体質変革期の振り返り

当社は、経営ビジョンである「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」の実現を目指し、従来以上に資本コストや株価を意識した経営を推進しながら利益を伸長させ、地域とともに持続的に成長していくことを掲げています。

経営ビジョンにおいて、2021年度から2023年度までを体質変革期と定め、「利益水準の引き上げ」「事業ポートフォリオの再構築」「有利子負債のコントロール」の3点を重点課題として設定し、聖域無き取り組みを進めてきました。具体的には、DX推進に伴う業務効率化や費用削減等の構造改革や、鉄道駅バリアフリー料金制度の活用をはじめとしたプライシングの見直し等を通じ、利益水準を引き上げました。加えて、新型コロナウイルス感染症拡大後の事業環境変化や経営ビジョンとの整合性を踏まえつつ、成長が望める事業については重点的に資源を配分する一方で、今後の成長性、事業収益性、資本効率、業界内における競争力等の観点から課題のある事業については再建・再編を進めるなど、既存事業の選択と集中を行いました。この結果、140億円の事業構造改革効果を生み出しました。また、小田急センチュリービル等の保有資産や政策保有株式についても、資本効率も踏まえて保有の意義を徹底的に問い直し、積極的に売却を進めてきました。これら体質変革期の取り組みにより、長きにわたり推進していた複々線化事業に伴い高い水準にあった有利子負債残高を2023年度には6,269億円(回復目安として掲げていた目標値7,000億円)とし、有利子負債/EBITDA倍率も6.5倍(同7倍台)とすることができました。フリーキャッシュフローを創出し、自己資本を積み増しながら資金調達余力を確保したことで、グループ全体が成長するための財務基盤を整備することができたと自負しています。

2018年度から2023年度の実績比較

2024年度からの飛躍期における連結財務目標

当社は、2024度から飛躍期(2024~2030年度)をスタートしており、2030年度にROE10%以上、営業利益800億円を、この過程の中期目標として2026年度にはROE8.0%、営業利益540億円を掲げているほか、有利子負債/EBITDA倍率については、2030年度まで7倍台でコントロールすることを定めています。また、2025年度の業績については、前期に百貨店業およびストア・小売業において決算期を変更し13ヵ月間を連結した反動があるものの、交通業における輸送人員の増加や、不動産業における計上予定戸数の増加等により、営業収益は4,250億円(前期比0.5%増)を見込んでいます。これに伴い、営業利益は530億円(同3.0%増)、経常利益は510億円(同1.0%増)を見込んでいます。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期にUDS㈱の外部譲渡に伴う関係会社株式売却益や投資有価証券売却益を計上した反動等により350億円(同32.6%減)となる見込みです。

エクイティ・スプレッドの拡大に向けたROE向上と株主資本コストのコントロール

2030年度の連結財務目標達成に向け、資本コストや株価を意識した経営を推進してまいります。

近年の株価の推移や市場の皆さまとの対話、足元の金融環境等を踏まえ、当社の取り組むべき課題を「エクイティ・スプレッドの拡大に向けたROEの向上と株主資本コストのコントロール」と設定いたしました。なかでも、ROEの向上に向けては、営業利益の伸長とともに不動産物件の積極的な入れ替えによりバランスシートをコントロールすることでROAを高めてまいります。

グループ全体での営業利益ROAは、足元2024年度では4.1%でしたが、これを2030年度においては4.9%以上まで引き上げます。全てのセグメントにおいて、投資や利益獲得の進捗を定期的にモニタリングし、改善点の早期把握と速やかな対策により、目標達成を目指してまいります。

加えて、株主還元の基本方針の下、中長期的に自己資本比率を30%まで圧縮し、株主還元の強化にも取り組みます。

足元の業績は好調であり、2030年度、さらにその先の収益・利益を伸ばしていく新たな成長局面に入った手ごたえを強く感じています。今後も資本コストと株価を強く意識した経営を継続し、事業基盤・経営基盤の強化に向けた取り組みを着実に実行し、持続的な利益成長を実現してまいります。