防災対策や体制の強化を進めています

地震や異常気象に、より迅速・正確に対応できる体制づくりを推進しています。

地震や異常気象など自然災害発生時に迅速に情報をつかみ、お客さまの安全を確保し、被害を最小限に抑えることを目的に、2009年7月に「地震・気象情報監視システム」を整備しました。これは、沿線各所の震度、雨量、風速、河川の水位、レールの温度をオンラインで一元的に監視するシステムで、運輸司令所や電車区、工務区、電気システム管理所などで有効活用し、より迅速・正確に対応できる防災体制づくりを推進しています。

COLUMN 早期地震警報システム

地震・気象情報監視システムのほか、地震発生時の被害軽減のため、2006年より「早期地震警報システム」を導入しています。これは一定規模以上の地震が発生した際、気象庁から配信される「緊急地震速報」を利用し、主要動の到達予想時刻・最大予想震度など当社線への影響を瞬時に判定。被害が予測される場合には、全列車に自動的に通報することにより、運転士が手動で列車を緊急停止させるものです。

早期地震警報システム

早期地震警報システムの概要

自然災害に備えた各種補強工事を順次進めています。

線路脇の斜面においては、土砂崩壊などによる事故を防止することを目的として法面(のりめん)防護工事を推進するとともに、法面の異常を検知し関係各所ならびに列車運転士に知らせる「土砂崩壊検知システム」を全線57カ所に設置しています。高架橋や橋梁においては、耐震補強工事を進めているほか、トンネル内についても補強工事を実施するなど、施設の強化に取り組んでいます。

また、2009年度には地下駅火災対策として、当社線新宿駅構内においてスプリンクラー、排煙設備を増設、防火区画(階段シャッターなど)、蓄光式誘導表示を新設し、それらに伴い防災盤を拡充しました。

自然災害対策
法面防護工事
自然災害対策
高架橋の耐震補強工事
自然災害対策
トンネル内補強工事
自然災害対策
土砂崩壊検知システム
自然災害対策
橋梁の耐震補強工事
自然災害対策
地下駅火災対策工事に伴い拡充した防災盤
COLUMN 鉄道防災計画【感染症編】

自然災害発生時の安全に対する取り組みについて、基本的な対応計画として、各対策をあらかじめ定めた「鉄道防災計画」を策定しています。これは、災害発生時の応急活動や緊急輸送ルートの確保など、各部が行うべき取り組みを事前に整備したものです。

このうちの【感染症編】では、2009年2月に国から示された「新型インフルエンザ対策行動計画」および「新型インフルエンザ対策ガイドライン」(いずれも強毒性のインフルエンザを想定)を踏まえ、お客さまと鉄道係員への感染拡大防止と列車運行の確保を図るべく、行動計画を策定しています。

2009年に発生・流行した「新型インフルエンザ(A/H1 N1)」への対応では、「感染力は強いものの強毒性ではない」とのことから、係員や家族の健康状況管理の強化やマスク着用など、本計画を基本とした迅速かつ柔軟な対応を実施しました。

鉄道防災計画(感染症編)

異常時を想定した、さまざまな訓練を実施しています。

毎年行っている「鉄道テロ対応訓練」「総合防災訓練」「異常時総合訓練」のほか、全社的な訓練として、2009年度は「駅業務応援対応招集訓練」も実施しました。このような訓練において、当社では訓練後に必ず、関係者を含めた反省会を実施し、その効果の検証や改善点などについて意見交換を行い、取り扱いの見直しや、より効果的な訓練方法の立案などに生かしています。

また、実態に即した職場連携が図れる訓練を推進しており、各部においても自主的な訓練が日ごろより行われています。

各部の主な訓練

運転車両部 運転担当 異常時対応競技会
運転車両部 車両担当 脱線復旧訓練
旅客営業部 異常時対応研究会
工務部 保線重機械脱線復旧訓練、情報伝達訓練
電気部 グループ別の技術競技会、技術研究発表会
複々線建設部 工事桁架設模範演習、立坑内における被害者および負傷者応急処置の指導・実施訓練

鉄道テロ対応訓練を実施しました。

2009年6月に、喜多見電車基地で緊急事態に備えた「鉄道テロ対応訓練」を実施しました。2008年1月に制定した「鉄道テロ対応マニュアル」の内容を踏まえ、今回は、営業線を走行する車内での不審物によるテロ発生を想定し、警察・消防と連携して訓練を行っています。また、二次訓練として警察による爆発物の処理や異臭発生時の対応などについての講習会を開催しました。今後は、照明や通信手段などを備えた対応の必要性を検討し、マニュアルなどへ反映させていく予定です。

このほか、7月には、陸上自衛隊より講師を招き、「鉄道テロ講演会」を開催しました。

鉄道テロ対応訓練
鉄道テロ対応訓練

総合防災訓練を実施しました。

毎年9月、地震発生および発災までを想定した「総合防災訓練」を行っています。これは、当社が定める「危機管理規則」および「鉄道防災計画【地震災害編】」に基づき、同計画の内容検証を目的としたもので、今回は、震度6以上の地震発生を想定し、訓練を実施しました。この訓練では、初動対応と情報収集・伝達を特に重視しつつ、鶴間駅~大和駅間での徒歩点検や、箱根登山線を含む全線で列車一旦停止訓練(*)を行いました。訓練後、情報の整理と優先順位を考慮した伝達などに課題が見出されました。

列車一旦停止訓練

電車の運行時間に地震が発生したことを想定し、「緊急地震速報」を受信した走行中の電車は駅間で緊急停止、同じく「緊急地震速報」を受信した停車中の電車は発車の見合せを行う訓練です。

上記の総合防災訓練のほか、10月には、(株)小田急百貨店が主催した、異臭による負傷者の発生を想定した防災訓練にも参加しています。

総合防災訓練
総合防災訓練

異常時総合訓練を実施しました。

40年以上にわたり毎年実施している「異常時総合訓練」。2009年10月に、海老名電車基地で警察・消防と合同で行った同訓練は、「列車が踏切で自動車と接触し脱線、自動車が炎上」という事故を想定し、初期消火活動に始まり、お客さまの避難誘導や負傷者の応急処置、関係各社と連携した復旧作業など、その内容は多岐にわたります。

二次訓練では、運転不能になった事故列車と、後続列車であるロマンスカー・MSE(60000形)を救援列車として連結させ、車両基地まで誘導する訓練を初めて行い、三次訓練では、新入社員による発炎信号の一斉点火訓練を実施しました。

訓練後の反省会では、「新入社員に対する発炎信号の操作方法に関する教育が、10月の異常時総合訓練の実施までビデオなどによるものに留まっているのは好ましくない」と安全統括管理者から意見があったことから、模擬発炎信号の点火訓練を新入社員研修で速やかに実施することとしました。

プロジェクト発表会の様子

プロジェクト発表会の様子

輸送障害発生時における駅業務応援対応招集訓練を実施しました。

2009年12月、輸送障害発生時における連絡通報体制を確認する目的で、「輸送障害発生時における駅業務応援対応招集訓練」を実施しました。相模大野駅構内で発生した、原因不明の信号保安装置の故障により、今後、駅の混雑や要員の不足が予想されるとの想定で行い、当日は、交通企画部、安全・技術部、運転車両部、旅客営業部、工務部、電気部、複々線建設部から総勢98名が参加しました。

お客さまに安全と安心を(安全報告書2010)