列車運行時の安全確保に向けた取り組みを強化しています。

主な取り組み

[1] 新列車制御システム(D-ATS-P)の導入

新列車制御システム「D-ATS-P(Digital Automatic Train Stop Pattern)」の導入により、列車運行の安全性がさらに向上することから、全線設置を目指しています。

多摩線、江ノ島線に続き、2014年度は、新百合ヶ丘~小田原間でも使用を開始しました。

このシステムは、先行する電車に追突しないよう信号情報を連続的に各電車に伝え、ブレーキを自動的に作動させることを可能にするものです。また、最新のデジタル技術を駆使し、急曲線・分岐器・下り勾配などでのきめ細やかな速度制御が可能となります。さらに、踏切で非常ボタンが動作した際は、接近してくる電車に危険情報を知らせ、自動的にブレーキを作動させることができます。

  • 2015年9月に全線で使用を開始しました。

■D-ATS-Pによる速度コントロールの仕組み

信号機に対する速度制限

急曲線に対する速度制限

分岐に対する速度制御

[2] 複々線化工事区間での安全確保

2012年度末に地下化された東北沢駅~世田谷代田駅間の複々線化工事区間では、2017年度の複々線化による運用開始を目指し、2013年度より2期工事を開始しました。2期工事では、残る緩行線トンネルの構築や駅舎工事などを進めていきますが、2014年度は緩行線トンネルを構築する為の掘削工事や京王井の頭線直下での土留め工事、また一部で駅舎工事などを行いました。

現在進めている2期工事は、営業線が運行している急行線トンネル上部、さらに下北沢駅で交差する京王井の頭線直下での工事であるため、工事の安全と鉄道の安全・安定輸送を確保しなければなりません。そのため、掘削工事では急行線トンネルの変位などを常時計測し、その結果について外部の有識者で構成する技術委員会などで安全性の検証を行いながら、工事を進めています。また、京王井の頭線直下での土留め工事においても、京王電鉄と定期的に会議を開催し、施工状況の確認や今後の工事の進め方について協議を行いながら工事を進めています。

さらに、工事に必要な資機材や、掘削で発生した土を運搬する工事用車両が市街地の中を走行することから、沿道への安全対策として、ガードマンの配置に加え、当社社員による定期的な巡回などを実施しました。

[3]内方線付き点状ブロックの整備

ホーム側(安全側)を表す線状の突起(赤枠部分)が入った内方線付き点状ブロックなどの全駅への整備に向け、設置工事を引き続き実施していきます。

[4]防雷設備の導入

近年、大雨や雷を始めとする異常気象が各地で発生し、特に猛暑が続く夏の季節にはゲリラ豪雨に襲われ、列車運行への大きなリスクとなっています。

そこで、線路内の電気設備への落雷防止対策として、電車線を支持する電力柱の中央部に「防雷設備」を設置しました。過去に落雷による被害を受けた区間や発生頻度の高い区間を優先して設置を進めています。

[5] ホームドアの整備

お客さまの線路転落や電車への接触などを未然に防止するため、2012年9月30日から、新宿駅の地上急行ホーム(4・5番線ホーム)にてホームドアを使用開始しました。

引き続き、他駅への設置に向けた検討を進めていきます。

踏切での事故・トラブルの未然防止に取り組んでいます。

主な取り組み

[1] 踏切視認性向上施策の実施

ドライバーなどが遠くからでも踏切を見落とさないように、次のようなさまざまな取り組みを行っています。

全方向閃光灯

全方向から視認できるよう円筒型(提灯型)の閃光灯を使用したもので、2014年度までに46踏切に設置しています。

オーバーハング型踏切警報機

道路の真上に閃光灯を設置したもので、2014年度までに18踏切に設置しています。

大口径遮断桿

遮断桿の太さを通常の約2倍にしたもので、2014年度までに7踏切に設置しています。

踏切道におけるカラー舗装化
踏切道におけるカラー舗装化

[2] 踏切でのカラー舗装化

歩行者が通行する際の安全確保や、自動車が踏切道内に取り残されてしまうことなどを防止するために、自治体や所轄警察署のご協力により、列車支障の多い一部の踏切道において、2014年度までに63カ所でカラー舗装を実施しています。

これは、歩行者の通行空間を明確にすることや、ドライバーが踏切道を通行する前に、踏切道先に自車が入れるスペースがあるかを確認できるよう配慮したもので、踏切道の保安度向上施策として期待されています。

踏切集中監視システム
踏切集中監視システム

[3] 踏切集中監視システムの活用

踏切保安装置の故障などによる事故を未然に防ぐため、電気司令所ならびに電気システム管理所において、全踏切の状態をリアルタイムに監視できる「踏切集中監視システム」を導入しています。

踏切集中監視システムの監視カメラや放送機器を活用することで、現地の映像による確認、記録、放送などが可能となったほか、事故が発生した際に踏切画像を事故現場でも確認できるようにすることで、事故処理のスムーズ化も図られています。また、「踏切障害物検知装置」の動作回数などの集計が容易になったことから、リスクの高い踏切の把握にも役立てています。

駅・踏切での人身事故防止に努めています。

主な取り組み

[1] 青色照明の設置

自殺予防効果が高いとされている青色照明を6駅の構内および9カ所の踏切に設置しています。

[2] 安全・安心パトロールの実施

ホームにおいて電車への飛び込み防止対策の一環として、「安全コミュニケーションシステム」により傾向を分析し、パトロールを行っています。

防災対策や体制の強化を進めています。

地震や異常気象に、より迅速・正確に対応できる体制づくりを推進しています。

地震や異常気象など自然災害発生時に迅速に情報をつかみ、お客さまの安全を確保し、被害を最小限に抑えることを目的に、2009年7月に「地震・気象情報監視システム」を整備しました。これは、沿線各所の震度、雨量、風速、河川の水位、レールの温度をオンラインで一元的に監視するシステムで、運輸司令所や電車区、工務区、電気システム管理所などで有効活用し、より迅速・正確に対応できる防災体制づくりを推進しています。

また、「大規模地震事業継続計画」を制定するとともに、近年の異常気象が発生していることや、昨冬の大雪で明らかになった課題などを踏まえ、2014年12月に鉄道防災計画【自然災害編】を制定しました。

COLUMN:早期地震警報システム

地震・気象情報監視システムのほか、地震発生時の被害軽減のため、2006年より「早期地震警報システム」を導入しています。これは一定規模以上の地震が発生した際、気象庁から配信される「緊急地震速報」を利用し、主要動の到達予想時刻・最大予想震度など当社線への影響を瞬時に判定。被害が予測される場合には、全列車に自動的に通報することにより、運転士が手動で電車を緊急停止させるものです。

自然災害に備えた各種補強工事を順次進めています。

線路脇の斜面においては、土砂崩壊などによる事故を防止することを目的として法面(のりめん)防護工事を推進するとともに、法面の異常を検知し関係各所ならびに運転士に知らせる「土砂崩壊検知システム」を、全線56カ所へ設置しています。

法面防護工事
法面防護工事
土砂崩壊検知システム
土砂崩壊検知システム

お客さまに安全と安心を(安全報告書2015)