複々線化事業の概要

当社では、輸送需要に対応するため列車を増発し、朝のラッシュピーク時には、およそ2分に1本の割合で列車を運転しています。あわせて、この時間帯に都心方面に向かう急行・準急はすべて10両編成、各駅停車を8両編成で運転するなど、列車の長編成化も行ってきました。
しかし、従来の複線設備では輸送力に限界があることから、快適な輸送サービスを実現するための抜本的な輸送改善策として、東北沢〜和泉多摩川間(10.4km)の複々線化事業を進めています。世田谷代田~和泉多摩川間(8.8km)についてはすでに複々線が完成しており、現在は、東北沢~世田谷代田間(1.6km)において、2017年度の複々線化、2018年度の事業完了を目指し工事を進めています。
なお、当区間の複々線化事業は、鉄道を立体化して踏切を廃止する、東京都の連続立体交差事業と一体的に行っており、2013年3月には工事中区間の立体化が完了し、完成区間を含む事業区間内にあった39カ所すべての踏切が廃止されました。

路線図(工事区間図)

東京都の連続立体交差事業

複々線化事業は、東京都の都市計画事業である「連続立体交差事業」と一体的に実施されています。
詳細はこちらからご覧ください。

東京都の連続立体交差事業

事業費について

複々線化の事業費は各種助成制度を活用しながら全額を小田急が負担しています。

ここまでにご説明したとおり、複々線化事業と連続立体交差事業は同時に進められているものの、それぞれが別の目的をもつ事業であり、その事業者も異なります。

複々線化事業は、混雑緩和と所要時間の短縮により、快適な輸送サービスの実現を目指す小田急の事業です。また、連続立体交差事業は、踏切をなくすことで慢性的な交通渋滞の解消や、より良い街づくりを促進することを目的とする東京都の都市計画事業です。

小田急では、複々線化のために新たに増設する線路2線分の用地費や建設費(高架橋やトンネルの築造費を含む)などについて、そのすべてを負担するとともに、連続立体交差事業の費用の一部も負担しております。

複々線化事業と連続立体交差事業に関する費用負担の考え方(世田谷代田~喜多見間)

複々線化事業と連続立体交差事業に関する費用負担の考え方(世田谷代田~喜多見間)

このように、複々線化事業を行うためには、巨額の資金を調達しなければならず、借入により調達する場合には金利などの費用が発生します。また完成後にも、線路や高架橋などの構造物が増加するのに伴い、減価償却費等の諸経費が増大することになります。

小田急では、これらの費用増によるお客さまのご負担を極力低減させるために、事業の効率化を進めコスト削減を図るとともに、鉄道建設に関する各種の公的助成制度を最大限活用しています。

複々線化事業の効果

複々線完成により、朝のラッシュピーク時間帯を中心に列車の増発が可能となり、混雑が緩和されるほか、各駅停車と急行などの優等列車が別々の線路を走ることにより、所要時間が短縮されます。
また、連続立体交差事業によって、踏切がなくなり、鉄道・道路の安全性が向上するとともに、踏切での慢性的な交通渋滞の緩和や、鉄道によって分断されていた市街地の一体化が図られ、駅周辺の整備や街づくりも促進されます。

複々線完成によるラッシュ時間帯における輸送改善「3つの柱」

Ⅰ 混雑緩和による快適な輸送環境の提供 Ⅱ 所要時間短縮による都心方面へのアクセス向上 Ⅲ 千代田線直通列車増発による都心中心部への利便性拡大

複々線完成後の混雑率、運行本数、所要時間などの数字は、全て2016年度または2017年度3月31日現在のものです。最新情報はこちらをご覧ください。

ODAKYU VOICE station

完成区間(世田谷代田~和泉多摩川間)

世田谷代田〜喜多見間(6.4km)が2004年11月に完成したことに伴い、すでに完成していた喜多見〜和泉多摩川間(2.4km)と合わせ、現在、世田谷代田〜和泉多摩川間計8.8kmで複々線による運転を行っています。これにより、朝のラッシュ時間帯の列車だけでなく、日中の各駅停車についても通過待ちが解消され、所要時間が短縮されました。また、駅ではエレベーターや多目的トイレの設置など、バリアフリー化を推進しました。
さらに、鉄道が立体化されたことにより、同区間内の30カ所の踏切が廃止され、交通渋滞の緩和、鉄道と道路の安全性向上、市街地の一体化も図られています。

経堂~千歳船橋間
経堂~千歳船橋間

事業前

事業前

現在
現在

喜多見~和泉多摩川間の
複々線完成までの歩み

1985年3月 都市計画決定
(高架式)
1989年7月 工事着手
1995年3月 立体化完成
(13カ所の踏切を廃止)
1997年6月 複々線完成

世田谷代田~喜多見間の
複々線完成までの歩み

1964年12月 都市計画決定(高架式。成城学園前駅付近のみ地表式)
1993年  2月 都市計画変更決定(成城学園前駅付近を掘割式に変更)
1994年12月 工事着手
2002年12月 立体化完成
(17カ所の踏切を廃止)
2004年11月 複々線完成

複々線化事業および連続立体交差事業の進捗に合わせて、世田谷区や狛江市による駅周辺の街づくりも進められています。1997年に複々線化が完成した喜多見〜和泉多摩川間の各駅では駅前広場が整備され、路線バスやタクシーがスムーズに乗り入れできるようになるなど、交通アクセスが格段に向上しました。
また、2004年の世田谷代田〜喜多見間の複々線完成により、梅ヶ丘〜成城学園前間の各駅周辺においても、街づくりが進められており、そのうち、経堂駅と成城学園前駅では、立体化により創出された高架下や線路上部のスペースを活用した駅前広場が整備されました。

成城学園前駅西口
成城学園前駅西口
事業前
事業前

現在
現在
狛江駅前広場(整備前)
狛江駅前広場(整備前)
狛江駅前広場(整備後)
狛江駅前広場(整備後)
経堂駅 高架下部分駅前広場
経堂駅 高架下部分駅前広場
成城学園前駅前広場
成城学園前駅前広場

連続立体交差事業によって創出された高架下空間を活用して、保育所やレンタル収納スペース、駐輪場など生活利便施設を展開しています。
また、世田谷区や狛江市により、福祉施設や図書館など公共施設の整備も進められました。
さらに、駅のホームを地下に移設した成城学園前では、線路上部に駐輪場や、会員制の貸菜園「アグリス成城」を設置したほか、物販や飲食、保育所やクリニックなどで構成される駅ビル「成城コルティ」を2006年にオープンしました。

レンタル収納スペース「小田急クローゼット成城」

レンタル収納スペース
「小田急クローゼット成城」
駐輪場(成城学園前駅)
駐輪場(成城学園前駅)
成城コルティ
成城コルティ

工事中区間(東北沢~世田谷代田間)

東北沢~世田谷代田間では、東京都等関係機関の手続きを経て、2004年9月に工事着手しました。この区間は4線地下式として整備するため、着手以降、線路の直下にてシールドトンネル工事や開削トンネル工事などを進めてきました。2012年からは、各駅の駅設備や線路、信号機などの設置工事を実施し、2013年3月22日の終電後、在来線を将来の地下急行線へ切り替えました。これにより、同区間内にあった9カ所の踏切が廃止となり、鉄道と道路の安全性の向上や交通渋滞の解消など、連続立体交差事業の効果が表れています。
地下化後は、京王井の頭線交差部を含む下北沢~世田谷代田間の緩行線トンネル工事や、各駅の本設駅舎工事を進めており、2018年3月の複々線完成を予定しています。

東北沢~世田谷代田間の複々線化工事
これまでの歩みと今後の予定

1964年12月 都市計画決定(地表式)
2003年1月 都市計画変更決定
(構造形式を地下式に変更)
2004年9月 工事着手
2010年3月 シールドトンネル貫通
2013年3月 立体化完成
(9カ所の踏切を廃止)
2018年3月 複々線完成(予定)
2018年度 事業完了
地下化された下北沢駅ホーム
地下化された下北沢駅ホーム

世田谷代田駅
世田谷代田駅
下北沢駅
下北沢駅
東北沢駅
東北沢駅
小田原方面から見た下北沢駅のホーム
小田原方面から見た下北沢駅のホーム

環境に対するさまざまな取り組み

小田急では、事業活動に伴う環境への影響をより一層低減するため、さまざまな取り組みを継続的に推進しています。その一つとして、列車が走行する際の音や振動を低減するため、線路や車両の改良を実施しています。複々線・連続立体交差事業区間内においてもレールの継ぎ目を少なくしたり、高架橋部分に防音壁・吸音パネルを設置するなど、周辺の環境に配慮したさまざまな施策を講じています。


現在、新幹線を除く鉄道の騒音に関する環境基準は、法的には設けられていませんが、1995年に環境庁(現環境省)より指針が出されており、複々線化のように大規模な鉄道施設の改良を実施する場合は、「騒音レベルの状況を改良前より改善すること」とされています。


すでに複々線化・連続立体交差化が完成している世田谷代田~和泉多摩川間では、さまざまな施策を実施した結果、事業開始前に比べて列車の走行音が大幅に低減しています。

レールの下に敷いてある砂利(バラスト)には、列車の荷重を支えるだけでなく、列車が走行する際の音や振動を少なくする働きがあります。複々線化事業区間の高架橋部分では、この砂利と高架橋の間に、防音・防振効果の高いバラストマットを敷設しています。また、音や振動の発生源となるレールの継ぎ目が少ないロングレールを敷設しているほか、剛性が高い60kg/mレールを導入しています。


さらに、2004年11月に工事が完成した世田谷代田~喜多見間では、従来のバラスト軌道よりも防音・防振効果が高く、かつ重機械を使った夜間の保守作業の回数を削減できる構造(弾性マクラギ砕石軌道)を採用するなど、より一層の防音・防振対策を実施しています。

列車の走行音を低減するため、コンクリート構造の高架橋に防音壁を設置していますが、その効果をより一層高めるため、複々線化事業区間内にある高架橋の防音壁に吸音パネルを設置しています。


また、2004年11月に工事が完成した世田谷代田~喜多見間では、吸音パネルに加えて干渉型防音装置を設置し、より一層列車走行音の低減に努めています。

列車が走行する際、加速・減速を繰り返すことによって車輪の表面に平面状の損傷や凹凸ができることがあり、それが音や振動を増大させる要因になります。そこで小田急では、この凹凸を自動的に検知する装置(車輪フラット検出装置)を設置し、各車両の車輪表面の状態を把握するとともに、車輪の表面を削り平滑にする装置を使って計画的に車輪の削正を行っています。さらに、車輪表面に損傷や凹凸が発生することを防ぐため、一部の車両にABS(アンチロックブレーキシステム)を導入しています。


そのほかにも、非常時以外に使用する警報音をやわらかな電子音にするため、従来の警笛に加えて電子式の警笛をすべての車両に設置したほか、ブレーキや扉を操作するために必要な圧縮空気を作るコンプレッサーなどの機器についても、低騒音型のものを導入しています。


小田急では、このほかにもさまざまな施策を実施していますが、今後も最新の技術を積極的に採用し、列車の走行音や振動の低減に努めてまいります。

和泉多摩川~向ヶ丘遊園間改良工事

複々線化事業の効果をより一層発揮させるため、和泉多摩川~向ヶ丘遊園間(1.4キロメートル)について、改良工事を実施しました。この工事は、多摩川橋梁を架け替え、複々線化するとともに、登戸~向ヶ丘遊園間を上り2線、下り1線の3線としたものです。


1999年10月に着工し、2009年3月の切り替えを経て3線化が完了、使用を開始しました。完成した現在では、上り方向に対して、向ヶ丘遊園駅から複々線と同等の輸送効果を発揮しています。

3線化が完了した登戸~向ヶ丘遊園間
3線化が完了した登戸~向ヶ丘遊園間

駅舎計画

「東北沢」「下北沢」「世田谷代田」の3駅は、「安全な」「使いやすい」「人にやさしい」「環境にやさしい」を共通のコンセプトとして駅づくりを進めています。地元住民や関係事業者の意見、環境配慮の条例を踏まえ、太陽光パネルの設置や緑化などさまざまな環境に配慮した機能およびデザインを備えた駅舎計画に決定しました。

駅から街へ、多方面に向かう人の流れを創出するため、新宿側の改札口を開放的な空間とするほか、北側の壁面を透過性のある素材にすることで、開放感のあるデザインとしています。また、街の回遊性と駅の利便性向上のため、新宿方面、小田原方面、京王井の頭線との乗り換え箇所に改札口を設置します。

駅前広場から見たイメージ
駅前広場から見たイメージ
駅舎内2階から見たイメージ
駅舎内2階から見たイメージ

新しい文化を生み出す街に調和するよう、シンプルでモダンなデザインとしているほか、駅舎の形状を工夫することにより街へのアクセスにも配慮しています。

東北沢駅西口改札
東北沢駅西口改札
コンコース
コンコース

閑静で緑豊かな住宅地との調和を図るため、駅内外の緑化に加え、自然光が差し込む「トップライト」を導入するなど、やわらかく落ち着いたデザインとしています。

世田谷代田駅改札
世田谷代田駅改札
コンコース
コンコース

地中熱ヒートポンプシステムによる空調

東北沢駅と世田谷代田駅では、駅施設の一部に地中熱ヒートポンプシステムを利用した空調設備を設置しています。なお、世田谷代田駅の地中熱ヒートポンプシステムは、環境省の「地球温暖化対策技術開発等事業」として、補助金を受けて工事を進めました。

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