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人との語らいや
つながりが紐解く
ウェルビーイングと
小田急の関係

小田急電鉄㈱ 吉本さん、小田急不動産㈱ 清水さん、櫻井さんのイメージ

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小田急電鉄㈱では、沿線住民を中心に対象とした「小田急沿線生活者1万人調査(以下、「1万人調査」)」を毎年行い、地域の価値創造に向けた取り組みに役立てています。そこで着目しているのが「ウェルビーイング(well-being)」です。生活者のウェルビーイングは地域への愛着を育み、沿線価値の向上につながるという仮説のもと、さまざまな検証を行ってきました。今回は、小田急不動産㈱とともに実施したお客さま参加の対話型イベントを軸に、ウェルビーイングの向上が生活者そして地域にもたらすものについて、吉本弘樹さん、清水あかりさん、櫻井麻紀子さんに聞きました。

ウェルビーイング向上のヒントは「つながり」「自分らしさ」!?

「ウェルビーイング」とは心身の健康や社会の豊かさなど、多様な要素から生まれる人々の幸福度やより良い生き方を表す言葉で、小田急電鉄でも2022年から「1万人調査」で沿線住民のウェルビーイングの実態調査をしています。

「1万人調査」の実施機関である小田急総合研究所(小田急電鉄)の吉本さんは、ウェルビーイングについて次のように語ります。

(吉本)当社では「地域価値創造型企業」を経営ビジョンに掲げ、地域や企業価値の創出に取り組んでいます。地域に根差した事業を行う上で、地域や生活者の活力は見逃せない指標であり、ウェルビーイングが高水準である、つまり人や地域が元気であることで、経済やビジネスがうまく回っていきます。

どうすれば、生活者のウェルビーイングは向上するのか。仮説検証や国内外の研究を調査していく中で「社会とのつながり」や「自分らしさ」、「自分が役に立てているという実感」といったキーワードが見えてきました。

(吉本)それらのキーワードをどのように当社の事業や取り組みに落とし込めるかを検討する中で、国立アートリサーチセンターの共創フォーラムに参加する機会がありました。テーマは「ミュージアムで幸せになる」。アートや文化との触れ合いが、ウェルビーイングに結び付く可能性を感じました。さらに調べてみると、アートとウェルビーイングの相関は国内外で研究されていて、「1万人調査」の中でも文化芸術体験の有無や頻度を調査してみたところ、ウェルビーイングと相関関係にあることが読み取れました。また、国内でもアートを介してコミュニティを育むアートコミュニケーション事業に取り組んでいる地域が複数あることを知りました。

吉本さんイメージ

アート鑑賞を通じた対話型イベントで生まれる人と人とのつながり

アートを介してウェルビーイングの向上につなげられないかと模索する中で、浮かび上がってきたのが「対話型鑑賞」という手法でした。対話型鑑賞とは少人数で同じアートを鑑賞し、感じたことや気付きを参加者同士が「対話」によって共有し合う鑑賞手法のことです。プライベートでも対話型鑑賞を勉強していたという小田急不動産の櫻井さんは、ウェルビーイングの研究の存在を社内で聞いたと言います。

(櫻井)偶然にも対話型鑑賞の手法やファシリテーション技術を学んでいたところでした。アートの鑑賞には正解がないので、感じたことを自由に発信しやすく、また相手の意見も傾聴できる空気感ができます。元々は子どもたちが自由に想像をめぐらせたり、自分と他人の感じ方の違いを知ったりするための鑑賞法ですが、「こんなことを言ったら変かも」「空気を読まないと」と思いがちな私たち大人にも応用ができる鑑賞方法です。

櫻井さんイメージ

ファシリテーションができる人が近くにいるなら、すぐにでも何かできるのでは。
吉本さんは小田急グループが有するアートとして、箱根・山のホテルで展示している川瀬巴水(かわせ はすい)の絵画を題材に、ホテル宿泊者と従業員に向けて「川瀬巴水 対話型鑑賞会」を実施しました。

(吉本)従業員の方からは、「絵のバックボーンを知る機会になった」「大切な絵であることを実感したし、もっとホテルのことや絵のこと、画家のことを知りたい」といったポジティブな反応がありました。海外出身のスタッフが自身の故郷のことを話してくれたこともあり、その後のスタッフ同士のコミュニケーションのきっかけにもなったそうです。

また、小田急電鉄として、東京藝術大学が主導する「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」(通称:ART共創拠点)にも参加し、2025年11月にはロマンスカーミュージアムで「写真の中のあなたと小田急」展を開催し、写真を用いた展示やワークショップを実施しました。さらに、2026年5月には小田急不動産と協働で、「世田谷 経堂 おもいで写真展」(世田谷 小田急住まいのプラザ)において、「写真で語ろう!参加者同士で楽しむおはなし会」という昔の写真を扱った対話型鑑賞会を行いました。

025年『写真の中のあなたと小田急』展対話型鑑賞ワークショップの様子
2024年スタッフ向け 川瀬巴水 対話型鑑賞会の様子

ロマンスカーミュージアムでの対話型鑑賞ワークショップと山のホテルでの対話型鑑賞会の様子

COMMENT

地域の生活や文化を支える鉄道は、体と心と社会の健康を結ぶとても大切な存在であることは間違いありません。「写真の中のあなたと小田急」で感じたのは、沿線の「記録」たる写真が、一人ひとりの人生の「記憶」と重なることで、今この瞬間に新たな価値が生まれることへの驚きでした。小田急との連携は、「暮らしの場」(いわば生活のリズムそのもの)を文化的資源として捉え直す可能性であると考えており、多様な文化を媒介に、人が社会との接点を育み直していくことこそ、私たちが考える「文化的処方」の一つであると感じています。

東京藝術大学 社会連携センター長/教授
ART共創拠点 プロジェクトリーダー 伊藤 達矢氏

伊藤さんイメージ

東京藝術大学 社会連携センター長/教授
ART共創拠点 プロジェクトリーダー
伊藤 達矢氏

その「世田谷 経堂 おもいで写真展」の運営を担ったのは、小田急不動産の清水さんでした。

(清水)おもいで写真展は2015年から続けているもので、経堂を中心に世田谷エリアのまちや昔の風景を収めた写真を、小田急電鉄や世田谷区立郷土資料館、そして地域の方々からご提供いただいて展示しています。ロマンスカーミュージアムでの展示やワークショップのことを知り、写真の展示という共通点から「おもいで写真展でも展開できないか」と考えました。

清水さんイメージ

商店街や大学があり、長く住んでいる地元の人も多いという経堂。全2回の対話型鑑賞会には飛び入り参加もあり、地元の方同士の思い出話にも花が咲いたといいます。

(櫻井)私もファシリテーターとして参加しましたが、参加者の方が同い年ということがわかって「どこの学校だった?」「あそこにあったあのお店、知ってる?」と盛り上がって(笑)

(清水)写真展では来場者とのコミュニケーションを大切にしていて、こうした鑑賞会がなくても、私たちスタッフが来場者の方からいろいろなお話を聞かせていただいたり、当時の思い出を共有いただくこともあります。でも、やっぱり「地元が同じ」「ずっと住んでいる」からこそ共にできるたくさんの思い出があるんだなと感じることがありました。そこでの共感がまちへの愛着となっていくようです。

開催後の参加者アンケートでも、「他の人の意見を聞いて新しい見方に気付いた」「普段あまり話さない人と自然に会話ができた」と、コミュニケーションによって生まれたポジティブな心の動きを評価する声が多数を占めました。

世田谷 経堂 おもいで写真展の様子
世田谷 経堂 おもいで写真展の様子

世田谷 小田急住まいのプラザで実施した「世田谷 経堂 おもいで写真展」

誰かのウェルビーイングが、人やまちへ波紋のように広がっていく

ロマンスカーミュージアムでの展示プログラムやおもいで写真展での対話型鑑賞会を経て、吉本さんはウェルビーイングの向上以外に、小田急そのものにとってもプラスの効果が生まれる可能性に気付きました。

(吉本)アートを介した対話型鑑賞によってウェルビーイング向上の実践に取り組む中で、写真を使った鑑賞では当社内で保管している写真も使用しました。それらの写真から想起される皆さんの思い出には、いつも小田急があります。ロマンスカーミュージアムでは「小田急、大好き」「ありがとう」というコメントもたくさんいただき、これは単なるアートの鑑賞ではわき起こることのない気持ちだし、私たちが想定していなかった小田急へのプラスの効果だなと感じています。地域や小田急への愛着形成にもつながる可能性を見いだす結果となりました。

吉本さん、清水さん、櫻井さんが話しているイメージ

清水さんは、まちづくりの観点から対話型鑑賞の意義を語ってくれました。

(清水)まちづくりをする不動産会社として、街を作り替えていく一方で(古いものをなくしていく)、そこに存在していた歴史や思い出なども大事にしてほしいという参加者からのお声もありました。ただ開発を進めるだけでなく、そこに住まう人々の思いを拾いながら街をつくっていることを地域の方に見せていくことが必要であり、写真展やお話し会はその役割を期待されていると感じました。地縁のない方にも長く住んでいる方との対話を通してまちに関心を持つきっかけにしてもらえたら、それもうれしいことですね。経堂に限らず、近隣の駅やエリアでも写真展を開催しているようなので、つながりをもてたらいいなと思っています。

櫻井さんからは、小田急グループのアセットや沿線の文化的価値を再発見する施策の可能性も示されました。

(櫻井)沿線には文化資源もたくさんあります。山のホテルでは箱根に着目しましたが、大山は浮世絵の題材になっていたり、江の島や東海道周辺など文化人が愛した場所も多く、彼らが残した作品などについて話すのも面白そうです。グループ内にもこうした文化的・地域的な資源はまだまだ多く眠っていると思います。また、作品だけでなく、今回の写真展のように、既存の小田急グループの施策と上手く掛け合わせることでより大きな価値を生み出していけると思いますので、グループ内の共創、連携を強めていきたいという思いもあります。

最後に、吉本さんは「ウェルビーイングは人から人へ伝わるもので、誰かのウェルビーイングがその人の寛容さを生み、寛容さが広がることで、波紋のようにやさしいまちや地域になっていく」と語りました。アートやそれを介したコミュニケーションが人のゆるやかなつながりを生み、心ゆたかな人生を育んでいく。小田急はこれからも、住まう人の幸せとゆたかなくらしを見つめながら、沿線に住まう方とともにさまざまな取り組みを続けていきます。

※内容は取材時のものです。
監修:小田急電鉄株式会社

INTERVIEWEE

小田急電鉄㈱
小田急総合研究所 主任研究員 吉本 弘樹

小田急不動産㈱
経営企画部 顧客リレーショングループ 
清水 あかり
仲介営業部 企画推進グループ     
櫻井 麻紀子

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