していますが、先にお話しした「らぶふぁみ」の方々からも「子育て応援車のことを知らなかった」という声を聞きますし、認知向上に向けて駅単位、企業単位で取り組む必要があるなと感じています。鉄道や駅は「乗ってもらう」「来てもらう」ことがミッションですから、今よりももっと「利用しやすい」と感じてもらわなければなりません。

(野村)私たちも、ファンやサポ―ターの方々には一定の思いや情報はしっかり届けられている一方で、サッカーに興味のない人やゼルビアを知らない人には私たちの活動が伝わりきらない部分がまだまだあると感じています。J1に昇格したことで話題性も高まりましたし、パートナー企業との関わり方にも幅が出てきて、今はまさに絶好のタイミングです。パートナー企業や自治体にも繰り返し足を運び、皆さんの課題に対してゼルビアに何ができるのか、どのような形で関われるのかを考えるようにしています。お互いの強みやアプローチできる層の違いを生かして、より効果的な活動ができるようになっていけばと感じています。

まちに活力と安心感を育み、もっと健全で健康なまちへ

ゼルビアのパートナー企業でもある小田急電鉄。町田というエリアを舞台に、これからどのような取り組みを思い描いているのかを聞きました。

(熊澤)以前と比べると、ファミリーが増えるなどまちの雰囲気も変化してきていますし、町田そのものの認知度も上がってきていると感じます。ゼルビアがJ1に昇格したことで、市外から観戦に訪れる人もさらに増えるという期待感もあります。今は町田駅や、スタジアムの最寄り駅である鶴川駅にゼルビアを応援するボードを設置して試合結果やサポーターの方からの応援メッセージなどを掲示したり、ゼルビアの選手による駅アナウンスを流したりと、いろいろな施策で協働していただいているので、今後も継続していきたいです。認知度が上がっている今だからこそ、市民活動のモチベーションとなる「地域への愛着」を育むために、これまで地域と成長してきた私たちが、ゼルビアをはじめとした地域のパートナーの皆さまとともに地域を盛り上げることが大事であると考えています。

選手のサイン入りポスターの掲出
町田駅に設けられたスペースには、選手のサイン入りポスターも掲出

(野村)町田駅もゼルビアも、ある意味「不変なもの」ですよね。お互いに、これからも町田というまちにあり続けるものだと思いますし、だからこそ、これからも密接に連携していきたいですよね。人が元気なまちって、きっと活気のあるまちだろうなと思っています。町田エリアには小田急電鉄さんをはじめ、一緒に頑張ってくださるプレーヤーも多数いらっしゃるので、ゼルビアもブレずに得意分野であるスポーツを切り口に町田市の人が元気になれるような企画をどんどん実行し、「いいまちだな」「町田に住みたい、住み続けたい」と思ってもらえるようなまちづくりに取り組んでいきたいです。

「小田急マッチデー」に駆け付ける町田駅の所属員イメージ
「小田急マッチデー」に駆け付ける町田駅の所属員
今季J1リーグ開幕に合わせて町田駅で実施されたゼルビアの告知活動イメージ
今季J1リーグ開幕に合わせて町田駅で実施されたゼルビアの告知活動

(熊澤)駅というのは、やっぱりそのまちの中心的な存在だと思います。駅に集う方とまちをつなぐ架け橋のようなものでもあって、皆さまとつながっていくことで、安心感や期待感、満足感を得られる場所でありたいですね。

(野村)私たちも、そこに対して何かできないかなとよく考えています。出勤のために町田駅から電車に乗る人に元気になってもらえるような、また帰ってきたときにはホッとしてもらえるような、日常に溶け込んだ継続的な取り組みができたらと考えています。朝、みんなで駅前広場でラジオ体操なんてどうでしょう?(笑)

野村さんと熊澤さんイメージ

それぞれの立場から、町田というまちをより良くし、そこに住まう人たちが健やかに暮らしを営み、まちに愛着を持って住めるような活動に取り組むゼルビアと小田急電鉄。互いに手を取り合いながら、これからもチャレンジは続きます。

※内容は取材時のものです。

INTERVIEWEE

㈱ゼルビア
地域振興部長 野村 卓也さん

小田急電鉄㈱
旅客営業部 町田駅長 熊澤 巌

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