安全マネジメント体制の強化
2009年度につきましては、次の5項目による「安全重点施策」に基づき、取り組みを進めてきました。
- 安全マネジメント態勢の強化
- 事故の未然・再発防止と発生後の対応強化
- 防災対策・体制の強化
- 安全のスキルアップとヒューマンエラー防止
- 安全文化の醸成
以下、この5項目に沿って、2009年度の主な取り組みを紹介します。
安全マネジメント態勢のより一層の強化を図りました
2008年6月、「情報の共有化」をテーマに安全管理体制を見直し、経営層から現業職場間の、双方向の情報伝達ルートを確立しました。これにより、安全に関するさまざまな取り組みについての目的意識・理解力の向上や、職場間の連携強化が図られ、安全マネジメント態勢の推進につながっています。
2009年度においては、新体制後に顕在化してきた課題を解消するために、安全にかかわる部門における組織改正や、「マネジメントレビュー」の改善、当社を含めた小田急グループの交通事業者間における連携強化などに努めたほか、部門横断的な情報共有とコミュニケーションを促すツールとして安全コミュニケーションシステムを導入し、本運用を開始しました。
安全キーワード:安全マネジメント
「(運輸)安全マネジメント」とは、鉄道などの事業者において、経営トップから現業職場の係員まで一丸となって、企業における品質管理の自己評価基準である「ISO9000」シリーズを参考に安全管理体制を構築し、その継続的取り組みを行うことにより、安全風土の構築、安全意識の浸透を図るという仕組みのことです。
運転車両部、工務部の組織改正を行いました。
運転車両部は、電車の運行管理や運転業務(運転士・車掌)、車両の保守点検などを担当しています。同部の車両部門では、①職場管理の合理的追求 ②異常時対応力の強化 ③柔軟な所属員の配置による相互補完体制強化と能力開発を目的に、2009年12月、大野工場と海老名検車区大野出張所を統合し、新たに「大野総合車両所」としました。それに伴い、所内の業務組織を再編し、それぞれの業務と職場名が一致するよう、検修職場、検査職場、検車職場としました。
一方、線路の保守点検や駅、橋梁、トンネルなどの鉄道土木施設の保守管理を担当する工務部では、外注化に伴う保線主作業の経験不足、安全管理規程や認定事業者制度などの導入に伴う管理業務の増加、人員構成のアンバランスから発生する技能継承に関する問題などが課題として挙がっていました。
そこで、①人材活用の面においてフレキシブルな対応を可能とすること ②安全や設計などに関する規程基準類への厳格な対応および各種システムの円滑な運営・活用を可能とすること ③直営作業の効率化ならびに実務経験および技能継承機会の増大による技術力向上を図ることを目的として、2009年6月、工事監理センターを廃止し、新たに全線を統括する「工務技術センター(本所)」を設置しました。
「マネジメントレビュー」の改善を図りました。
「マネジメントレビュー」の確実性と有効性を向上すべく、トップの関与や実施時期と対象期間、「インプット情報」(見直しに際しての参考情報)などを明確化するとともに、安全管理規程に規定しました。
グループワイドで安全マネジメント態勢の強化に取り組んでいます。
乗り物は違えども、同じ「安全」を最大の使命とする交通事業者間で、情報・意見交換を行うことは非常に有効なことです。そこで、2008年度より、小田急グループの交通事業者16社の安全統括管理者ならびに運転管理者などが出席して、各社の安全管理体制構築に向けての取り組みの発表や情報交換などを行う「小田急グループ交通事業者安全統括管理者会議」を開催しています。
2010年2月には、当社安全・技術部と電気部により小田急交通南多摩(株)のタクシー乗務員を対象とした「踏切事故防止説明会」を実施するなど、グループ間での、安全確保に向けた積極的な交流が進んでいます。
迅速に情報を共有し、より効果的な安全施策を———安全コミュニケーションシステムを運用しています。
前述の「安全管理体制」の整備を図るとともに、「事故・事故の芽」情報の収集と、その対策について部門横断的な情報の共有化を進めるため、2009年4月より、「安全コミュニケーションシステム」の本運用を開始しています。
このシステムは、社員の声や事故情報を一元的に管理し、部門横断的に共有できるシステムで、これによりヒヤリ・ハットや気付きなどの社員の声が、安全にかかわる部署の所属員なら誰でも閲覧・共有できるようになったほか、一元的に集められた情報を誰でも分析できる環境となりました。そのため、定期的に支障状況(安全・安定輸送の阻害要因の発生傾向など)をまとめ、安全にかかわる全部門で共有しています。
今後も「体制」と「ツール」を有機的に結び付け、事故・トラブルなどにかかわる情報や鉄道係員の意見などについて、「情報収集→共有→分析→対策の検討、実施→対策の有効性検証」というPDCAサイクルを実践していきます。
■2009年度に実現した社員の声
2009年3月 | 急行列車が異常時に各駅停車扱いに変更する際の取扱いを変更 |
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2009年5月 | 新百合ヶ丘駅構内信号機への番線表示看板設置による信号誤認防止 |
2009年7月 | 成城学園前駅構内の信号機の向き変更により、信号機の光が反射して見えにくかった車両設備の視認性を向上 |
2009年8月 | 厚木駅のホーム照明を増設することによる車掌の安全確認時における視認性を向上 |
安全コミュニケーションシステム(社員の声の展開イメージ)
「事故・事故の芽」情報
「事故の芽」(ヒヤリ・ハット)情報とは、実際に発生した事故・トラブルに関する情報のみならず、そのまま放置しておくことにより事故・トラブルの発生につながるような情報のことです。
ハインリッヒの法則では、「一つの重大な事故の背景には、29の軽微な事故があり、300の異常(事故の芽)が存在する」と言われており、このような情報に基づき必要な対策を講じることにより、事故・トラブルの未然防止が図られます。