列車運行時の安全確保に向けた取り組みを強化しています。

主な取り組み

[1] 新列車制御システム(D-ATS-P)の導入

新列車制御システム「D-ATS-P(Digital Automatic Train Stop Pattern)」の導入により、列車運行の安全性がさらに向上することから、全線設置を目指しています。

2012年度は、多摩線での設置に続き、江ノ島線でも設置工事を進め、2013年5月18日より使用開始しました。

このシステムは、先行する電車に追突しないよう信号情報を連続的に各電車に伝え、ブレーキを自動的に作動させることを可能にするものです。また、最新のデジタル技術を駆使し、急曲線・分岐器・下り勾配などでのきめ細やかな速度制御が可能となります。さらに、踏切内で「踏切支障報知装置」が動作した際は、接近してくる電車に危険情報を知らせ、自動的にブレーキを作動させることができます。

■D-ATS-Pによる速度コントロールの仕組み

信号機に対する速度制限

急曲線に対する速度制限

分岐に対する速度制御

[2] 緊急ブレーキ装置の整備

運転士が急に体調を崩したなどの不測の事態が発生した場合に備えて、運転士が1分以上加速やブレーキなどの操作を行わない場合は、非常ブレーキがかかるEB装置(運転士異常時列車停止装置)を営業運転車両すべてに導入しています。

 

[3] 複々線化工事区間での安全確保

地下化された東北沢駅~世田谷代田駅間の複々線化工事区間では、電車の運行を確保しながら、かつ狭隘な市街地において、在来線直下にトンネルを構築するという非常に難しい工事を進めているために、安全に対するさまざまな対策を講じました。

中でも在来線を地下化した2012年度については、狭隘な地下トンネル内において開業設備関係の各種工事が輻輳したため、各工区の共同企業体所長を統括安全衛生管理者に指名し、各施工会社間における工程管理や安全管理などの調整を綿密に行うとともに、工事現場内における作業ルールの徹底を図り、事故防止に努めました。

 

[4] ホームドアの整備

お客さまのホームからの線路転落や電車への接触などを未然に防止するため、2012年9月30日から、新宿駅の地上急行ホーム(4・5番線ホーム)にてホームドアを使用開始しました。

引き続き、技術開発などの動向を見ながら、他駅への整備に向けて検討を進めていきます。

 

[5]内方線付き点状ブロックの整備

ホーム側(安全側)を表す線状の突起(赤枠部分)が入った内方線付き点状ブロックなどの全駅への整備に向け、設置工事を引き続き実施していきます。

 

[6] 触車事故防止対策

成城学園前駅では、黄色い線の外側(線路側)にいるお客さまを監視カメラにて感知し、注意喚起を行なう「転落抑止システム」を試験導入し、電車への触車防止を図っています。

 

[7] ゼブラゾーンの設置

代々木八幡駅、中央林間駅で、ホーム端部に斜線によるゼブラパターンを表示し、お客さまがホームから不意に転落しないよう注意喚起を図りました。

踏切での事故・トラブルの未然防止に取り組んでいます。

主な取り組み

[1] 踏切視認性向上策の実施

ドライバーなどが遠くからでも踏切を見落とさないように、次のようなさまざまな取り組みを行っています。

 

全方向閃光灯。全方向から視認できるよう円筒型(提灯型)の閃光灯を採用したもの。2012年度までに39踏切に設置しています。

 

オーバーハング型踏切警報機。道路上に警報機をかぶせたもの。2012年度までに16踏切に設置しています。

 

大口径遮断桿(だいこうけいしゃだんかん)。遮断桿の太さを通常の約2倍にしたもの。2012年度までに7踏切に設置しています。

 
踏切道におけるカラー舗装化

[2] 踏切でのカラー舗装化

歩行者が通行する際の安全確保や、自動車が踏切道内に取り残されてしまうことなどを防止するために、自治体や所轄警察署のご協力により、列車支障の多い一部の踏切道においてカラー舗装を実施しています。

これは、歩行者の通行空間を明確にすることや、ドライバーが踏切道を通行する前に、踏切道先に自車が入れるスペースがあるかを確認できるよう配慮したもので、踏切道の保安度向上施策として期待されています。

 
踏切集中監視システム

[3] 踏切集中監視システムの活用

踏切保安装置の故障などによる事故を未然に防ぐため、電気司令所ならびに電気システム管理所において、全踏切の状態をリアルタイムに監視できる「踏切集中監視システム」を導入しています。

踏切集中監視システムの監視カメラや放送機器を活用することで、現地の映像による確認、記録、放送などが可能となったほか、異常が発生した際の現場状況の早期確認や初期対応のスムーズ化も図られています。また、「踏切障害物検知装置」の動作回数などの集計が容易になったことから、リスクの高い踏切の把握にも役立てています。

 
踏切監視警告板

[4] 踏切監視警告板の設置

「踏切集中監視システム」の設置に伴い、監視中であることを警告した「踏切監視警告板」を電車に対する妨害行為の多かった40踏切に対して設置しています。

この結果、設置した踏切で多発していた妨害行為(置石や非常ボタンのいたずら操作など)が大幅に減少していることから、一定の効果を挙げていると考えられます。

[5]啓発看板の設置

踏切内で、歩行者や自動車の滞留が多く発生している「参宮橋1号踏切」「生田1号踏切」「足柄1号踏切」において、安全確認を啓発する看板を設置しました。

その他の踏切においても、設置箇所それぞれの状況にマッチしたデザインの看板を採用し、歩行者やドライバーへ踏切を渡る際の注意をより強く伝えられるよう工夫しています。

 
参宮橋1号踏切
 
生田1号踏切
 
足柄1号踏切

防災対策や体制の強化を進めています。

地震や異常気象に、より迅速・正確に対応できる体制づくりを推進しています。

地震や異常気象など自然災害発生時に迅速に情報をつかみ、お客さまの安全を確保し、被害を最小限に抑えることを目的に、2009年7月に「地震・気象情報監視システム」を整備しました。これは、沿線各所の震度、雨量、風速、河川の水位、レールの温度をオンラインで一元的に監視するシステムで、運輸司令所や電車区、工務区、電気システム管理所などで有効活用し、より迅速・正確に対応できる防災体制づくりを推進しています。

 

COLUMN:早期地震警報システム

地震・気象情報監視システムのほか、地震発生時の被害軽減のため、2006年より「早期地震警報システム」を導入しています。これは一定規模以上の地震が発生した際、気象庁から配信される「緊急地震速報」を利用し、主要動の到達予想時刻・最大予想震度など当社線への影響を瞬時に判定。被害が予測される場合には、全列車に自動的に通報することにより、運転士が手動で電車を緊急停止させるものです。

 

[図]

自然災害に備えた各種補強工事を順次進めています。

線路脇の斜面においては、土砂崩壊などによる事故を防止することを目的として法面(のりめん)防護工事を推進するとともに、法面の異常を検知し関係各所ならびに列車運転士に知らせる「土砂崩壊検知システム」を、全線57カ所へ設置しています。高架橋や橋梁においては、耐震補強工事を進めているほか、トンネル内についても補強工事を実施するなど、施設の強化に取り組んでいます。

 
法面防護工事
 
高架橋の耐震補強工事
 
トンネル内補強工事

お客さまに安全と安心を(安全報告書2013)