鉄道運転事故

鉄道運転事故は、下記のように7種類※に分類されますが、2007年度については踏切障害事故と鉄道人身障害事故が15件発生しました。踏切障害事故については、主に踏切での人・自動車などによる直前横断や停滞によるもの、鉄道人身障害事故については、ホーム上での接触によるものとなっています。

鉄道運転事故件数の推移

鉄道運転事故件数

※鉄道運転事故の分類
~国土交通省令「鉄道事故等報告規則」より~

列車衝突事故 列車が他の列車又は車両と衝突し、又は接触した事故
列車脱線事故 列車が脱線した事故
列車火災事故 列車に火災が生じた事故
踏切障害事故 踏切道において、列車又は車両が道路を通行する人又は車両等と衝突し、又は接触した事故
道路障害事故 踏切道以外の道路において、列車又は車両が道路を通行する人又は車両等と衝突し、又は接触した事故
鉄道人身障害事故 列車又は車両の運転により人の死傷を生じた事故(前各号の事故に伴うものを除く)
鉄道物損事故 列車又は車両の運転により500万円以上の物損を生じた事故(前各号の事故に伴うものを除く)

輸送障害

2007年度の輸送障害※は20件発生しました。主な原因は、線路内立入りなどの第三者行為によるものと、雪害・雷害などの自然災害によるものです。

輸送障害:鉄道による輸送に障害を生じた事態であって、鉄道運転事故以外のもの(列車に運休または30分以上の遅延が生じたもの)
~国土交通省令「鉄道事故等報告規則」より~

輸送障害件数の推移

輸送障害件数

~原因内容について~

部内原因 鉄道係員・車両・施設などが原因のもの
鉄道外原因 第三者行為、沿線災害などが原因のもの
災害原因 風害、雷害、倒木など自然災害が原因のもの

列車妨害の状況と対策

列車妨害発生件数

列車妨害とは、線路上への置石や、いたずらによる踏切支障報知器の操作、座席の切り裂き行為など、列車への妨害行為の総称です。このような行為は、列車の定時運行を阻害するばかりでなく重大事故につながる可能性があります。
近年、当社においても他社線と同様にこのような列車妨害が増加傾向にあり、特に置石が多発しています。これに対し、2003年度より列車妨害行為の危険性を周知するため、立て看板の設置や沿線の学校にて説明会を実施するなど、列車妨害防止キャンペーンを展開、2007年度の発生件数は144件(前年比36件減)となっています。
また、2007年度には、沿線の小学校に出向き、列車妨害の実態を説明し、列車妨害行為の減少につなげる活動を実施してきました。また近年増加傾向にある座席の切り裂きの列車妨害行為については、乗務員をはじめ、検車区員などによる車内の巡回・点検を強化するとともに、鉄道警察隊による巡回などの協力を得て妨害行為の減少に努めています。

東海大学前駅で発生した事故の再発防止策について

事故概要と対策の考え方

当社では、2007年6月13日に東海大学前駅構内で人身事故を発生させてしまいました。お客さまにご迷惑、ご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。既に、乗務員に対する再発防止教育や訓練内容の見直しを推進しておりますが、同駅での再発防止対策のほか、全線の曲線ホームに対する検証を踏まえた同種事故防止策の策定について、社内関係各部からなる「東海大学前駅人身事故再発防止対策検討チーム」を設置の上、検討を進め、順次、対策を実施しております。事故発生以降、これまでの再発防止に向けた取り組みについてご報告いたします。

事故概要

[1]発生日時

2007年6月13日(水)10時38分ごろ
天候 晴

[2]発生場所

東海大学前駅構内 下りホーム

[3]列 車

新宿発 箱根湯本行
10両編成

[4]発生状況

当該列車を担当していた車掌は、東海大学前駅にてお客さまの乗降終了を確認した後、閉扉し、モニターと目視により、扉の状況を確認しました。この際、お客さまが扉に指を挟まれていることに気付かず、発車すると列車から離れると思い、運転士に対して閉扉完了の合図を行いました。列車は、お客さまの指を扉に挟んだまま出発したため、お客さまは、列車とホームの隙間に転落し、負傷されました。なお、当社の車両は、「知らせ灯(※1)」および「車側灯(※2)」により、一定の厚みのものが扉に挟まっている場合、これを検知し出発できないシステムとなっていますが、今回の事故では検知されませんでした。
(※1)「知らせ灯」とは、運転室に設置されており、運転士に対して、すべての扉が閉まり運転可能な状態であることを示す表示灯です。この表示灯は、一定の厚みのものが扉に挟まっていると点灯せず、列車を発車させることができないようになっています。
(※2)「車側灯」とは、各車両の両側に設置されており、車掌・駅係員に対して、車側灯が設置されている側の扉が閉まっていることを示す表示灯です。この表示灯は、一定の厚みのものが扉に挟まっていると消灯せず、列車を発車させることができないようになっています。

対策の考え方

本件事故に係る対策の考え方

再発防止に向けた取り組み

知らせ灯(※1)検知範囲の変更

知らせ灯検知範囲の変更

知らせ灯の消灯について、現行の「16ミリ以上のものを挟んでいる場合」を「11ミリ以上のものを挟んでいる場合」に変更し、本件事故のような事象の発生リスクを低減させます。(但し、4000形は15ミリ以上)
なお、すべての車両において2008年8月末までに変更が完了しました。

車側灯(※2)検知範囲の変更

車側灯検知範囲の変更

車側灯の点灯条件について、現行の「30ミリ以上のものを挟んでいる場合」を「15ミリ以上のものを挟んでいる場合」に変更し、今回の事故のような事象の発生リスクを低減させます。
なお、すべての車両において2008年8月末までに変更が完了しました。

戸閉弱め機能の追加

3000形(3次車以降)車両には、扉が閉まった直後6秒間は、自動的に扉の圧力を弱めることにより、挟まったものが抜けやすくなる機能が付加されています。この機能を今後の車体修理工事に併せ、順次、ほかの車両に導入します。
また、4000形には、扉に何かが挟まった場合、自動的に再開閉を反復して行う機能が付加されており、厚さ15ミリ以上が検知範囲となっています。

運転士による後方確認の実施

運転士による後方確認の実施

列車が駅に停車し、車掌が閉扉操作、出発合図を行うまでの間、運転士が乗務員室扉の窓を開け、そこから後方を目視確認することにより、車掌の作業の一部を補完するものです。
この取り組みは、要注意駅13カ所を指定し、実施しています。

車掌の出発判断基準の明確化

車掌の出発判断基準の明確化(逆L安全確認)

従来から、車掌に対し、列車に人が接近しているような状態においては、列車を起動させることは危険であるとの教育および指導を行ってきましたが、今回の事故を受け、「ホームの黄線より列車側に人がいる場合は、危険であり、列車を出発させてはならない」旨、その危険判断基準を明確に示し、2007年6月14日より、実施しています。

乗務員教育・訓練の見直し

本件事故を受け、特に、経験年数が少ない乗務員に対する教育・訓練の見直しを図っています。具体的には、養成教育などにおける安全意識向上のための他社施設(事故展示)などの見学、車掌における追指導教育の回数増などについて、2007年6月より随時実施しています。

輸送障害の再発防止対策について

1.2007年7月29日(日)に発生した雷害の対策について

電子連動装置
電子連動装置

[1]発生日時

2007年7月29日(日)20時23分

[2]場 所

相武台前駅構内

[3]概 要

落雷の影響により電子連動装置故障が発生し、信号保安装置が停止状態となり、長時間にわたり支障したもの。

[4]対 策

「雷警戒基準検討チーム」を設置し、雷害の被害を小さく抑える設備の整備、被害発生後の迅速な復旧体制の整備をポイントに、防雷システムの導入、基準類の見直しを行い、「異常気象事前警戒基準」の「降雨警戒基準」に「雷警戒基準」を追加し、「降雨・雷警戒基準」としました。また、関係各部門の内規類の見直しも実施しました。

2.2008年2月4日(月)に発生した氷害の対策について

パンタグラフ

[1]発生日時

2008年2月4日(月)6時35分

[2]場 所

鶴巻温泉駅および栢山駅~開成駅間

[3]概 要

①小田原駅発車後より断続的に架線のアークを認めたため、鶴巻温泉駅到着後、パンタグラフを確認すると2号車のパンタグラフの摺板帯が曲損し割れているのを発見したため、伊勢原駅で前途を打切りとしたもの。
➁小田原駅発車後より断続的に架線のアークを認め栢山駅到着後、パンタグラフを確認すると3号車のパンタグラフの摺板帯が割れているのを発見したため、前途を打切り、開成構内へ入庫させたもの。

[4]原 因

架線着氷によりスパークが発生しパンタグラフが破損したもの。

[5]対 策

「パンタグラフ故障防止対策検討チーム」を設置し、設備面では、アークの発生を低減させる対策、取扱い面では、着氷霜防止試運転列車の運転などについての取扱いを見直すことを中心に、検討を進めてきました。また、恒久的対策として箱根登山鉄道(株)と連携した対策についても検討が必要であるため、取扱いの検討も進めています。

3.2008年2月5日(火)に発生した保安装置故障の対策について

[1]発生日時

2008年2月5日(火)6時20分

[2]場 所

新百合ヶ丘駅構内

[3]概 要

新百合ヶ丘駅構内の転てつ器が転換不能となり、長時間支障したもの。

[4]原 因

凍結により転換不良となったもの。

[5]対 策

「転てつ器不転換事故防止対策検討チーム」を設置し、設備面および取扱い面について検討を進めてきました。検討の結果、設備面では電気融雪器の早期設置、取扱い面では厳寒期における初電前の転てつ器試操作の実施等具体的な対策を実施することとしましたが、厳寒期の対応について規程類を見直す検討も進めています。

お客さまに安全と安心を(安全報告書2008)