安全施設強化に努めました。

想定されうる輸送安全に係る最大リスクについて、各部門の専門的見地に基づく知識・アイデアを集約し、リスクの低減を意識した具体的な計画を策定しました。

2011年度は、新列車制御システム(D-ATS-P)、可動式ホーム柵および内方線付き点状ブロックの設置など、安全施設の強化を進めました。

列車運行時の安全確保に向けた取り組みを強化しています。

主な取り組み

[1] 新列車制御システム(D-ATS-P)の導入

現在のATSに替え、新列車制御システム「D-ATS-P(Digital Automatic Train Stop Pattern)」の導入を進めています。

このシステムは、先行する電車に追突しないよう信号情報を連続的に各電車に伝え、ブレーキを自動的に作動させることを可能にするものです。また、最新のデジタル技術を駆使し、急曲線・分岐器・下り勾配などでのきめ細やかな速度制御が可能となります。さらに、踏切内で「踏切支障報知装置」が動作した際は、接近してくる電車に危険情報を知らせ、自動的にブレーキを作動させることができます。

D-ATS-Pの導入により、列車運行の安全性がさらに向上することから、全線設置を目指しています。

2011年度は多摩線での使用を開始しました。さらに、2012年度は江ノ島線での設置工事を進めます。

■D-ATS-Pによる速度コントロールの仕組み

信号機に対する速度制限

急曲線に対する速度制限

分岐に対する速度制御

[2] 緊急ブレーキ装置の整備

運転士が急に体調を崩したなどの不測の事態が発生した場合に備えて、運転士が1分以上加速やブレーキなどの操作を行わない場合は、非常ブレーキがかかるEB装置(運転士異常時列車停止装置)を営業運転車両すべてに導入しています。

[3] 複々線化工事区間での安全確保

地下化される東北沢駅~世田谷代田駅間の複々線化工事区間では、電車の運行を確保しながら、在来線直下にトンネルを構築するという非常に難しい工事を進めているため、安全に対するさまざまな対策を講じています。中でも、在来線地下化に向け掘削工事が完了した2011年度は、トンネル本体の構築に加え、地下ホームの構築や線路および電気・信号設備等の設置工事等、電車の運行に必要な設備の構築工事が本格化しました。トンネル内という狭隘なスペースで複数の工事が重複すると、情報伝達のミスによる事故の発生リスクが高くなるため、全ての施工業者が参加する組織を設け、連絡系統の確立や定期的な施工調整を実施し、安全の向上を図りました。

2011年度の主な取り組みを紹介します。

[1] 触車事故防止対策

町田駅、相模大野駅では、お客さまの滞留が多いホーム上の階段や柱付近に「滞留抑止表示」を設置し、接近する電車への触車防止を図りました。

 

[2] 駆込乗車防止対策

電車への駆込防止対策の一環として、新百合ヶ丘駅の階段に「駆込乗車防止表示」を設置しています。これは、階段の両端に黄色い線を引き、あえて階段幅を狭く見せることで、注意を促すものです。

 

[3] ゼブラゾーンの設置

本厚木駅では、ホーム端部に斜線によるゼブラパターンを表示し、お客さまがホームから不意に転落しないよう注意喚起を図りました。

 

[4] ホーム柵および内方線付き点状ブロックの整備

ホームでの線路転落や触車事故などの未然防止対策として、可動式ホーム柵を新宿駅の地上急行ホーム(4・5番線ホーム)に設置する工事を進めており、2012年9月30日からの使用開始を予定しています。今後は、新宿駅設置後の技術・運用面などの検証を行うとともに、ホーム柵設置のための各種課題対策の検討を引き続き進めていきます。また、内方線付き点状ブロックの全駅への整備に向けて、未整備駅に設置を進めていきます。

 

COLUMN:お客さまに対する事故防止啓発活動

お酒に酔ったお客さまの線路への転落や電車との接触などが多く発生する歓送迎会などの時期に合わせ、事故防止のための啓発活動を行っています。2012年4月には、下北沢駅、本厚木駅において、お客さまへの呼びかけおよびポケットティッシュの配布を行いました。

 

踏切での事故・トラブルの未然防止に取り組んでいます。

主な取り組み

[1] 踏切視認性向上策の実施

ドライバーなどが遠くからでも踏切を見落とさないように、次のようなさまざまな取り組みを行っています。

全方向閃光灯。全方向から視認できるよう円筒型(提灯型)の閃光灯を採用したもの。2011年度までに33踏切に採用。

 

オーバーハング型踏切警報機。道路上に警報機をかぶせたもの。2011年度までに17踏切に採用。

 

大口径遮断桿(だいこうけいしゃだんかん)。遮断桿の太さを通常の約2倍にしたもの。2011年度までに7踏切に採用。

 

[2] 踏切でのカラー舗装化

歩行者が通行する際の安全確保や、自動車が踏切道内に取り残されてしまうことなどを防止するために、列車支障の多い一部の踏切道においてカラー舗装を実施しています。

これは、歩行者の通行空間を明確にすることや、ドライバーが踏切道を通行する前に、踏切道先に自車が入れるスペースがあるかを確認できるよう配慮したもので、踏切道の保安度向上施策として期待されています。

2011年度では、自治体や所轄警察署のご協力により、全線で3カ所の踏切道において実施しました。

 
踏切道におけるカラー舗装化

[3] 踏切集中監視システムの活用推進

踏切保安装置の故障などによる事故を未然に防ぐため、電気司令所ならびに電気システム管理所において、複々線化工事区間(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)を除く全踏切の状態をリアルタイムに監視できる「踏切集中監視システム」を導入しています。

踏切集中監視システムの監視カメラや放送機器を活用することで、踏切の映像による監視、記録、現地踏切への放送なども可能となったほか、踏切で異常が発生した際の現場状況の早期確認や初期対応のスムーズ化も図られています。また、「踏切障害物検知装置」の動作回数などの集計が容易になったことから、リスクの高い踏切把握にも役立てています。

 
踏切集中監視システム

[4] 踏切監視警告板の設置

「踏切集中監視システム」の設置に伴い、監視中であることを警告した「踏切監視警告板」を電車に対する妨害行為の多かった40踏切に対して設置しています。この結果、設置した踏切では多発していた妨害行為(置石や非常ボタンのいたずら操作など)が大幅に減少していることから、一定の効果を挙げていると考えられます。

 
踏切監視警告板

[5]啓発看板の設置

交通量の多い道路に隣接し、自動車が踏切内に取り残されてしまうことが多い柿生3号踏切において、安全確認を啓発する看板を設置しました。

その他の踏切においても、設置箇所それぞれの状況にマッチした看板デザインを採用し、歩行者やドライバーへメッセージをより強く伝えられるよう工夫しています。

 

お客さまに安全と安心を(安全報告書2012)