事故の未然・再発防止と発生後の対応強化に努めました

列車運行時の安全確保に向けた取り組みを強化しています。

主な取り組み

  1. 1. 新列車制御システム(D-ATS-P)の導入

 新列車制御システム「D-ATS-P(Digital Automatic Train Stop Pattern)」とは、先行する電車に追突しないよう信号情報を連続的に各電車に伝え、ブレーキを自動的に作動させることを可能にするものです。例えば、踏切内で「踏切支障報知装置」が動作した際は、接近してくる電車に危険情報を知らせ、自動的にブレーキがかかります。また、最新のデジタル技術を駆使し、急曲線・分岐器・下り勾配などでのきめ細やかな速度制御も可能となっています。

D-ATS-Pの導入により、列車運行の安全性がさらに向上することから、全線設置を目指したシステム構築を進めています。

  1. 2. 緊急ブレーキ装置の整備

 運転士が急に体調を崩したなどの不測の事態が発生した場合に備えて、電車の加速中に運転士がハンドルから手を離したときには、自動的に非常ブレーキがかかる装置、もしくは自動的に加速を解除させる装置を全車両に導入しています。

 また、さらに安全性を高めるため、運転士が1分以上、加速やブレーキなどの操作を行わない場合に非常ブレーキがかかる装置を、2009年度末現在、178編成中103編成(全体の約57.9%)に導入しており、今後も順次導入を進めていきます。

  1. 3. 輸送障害発生時の対応強化

 列車運行に支障が生じた際に、駅などでより分かりやすくお客さまへのご案内・誘導を実践するため、また、ダイヤの早期復旧を図るために、2009年4月より、「線別抑止」を導入しています。これは、輸送障害時に、小田原線・江ノ島線・多摩線のどこで障害が発生したのかを迅速に判別し、その路線においては振替輸送などを実施の上、なるべくほかの2路線に影響を及ぼさないようにするものです。

  1. 4. 複々線化工事区間での安全確保

 地下化される東北沢駅~世田谷代田駅間の複々線化工事区間では、電車の運行を確保しながら、線路の直下にトンネルを構築するという非常に難しい工事を進めているため、さまざまな安全対策を講じています。中でも、小田急線の最混雑区間である世田谷代田駅~下北沢駅付近のシールドマシンによるトンネル工事では、有識者による安全性の検討、地盤状態の24時間体制での監視、異常時に電車を緊急停止させる表示灯の設置など、万が一の備えの充実を図りました。その結果、2009年10月に無事に掘進が完了しました。

シールドトンネル工事
シールドトンネル工事
シールド中央管理室
シールド中央管理室
シールド区間表示灯
シールド区間表示灯

より安全なホームづくりを進めています。

主な取り組み

1. 注意喚起灯の設置

 曲線ホームでの、ホームと車両のすき間からの転落事故を未然に防止するため、代々木八幡駅の下りホームの一部に、ホームと車両のすき間を視覚的に訴える「足元注意喚起灯」を設置しています。

設置前

2. フットマークの統一

 乗車位置を示す、ホーム床面の案内掲示が「フットマーク」です。これまで、駅によってフットマークの位置が黄色い線「警告ブロック」の内側(ホーム中ほど)や外側(線路側)に混在しており、また、デザインについても種類が多様化していました。さらに、優先席の案内が表示されていないので不親切でした。

 そこで、新たにフットマークを設置し、位置の修正やデザインの統一化をしています(ただし、降車専用ホームや階段とホーム幅が狭いなどの理由で、整列乗車を避ける場所については除きます)。また、優先席の位置も表示するようにしました。

フットマークの統一

3. ホーム転落検知装置の導入

 お客さまがホームから転落された場合に備えて、転落事故の多い代々木上原駅の1番線に「ホーム転落検知装置」を設置しました。この装置は、お客さまの線路上への転落を画像処理で検知し、駅係員に知らせるもので、お客さまの救助と列車事故の未然防止に役立っています。

転落検知システム

4. ホーム柵設置に向けた研究

 ホーム上でのお客さまの線路転落や電車への接触事故などを抜本的に防止するため、ホーム柵の設置を検討しています。しかし、ホーム柵を設置するには、全車両・全編成を常に定位置に停車させる必要があるなどの課題があります。現在、定位置停止支援装置「TASC」の実験・検証を多摩線にて行っています。

 TASCは電車が駅に到着する際に、自動的にブレーキをかけて定位置に停止させるための運転支援装置です。駅の手前に設置された地上子という装置から停止位置までの距離情報を電車に送信し、速度パターンを発生させ、そのパターンに実際の列車速度が追随するようにブレーキを制御します。

COLUMN 酔客に対する啓発活動

酔客による列車支障などが多く発生する年末において、ポケットティッシュの配布や中吊り広告の掲示による事故防止の啓発活動を行っています。2009年12月には、町田駅ならびに相模大野駅においてポケットティッシュを配布しました。

酔客に対する啓発活動

酔客に対する啓発活動

踏切での事故・トラブルの未然防止に取り組んでいます。

主な取り組み

1. 踏切視認性向上策の実施

ドライバーなどが遠くからでも踏切を見落とさないように、次のようなさまざまな取り組みを行っています。

全方向閃光灯

全方向閃光灯。全方向から視認できるよう円筒型(提灯型)の閃光灯を採用したもの。
2009年度までに9カ所に採用。

オーバーハング型踏切警報機

オーバーハング型踏切警報機。道路上に警報機をかぶせたもの。
2009年度までに16カ所に採用。

大口径遮断桿

大口径遮断桿(だいこうけいしゃだんかん)。
遮断桿の太さを通常の約2倍にしたもの。
2009年度までに7カ所に採用。

2. 踏切集中監視システムの活用推進

踏切集中監視システム
踏切集中監視システム

踏切保安装置の故障などによる事故を未然に防ぐため、電気司令所ならびに電気システム管理所において、複々線化工事区間(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)を除く全踏切の状態をリアルタイムに監視できる「踏切集中監視システム」を導入しています。

踏切集中監視システムの監視カメラや放送機器を活用することで、踏切の映像による監視、記録、現地踏切への放送なども可能となったほか、踏切で異常が発生した際の現場状況の早期確認や初期対応のスムーズ化も図られています。また、「踏切障害物検知装置」の動作回数などの集計が容易になったことから、リスクの高い踏切把握にも役立てています。

3. カラー舗装の実施

横断先の安全を確認せず後続の自動車が踏切に進入し、踏切内に自動車が停滞して列車を支障してしまうケースが多くあります。そのため、ドライバーに踏切内の範囲を視覚的に訴える車道部分のカラー舗装を2カ所で実施しました。

新宿1号踏切
新宿1号踏切
生田4号踏切
生田4号踏切

4. 踏切監視警告板の設置

踏切監視警告板
踏切監視警告板

 「踏切集中監視システム」の設置に伴い、監視中であることを警告した「監視警告板」を列車運行妨害の多かった11踏切に対して設置しています。この結果、設置した踏切で2006年度~2008年度上期までの2年半の間に40件発生していた列車運行妨害(置き石や非常ボタンのいたずら操作など)が、設置後~2010年8月までの約1年8ヶ月で2件の発生に留まっていることから、一定の効果を挙げていると考えられます。

5. 青色照明の導入

青色照明の導入

踏切での自殺による電車への飛び込み防止の一環として、現在5カ所の踏切に「青色照明」を設置しました。これは、鎮静作用による自殺防止の効果が期待されていることから導入したものです。また、あわせて「一般社団法人 日本いのちの電話連盟」のご協力を得て、相談窓口の看板も設置しています。

お客さまに安全と安心を(安全報告書2010)