以下、安全重点施策の4項目に沿って、2016年度の主な取り組みを紹介します。

概略

強靭かつ柔軟な「現場力」の構築

「未然防止」に対する取り組みの強化

「災害」に強い設備・体制の構築

「安定輸送」を実現する取り組みの推進

「未然防止」に対する取り組みの強化

お客さまの安全を守るため、安全性の向上、事故・トラブルの未然防止に取り組んでいます。

駅ホームにおける事故・トラブルの未然防止に取り組んでいます。

駅ホームにおける安全性向上については、2016年12月に国土交通省から示された「駅ホームにおける安全性向上のための検討会(中間取りまとめ)」の方針等に則って、ハード面、ソフト面の両面から取り組んでいます。

主な取り組み

[1] ホームドアの設置

お客さまの線路転落や電車への接触などを未然に防止するため、ホームドアを2012年9月に新宿駅の地上急行ホーム(4・5番線ホーム)に設置しています。

他駅への導入に向けた検討を進め、2020年度を目標として代々木八幡駅から梅ヶ丘駅の6駅、さらに2022年度までに1日の利用者数10万人以上の駅※へ優先してホームドアの設置を進めていきます。

引き続き、その他の駅への設置に向けた検討を進めていきます。

ホームドア設置計画(年度については使用開始目標)

時期 設置駅
設置済 新宿(4・5番急行ホーム)
2018年度 代々木八幡、下北沢(地下2階ホーム)
2019年度 代々木上原(1・4番ホーム)、東北沢、世田谷代田、梅ヶ丘
2020年度 下北沢(地下3階ホーム)
~2022年度 新宿、登戸、新百合ヶ丘、町田、相模大野、海老名、本厚木、大和
  • 藤沢駅については、大規模改良工事にあわせて整備を計画するため時期は未定
  • [参考]当社1日の利用者数10万人以上の駅(2016年度実績 11駅)
    新宿、代々木上原、下北沢、登戸、新百合ヶ丘、町田、相模大野、海老名、本厚木、大和、藤沢

[2] 内方線付き点状ブロックの整備

従来の点状の突起に加え、ホーム内側部分に線状の突起を設けることで、目の不自由な方に対してホームの内側が分かるようにした内方線付き点状ブロックについて、全70駅中工事中の代々木上原を除く69駅で整備が済んでいます。

[3] ホーム固定柵の設置計画の策定

国土交通省の整備方針に基づき、新宿、小田原、藤沢、片瀬江ノ島、唐木田の5駅に、線路終端部側の電車の止まらない箇所へホーム固定柵を2017年度中に設置することとします。

[4] CP(Color Psychology)ラインによる転落防止の取り組み

お客さまにホーム端であることを視覚・心理的に注意喚起し線路転落や電車への触車防止を図るため、一部の駅にCPラインを導入しています。

[5] お客さまへの声かけ・サポート活動

鉄道をご利用されるお客さまが安全に、かつ安心して駅などの施設をご利用いただくために、「声かけ・サポート」運動強化キャンペーンを首都圏の鉄道事業者と連携して2016年11月から2017年3月末まで実施しました。

この運動は、お困りになっているお客さまへ駅係員、乗務員が積極的にお声掛けをする、また、ご利用のお客さまにも、お困りの方に対して助け合いのご協力を呼び掛けるものです。

なお、強化キャンペーン終了後も、駅係員、乗務員による積極的なお声掛けやサポートの取り組みは継続して実施しています。あわせて、お手伝いが必要なお客さまは、駅係員にお気軽にお申し出いただけるよう駅構内での放送を実施しています。

また、駅係員がロールプレイング形式により日頃の接客技能を競い、顧客志向への意識向上、接客スキルのレベルアップを目指す「接客グランプリ」を2011年度より開催しています。2016年度は想定シナリオの中に、目の不自由なお客さまとの応対を設定し、お声掛けと見守りの行動が係員に定着することを図りました。

踏切での事故・トラブルの未然防止に取り組んでいます。

主な取り組み

[1] 踏切視認性向上施策の実施

ドライバーなどが遠くからでも踏切を見落とさないように、次のようなさまざまな取り組みを行っています。

全方向閃光灯
全方向から視認できるよう円筒型(提灯型)の閃光灯を使用したもので、2016年度までに57踏切に設置しています。

オーバーハング型踏切警報機
道路の真上に閃光灯を設置したもので、2016年度までに19踏切に設置しています。

大口径遮断桿
遮断桿の太さを通常の約2倍にしたもので、2016年度までに7踏切に設置しています。

[2] 踏切道のカラー舗装化

踏切道におけるカラー舗装化
踏切道におけるカラー舗装化

歩行者が通行する際の安全確保や、自動車が踏切道内に取り残されてしまうことなどを防止するために、自治体や所轄警察署のご協力により、列車支障の多い一部の踏切道において、2016年度までに64カ所でカラー舗装を実施しています。

これは、歩行者の通行空間を明確にすることや、ドライバーが踏切道を通行する前に、踏切道先に自車が入れるスペースがあるかを確認できるよう配慮したもので、踏切道の保安度向上施策として期待されています。

[3] 踏切集中監視システムの活用

踏切集中監視システム
踏切集中監視システム

踏切保安装置の故障などによる事故を未然に防ぐため、電気司令所ならびに電気システム管理所において、全踏切の状態をリアルタイムに監視できる「踏切集中監視システム」を導入しています。

踏切集中監視システムの監視カメラや放送機器を活用することで、現地の映像による確認、記録、放送などが可能となったほか、事故が発生した際に踏切画像を事故現場でも確認できるようにすることで、事故処理のスムーズ化も図られています。また、「踏切障害物検知装置」の動作回数などの集計が容易になったことから、リスクの高い踏切の把握にも役立てています。

ヒヤリ・ハットや気づきなどの情報収集と対策の検討、共有を進めています。

「ヒヤリ・ハット/気づき・気がかり」情報の収集と、その対策の検討と推進のために、「安全コミュニケーションシステム」を活用しています。

「ヒヤリ・ハット/気づき・気がかり」の改善事例

●問題点

新宿1号踏切は通行者の無理な横断や踏切内への人の滞留が多く発生し危険である。

〇対策

すでに設置されていた注意喚起表示が見難くなっていたことから、この表示を更新するとともに、新たな注意喚起として路面への表示を実施しました。また、この踏切は外国人の通行者も多いことから4カ国語での標記としました。

改善前
改善前
改善後
改善後
改善後(表示部分)
改善後(表示部分)

安全キーワード:「ヒヤリ・ハット」情報

「ヒヤリ・ハット」情報とは、実際に発生した事故・トラブルに関する情報のみならず、そのまま放置しておくことにより事故・トラブルの発生につながるような情報のことです。

ハインリッヒの法則では、「一つの重大な事故の背景には、29の軽微な事故があり、300の異常(事故の芽)が存在する」と言われており、このような情報に基づき必要な対策を講じることにより、事故・トラブルの未然防止が図られます。

事故の風化防止に取り組んでいます。

過去に発生した事故の再発防止対策や教訓の風化防止に取り組んでいます。

伝承教育

過去に発生した事故や、ベテラン社員が実際に経験した過去の事象を後輩たちに確実に伝承し、若手社員の安全意識や知識・技術力の向上につなげるため、各部門でもさまざまな取り組みを行っています。

部門 内容
運転車両部(運転担当)
  • ● 東海大学前駅での鉄道人身障害事故の再発防止として、駅発車時の安全確認の徹底を図っているとともに、風化防止のため定期的に講演会を実施
運転車両部(車両担当)
  • ● 大野総合車両所および検車区では、後世に伝承すべき事故を「事故事例パネル」にして展示し、若年者教育などに活用しているほか、他職場からの見学にも活用。また、朝の点呼時にスピーチを行い、安全行動に対する意識向上を図る
旅客営業部
  • ● 夜間作業における誤扱いの再発防止と過去事例の風化防止のため「夜間作業取扱い教育」を実施
工務部
  • ● 「事故防止の日」「労災防止の日」など過去の事故や災害を振り返る日を設け、「事故事例研究」などを実施し、安全意識の向上を図る
電気部
  • ●「電気部事故防止フォーラム」や「電気部事故防止対策伝承教育」の開催と事故資料集を活用した事故事例研究を実施
複々線建設部
  • ● 過去に起こった事故の形骸化防止を図るために「事故防止の日」を定め、過去1年に発生した「事故の芽」や「事故」に関する事例研究を実施し、工事請負業者とともに安全意識の向上を図る

事故の展示室を開設しました。

過去に当社や他社で発生した重大事故の内容を、社員が理解・共有し、事故の風化防止と同類事故の再発防止・未然防止を図ることを目的に、「事故の展示室」を2016年10月4日に開設しました。個別の事故事例について、事故概要や原因、写真や新聞記事などを用いて解説したパネルや事故年表、当社で過去に発生した事故において破損した機器などを展示しています。

科学的分析力向上に取り組んでいます。

「科学的分析手法の導入など、背景要因の分析力向上」について、各部門では業務の特性を踏まえた独自の分析手法を導入し、事故などの背後要因や発生傾向を分析、対策の検討、実施につなげています。

部門 内容
運転車両部(運転担当)
  • ●「SHELモデル」(事故の背景について、ハードウェア、ソフトウェア、環境、関係者から分析する手法)を基に、業務特性に応じ改善を加えた「小田急型事故分析シート」を開発し、背後要因や発生傾向を分析、再発防止に向けた対策を検討、実施している
運転車両部(車両担当)
  • ● 運転車両部(運転担当)と同様に「小田急型事故分析シート」を活用し、過去の事例を題材に分析訓練を行い定着化を図るとともに、人的・物的両面で万全な再発防止策を立案。さらなる安全文化の醸成を図る
旅客営業部
  • ●「SHELモデル」を基に、業務特性に応じ改善した「旅客営業部型事故分析シート」を活用し、信号扱者の信号操作のミスの発生傾向を分析。分析結果を踏まえた訓練、対策を実施
工務部
  • ●「ヒューマンファクター分析法」を活用し、何が事故を発生させる事象(ヒューマンファクター)なのか、事故を発生させた原因は何か、その発生に影響する要因は何かを把握し、事故の対策を検証することで同様の事故の再発防止を図る
電気部
  • ●「ET-HEIS分析シート」をベースに、業務特性に応じた独自の分析手法「電気部型事故分析手法」を開発し、ヒューマンエラーの背後要因や発生傾向を分析して対策の検討、実施を図る
複々線建設部
  • ● 発生した問題事象の根本原因を探るため、問題となる事象を明確にして事象の一次原因(事象を起こす原因)を見つけることからはじめて、二次、三次と繰り返して真の原因に到達させる「なぜなぜ分析」を導入し、その原因に基づく再発防止策を実施している

お客さまに安全と安心を(安全報告書2017)