事故・トラブルの発生状況と再発防止について
2008年度に発生した、国土交通省令「鉄道事故等報告規則」に基づく「鉄道運転事故」「輸送障害」「インシデント」の発生状況についてお知らせします。
鉄道運転事故の件数の推移について。
鉄道運転事故は、列車衝突事故・列車脱線事故・列車火災事故・踏切障害事故・道路障害事故・鉄道人身障害事故・鉄道物損事故の7種類に分類されます。2008年度は、踏切障害事故1件、鉄道人身障害事故5件が発生しました。
鉄道運転事故件数の推移
鉄道運転事故の分類
列車衝突事故 | 列車が他の列車又は車両と衝突し、又は接触した事故 |
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列車脱線事故 | 列車が脱線した事故 |
列車火災事故 | 列車に火災が生じた事故 |
踏切障害事故 | 踏切道において、列車又は車両が道路を通行する人又は車両等と衝突し、又は接触した事故 |
道路障害事故 | 踏切道以外の道路において、列車又は車両が道路を通行する人又は車両等と衝突し、又は接触した事故 |
鉄道人身障害事故 | 列車又は車両の運転により人の死傷を生じた事故(前各号の事故に伴うものを除く) |
鉄道物損事故 | 列車又は車両の運転により500万円以上の物損を生じた事故 (前各号の事故に伴うものを除く) |
輸送障害の件数の推移について。
輸送障害とは、鉄道による輸送に障害を生じた事態で、鉄道運転事故以外のもの(列車に運休または30分以上の遅延が生じたもの)を指します。2008年度については、29件発生しました。
輸送障害件数の推移
原因内容について
部内原因 | 鉄道係員・車両・施設などが原因のもの |
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鉄道外原因 | 第三者行為、沿線災害などが原因のもの |
災害原因 | 風害、雷害、倒木など自然災害が原因のもの |
インシデント件数の推移について。
インシデントとは、鉄道運転事故が発生するおそれがあると認められる事態のことを指します。2008年度については、1件発生しました。
インシデント件数の推移
事故の再発防止へ向けた対策を行っています。
凍結を原因とする事故の再発防止策を実施しました。
■パンタグラフ・架線設備破損事故
[1] 発生日時
2008年2月4日(月)
[2] 発生場所
開成~栢山間
[3] 発生状況
箱根登山線内の架線に付着していた氷結を原因とし、パンタグラフが架線から離線することによるアーク(火花)が多発。事故列車のパンタグラフの一部を溶損・荒損させたまま小田急線内に乗り入れたため、架線設備などを破損し運行不能となったものであり、列車の運休22本、最大遅延105分を生じ、約1万1,000人のお客さまに影響を与えました。
■転てつ器不転換事故
[1] 発生日時
2008年2月5日(火)
[2] 発生場所
新百合ヶ丘駅構内
[3] 発生状況
駅構内の分岐器(ポイント)の一部が凍結により動かなくなり(推定)、列車の運休3本、最大遅延88分を生じ、約5万3,000人のお客さまに影響を与えました。
[4] 対策
いずれの事故も冬季における凍結を原因としていたことから、社内に部門横断的なプロジェクトチームである「厳寒期対策検討会」を組成し、再発防止策の検討を行いました。
まず、設備面の対策としては、分岐器への電気ヒーター(融雪器)の設置計画の前倒し、箱根登山線内における架線への氷結防止装置(塗油器)の増設、アーク(火花)に強いパンタグラフの実用試験などを実施いたしました。
取り扱い面では、気象条件に応じ、段階的に凍結防止警戒を実施することを決めた「厳寒期における取扱基準」を策定し、2008年12月より試行いたしました。(箱根登山鉄道線内においても同様の基準を策定していただきました。)
これにより、2008年12月~2009年3月までの冬季においては、凍結を原因とする事故・トラブルの発生を防ぐことができました。
お客さまの安全を預かる職責の重さを再認識し、基本動作の再徹底に努めます。
[1] 発生日時
2008年5月1日(木) 20時10分ごろ
[2] 発生場所
新百合ヶ丘駅 4番ホーム
[3] 列車
新百合ヶ丘発 唐木田行 各駅停車 6両編成
[4] 発生状況
列車が新百合ヶ丘駅ホームに定時に到着後、ホーム側のドアを開扉し、お客さまのご乗降を開始しました。その後、同駅で折り返し、唐木田行の列車となるため、運転士・車掌が乗務員室の入れ替えを実施。そこで、車掌が入れ替わった乗務員室で、扉機器類を確認中に、誤ってホームと反対側のドアを開いてしまいました。誤った扉が開いたことに気付いた車掌は、車内アナウンスを行った後に扉を閉めました。この列車は新百合ヶ丘~唐木田間を運休とし、回送電車として車庫に入庫しました。なお、この件において線路に転落されたお客さまはいらっしゃいませんでした。
[5] 対策
今後このようなことが二度と起こらないよう、全乗務員に対して、お客さまの安全を担う職責の重さを再認識させるとともに、基本動作の再徹底を図ったほか、新人車掌教育の充実化を図りました。
列車通過中に遮断桿が上昇するという事故の、再発防止に取り組みました。
[1] 発生日時
2008年6月12日(木) 12時49分ごろ
[2] 発生場所
本鵠沼1号踏切
[3] 列車
片瀬江ノ島発 町田行 各駅停車 6両編成
[4] 発生状況
当該列車が12時49分ごろ、本鵠沼駅定時到着時、ホーム手前に隣接する踏切を通過中、最後部車両の半分ほどが通過し終わる前に、遮断桿が上昇し始めるという事象が発生いたしました。歩行者・自動車などとの接触の被害はありませんでした。
[5] 原因
降雨によりレールに発生したさび、または車輪とレールの間に異物が介在したため、列車が通過し終える前にもかかわらず、踏切制御に使用している無絶縁起動回路(NIT-TR)が短絡感度不良を起こし、一瞬、列車がいないと検知したためです。
[6] 対応
踏切制御回路に時素リレーを追加することで、無絶縁起動回路(NIT-TR)が何らかの原因により列車がいないと検知した場合でも、それが一瞬であれば、踏切の動作を継続するよう改修しました。なお、これ以降、同様の事象は発生していません。
全乗務員に対する事案の周知と運転作業の再徹底を実施しました。
[1] 発生日時
2008年10月25日(土) 10時45分ごろ
[2] 発生場所
六会日大前駅 上りホーム
[3] 列車
片瀬江ノ島発 町田行 各駅停車 6両編成
[4] 発生状況
列車が六会日大前駅に停車する際に、所定の位置を約10m行き過ぎて停車。このとき、先頭車両の2つの扉がホーム外に出ている状態でした。その後、運転士が車両の後退を行う前に、車掌が列車の扉を開いた結果、ホーム外に位置していた2つの扉も開いてしまいました。なお、この件において線路に転落されたお客さまはいらっしゃいませんでした。
[5] 対策
この事案を全乗務員に対して緊急に周知し、列車停止位置の確認ならびに運転士・車掌相互の確認会話について再徹底したほか、新人車掌教育の充実化を図りました。今後も社員への教育を実施する際に、あらためて安全に対する意識の向上に努めていきます。
インシデントの発生を受けて、強風などによる速度規制の通告が確実に行われるようにしました。
[1] 発生日時
2008年12月22日(月)0時08分
[2] 発生場所
渋沢~新松田間
[3] 発生状況
新松田駅の風速計が規定値を越えたため、運輸司令所内にある警報が鳴動しました。司令助役は該当区間の「特別警戒区間」に対して速度規制の指令を開始しましたが、このとき、「特別警戒区間」のほかに「要注意区間」の速度規制に該当することに気が付きませんでした。「特別警戒区間」を走行する列車に対し通告を行った後、再度確認したところ、「特別警戒区間」のほかに「要注意区間」があることに気が付き、該当区間を走行中の列車に通告したものの、すでに「要注意区間」へ進入していました。
[4] 対策
風速が激しい場合の取り扱いに関する統一した早見表を作成し、必ず複数人で確認をすることとしました。また、司令助役への意識付けのため、速度規制の指令を行う場合は、規制表示板に通告内容を掲示することにしました。