以下、安全重点施策の4項目に沿って、2015年度の主な取り組みを紹介します。

概略

強靭かつ柔軟な「現場力」の構築

「未然防止」に対する取り組みの強化

「災害」に強い設備・体制の構築

「安定輸送」を実現する取り組みの推進

強靭かつ柔軟な「現場力」の構築

ヒヤリ・ハットや気付きなどの情報収集と対策の検討、共有を目的に、
「安全コミュニケーションシステム」を運用しています。

「ヒヤリ・ハット/気づき・気がかり」情報の収集とその対策について、部門横断的な情報の共有化を進めるために、「安全コミュニケーションシステム」を運用しています。

このシステムは、社員の声や事故情報を一元的に管理し、部門横断的に共有できるもので、これにより「ヒヤリ・ハット」や「気付き・気がかり」などの社員の声が、安全に係る部署の所属員なら誰でも閲覧・共有できるようになったほか、一元的に集められた情報を誰でも分析できる環境となりました。現在、定期的に支障状況(安全・安定輸送の阻害要因の発生傾向など)をまとめ、安全にかかわる全部門で共有しているほか、安全・安定の努力目標を定め、システムに蓄積されたデータの実績値を職場に示し、支障時分の短縮などお客さまに与える影響を最小限に抑えるべく、取り組んでいます。

今後も「体制」と「ツール」を有機的に結び付け、事故・トラブルなどにかかわる情報や鉄道係員の意見などについて、「情報収集→共有→分析→対策の検討→実施→対策の有効性検証」を実践し、安全対策の強化に努めるとともに、安全コミュニケーションシステムをさらに有効活用するための検証を行っていきます。

「ヒヤリ・ハット/気付き・気がかり」の改善事例

  • 問題点

平日18時以降の新宿駅2番・3番ホーム(特急ホーム)において、乗車待ちのお客さまの列が反対ホーム側まで伸びてしまい、付近を歩行されるお客さまの妨げになっている。さらに、黄線の外側を歩行することにより、列車への接触および線路転落の危険がある。

  • 対策と効果
  • 整列乗車ラインを設置し、係員による周知および誘導を実施。
  • 整列乗車ラインにお並びいただくことにより、黄線外歩行などの危険な状況が改善された。
改善前
改善前
整列乗車ライン
整列乗車ライン
改善後
改善後

安全コミュニケーションシステム(社員の声の展開イメージ)

[図]

安全キーワード:「ヒヤリ・ハット」情報

「ヒヤリ・ハット」情報とは、実際に発生した事故・トラブルに関する情報のみならず、そのまま放置しておくことにより事故・トラブルの発生につながるような情報のことです。

ハインリッヒの法則では、「一つの重大な事故の背景には、29の軽微な事故があり、300の異常(事故の芽)が存在する」と言われており、このような情報に基づき必要な対策を講じることにより、事故・トラブルの未然防止が図られます。

異常時を想定した、さまざまな訓練を実施しています。

いつ起こりうるか分からない異常時を想定し、さまざまな訓練を実施しました。訓練後には関係者を含めた反省会を行い、その効果の検証や改善点などについて意見交換し、取り扱いの見直しや、より効果的な訓練方法の立案などに生かしています。

(1) 鉄道防災訓練を実施しました。

2015年9月1日、大規模地震の発生を想定した「鉄道防災訓練」を実施しました。これは、大規模地震事業継続計画に基づき、ブラインドシナリオ形式により事故・災害発生時の対応力の向上と定着を図るとともに、相模大野駅構内脱線事故で明らかになった課題の対応策を検証しました。

また、早期地震警報システムによる列車一旦停止訓練、地下区間における列車からのお客さま降車・誘導訓練もあわせて実施し、関係各部門の連携と対応力の強化を図りました。

(2) 異常時総合訓練を実施しました。

2015年10月、毎年実施している「異常時総合訓練」を海老名電車基地おいて警察・消防と合同で実施しました。この訓練では、「踏切で電車と乗用車が接触し脱線」という事故を想定し、相模大野駅構内で発生した車両脱線事故から出た課題解決のため、併発事故の防止やお客さまの避難誘導、負傷者の救出など、さまざまな訓練を行いました。

(3) 代替バス輸送訓練を実施しました。

2016年2月、大規模地震や大規模鉄道事故等により、鉄道を長期間にわたり運休せざるを得ない場合に備え、「代替バス輸送訓練」を実施しました。この訓練では、相模湾を震源とする大規模地震が発生、江ノ島線の一部が津波の被害を受け、復旧の目途が立たない状況を想定し、グループバス会社と合同で実際に公道を使用し、実施手順の確認、課題の検証等を行いました。

(4) 鉄道テロ対応訓練を実施しました。

2016年2月、伊勢志摩サミットや東京オリンピックを控え、テロによる不測の事態に備えるため、警察・消防・自治体・関係各機関と連携し、さまざまな状況を想定し鉄道テロ対応訓練を行いました。

安全文化の醸成を図っています。

安全・安定輸送を絶え間なく実践するためには、全社一体となった安全文化が必要です。安全文化の醸成のために、当社では2008年度より、10月1日を「鉄道安全の日」と制定しています。

(1) 職場巡視

定期的に、社長、安全統括管理者、交通サービス事業本部内の各部長が「職場巡視」を行っています。経営管理者と現業係員がコミュニケーションを図ることで十分な意思疎通を行い、安全文化の醸成を常日ごろから図るものです。

(2) 輸送の安全講演会/安全シンポジウム

輸送の安全講演会
輸送の安全講演会
安全シンポジウム
安全シンポジウム

2015年10月5日、6日、8日に「第9回輸送の安全講演会」を、また、2015年10月2日に「第9回安全シンポジウム」を開催しました。

これは、鉄道輸送にかかる従業員の安全意識の継続的高揚を図ることを目的としたもので、「輸送の安全講演会」を大野地区、小田原地区、藤沢地区で、「安全シンポジウム」を大野地区で開催しました。社長以下当社従業員と小田急グループの交通事業者の従業員延べ約1,000名が出席しました。

「輸送の安全講演会」では、「何故起きた 命を奪った安全神話~平時に“四つの危機感覚”を身に付けることだ」をテーマに、外部講師をお招きしてご講演いただきました。参加者からは、「過去の事故事例を基に、安全とは何かを深く考えさせられた」「自分の業務の重要性を再認識することができた」などの感想が寄せられました。

「安全シンポジウム」では、第1部として「安全を創る7つのキーワード」をテーマに、外部講師をお招きしてご講演いただきました。第2部では同業他社の社内発表会で上位になった2部門をお招きし、他社の優れた取り組みを学びました。参加者からは、「現場力を高めるためのヒントが得られた」「同業他社の取り組みを知ることができ、とても参考になった」などの感想が寄せられました。

(3) エリアミーティング

職場見学会
職場見学会

2008年度より、現業係員および職場間相互のコミュニケーションの向上を目的に、「エリアミーティング」を開催しています。当社線を3つに分けたエリア内の各職場から選出された固定メンバーにより複数回ミーティングを行い、各職場の情報交換や相互理解を深める企画を、メンバーで立案し実施しています。

安全に係る現業職場における部門横断的な取り組みを推進しています。

現業職場間において、「自主プロジェクト」「合同訓練」や「他職場体験研修」などの実施を通じ、コミュニケーションの充実・強化が図られています。

現業職場間の主な取り組み

職場 主な取り組み
新宿管区/喜多見電車区
  • ● 異常時対応研究会
成城学園前駅/喜多見車掌区
  • ● 自主プロジェクトとの合同テロ対応避難訓練、車内機器操作教育
成城学園前管区/喜多見電車区
  • ● 情報支援会
町田管区/喜多見電車区/喜多見車掌区
  • ● 意見交換会・職場交流
町田管区/喜多見電車区
  • ● 実車による列車非常停止手配訓練、入換合図訓練
町田管区/喜多見車掌区
  • ● 実車による扉故障訓練、車内機器操作体験
運輸司令所/全管区/全電車区/全車掌区/大野工務区
  • ● 異常時における情報提供についての意見交換会
運輸司令所/電気司令所
  • ● 夜間作業に伴う最終列車確認作業研究
大野電車区/大野総合車両所
  • ● 構内限定運転士へのホーム出庫入換訓練
新宿管区/町田管区/小田原管区/喜多見電車区/喜多見車掌区/大野電車区/大野車掌区/海老名電車区/海老名車掌区
  • ● 踏切事故を想定した対応競技会
相模大野管区/海老名車掌区
  • ● 非常梯子を使用した避難誘導訓練、扉故障訓練、車内機器操作教育
相模大野管区/海老名検車区/海老名電車区/海老名車掌区
  • ● テロ対応訓練
足柄電車区/足柄車掌区/小田原管区
  • ● お客さまの避難誘導訓練、扉故障・物挟みを想定した訓練、対外事故を想定した対応訓練、職場交流
藤沢管区/大野電車区/大野車掌区
  • ● 出発・場内信号機停止現示での保安装置故障訓練、入換信号機停止現示での保安装置故障訓練
藤沢管区/大野車掌区
  • ● テロ発生時の対応ならびに避難訓練

お客さまに安全と安心を(安全報告書2016)