以下、安全重点施策の4項目に沿って、2016年度の主な取り組みを紹介します。

概略

強靭かつ柔軟な「現場力」の構築

「未然防止」に対する取り組みの強化

「災害」に強い設備・体制の構築

「安定輸送」を実現する取り組みの推進

「安定輸送」を実現する取り組みの推進

列車運行時の安全確保に向けた取り組みを強化しています。

主な取り組み

[1]D-ATS-P(自動列車停止装置)の導入

ATSは、電車が制限速度を超えて信号機や急曲線、分岐などを通過しようとした際に、自動的にブレーキを作動させて減速または停止させる装置です。当社では2015年度よりD-ATS-Pを全線で導入しています。この装置は、従来のATSと比較して、レールからの信号現示情報や、地上子による距離情報などの多くの情報の授受ができるため、細かな速度制限が可能であり安全性が向上するとともに、情報をリアルタイムに電車へ伝達することができるため、信号が上位に変化した時に速度アップするまでの間隔が短くなり運転効率も向上します。

  • D-ATS-P:Digital Automatic Train Stop Patternの略

■信号現示に対する速度制御イメージ

信号機に対する速度制限

[2] 列車無線の更新

列車無線の設備をアナログ方式からデジタル方式への更新を行いました。この方式では、同時に複数の列車との通話や乗務員室の表示器に文字による情報提供が可能となることで、列車の安全運行をさらに高めました。

[3] 複々線化工事区間での安全確保

2013年3月に在来線を将来の地下急行線へと切り替えた東北沢~世田谷代田間の工事区間では、残る緩行線トンネルや駅舎の構築を進めています。

2016年度末までに、緩行線トンネルと東北沢駅・世田谷代田駅の駅舎の構築が完了したほか、下北沢駅では本設のエレベーターやエスカレーターを整備し使用を開始しました。

緩行線トンネルの構築は、営業線が通る急行線トンネルの上部、さらに下北沢駅で交差する京王井の頭線直下での工事であるため、工事の安全と鉄道の安全・安定輸送を同時に確保しなければなりません。そのため、緩行線トンネルの構築に必要な掘削工事では、急行線トンネルの変位計測や、外部の有識者で構成する技術委員会などにより安全性を検証するとともに、特に下北沢駅部においては、施工状況や工事の進め方について京王電鉄と綿密に調整を図りながら安全かつ確実に工事を進めました。

下北沢駅舎の工事については、お客さま通路を段階的に切り替えるため、ポスターやデジタルサイネージでの動画で事前周知を行い、また、構内・車内放送などを実施しました。切り替え後は、さらに誘導員を配置して、お客さまの安全を確保しつつエレベーターやエスカレーターの使用を開始しました。

工事エリア周辺では、工事に必要な資機材などを運搬する工事用車両が市街地の中を走行することから、沿道への安全対策として交通誘導員の配置はもとより、当社社員による定期的な巡回などを実施しています。

今後は、2018年3月の複々線完成および2018年度の事業完了に向けて、緩行線トンネル内での軌道・電路・信号などの工事や、残る下北沢駅舎の構築、京王電鉄による京王井の頭線橋梁の架け替え工事が本格化しています。引き続き、社内外の関係者と連携を図り、安全かつ確実に工事を進めていきます。

[4] 防雷設備の導入

近年、大雨や雷を始めとする異常気象が各地で発生し、特に猛暑が続く夏の季節には雷を伴うゲリラ豪雨に襲われ、列車運行への大きなリスクとなっています。

そこで、線路内の電気設備への落雷防止対策として、電車線を支持する電力柱の中央部に「防雷設備」を設置しました。過去に落雷による被害を受けた区間や発生頻度の高い区間を優先して設置を進めています。

駅・踏切での人身事故防止に努めています。

主な取り組み

[1] 青色照明の設置

自殺予防効果が高いとされている青色照明を6駅の構内および9カ所の踏切に設置しています。

[2] 安全・安心パトロールの実施

ホームにおいて電車への飛び込み防止対策の一環として、「安全コミュニケーションシステム」により事故の発生傾向を分析し、重点的にパトロールを行っています。

沿線自治体や警察・消防機関などとも連携を図り、安全性の向上に努めています。

さまざまな訓練を合同で行っています。

帰宅困難者対策訓練
帰宅困難者対策訓練

沿線の自治体や警察・消防機関と合同による「帰宅困難者対策訓練」を実施し、災害発生時の連携体制を確認しました。2016年度は、新百合ヶ丘駅、町田駅、相模大野駅、片瀬江ノ島駅において訓練を実施しました。

事故発生時の早期運転再開を目指し、沿線の警察・消防機関と連携を図りました。

事故が発生した際に現場での鉄道・警察・消防それぞれの活動体制を共有するため、「鉄道責任者との情報連携」「鉄道車両の概要」「活動上の注意点」について講習会を実施しました。また、実際の車両を使用した講習も実施し、車両構造やジャッキアップの方法、お客さまの降車誘導などの手順を確認しました。

事故を防止するために、自治体の活動に協力しました。

鉄道人身事故などを防止するため、自治体の実施する「街頭キャンペーン」に協力しました。2016年度は大和駅にて神奈川県の「自殺防止キャンペーン」に参加し、駅を利用されるお客さまへ事故防止の協力を呼びかけました。

お客さまに安全と安心を(安全報告書2017)