基本理念

小田急グループの経営理念は、経営に対する普遍的な価値観や社会に対する意義を示した「経営理念」と、これを実現するための経営の姿勢ならびに各ステークホルダーに対する約束を示した「経営方針」で構成されています。ここで示された経営方針に則り、経営理念を実現することで、社会とともに持続的に発展していくことが小田急グループの社会的責任(CSR)です。

そして、CSR活動の領域は「社会から信頼されるための取り組み」を中心に構成しており、この中でコンプライアンスは、事業活動の前提となるものとして「社会から信頼されるための取り組み」の一つに位置づけられています。

これを踏まえ、役員・社員の一人ひとりがコンプライアンス上、常に心がけるべきものとして、当社が定めている17の行動基準の一つに、「事故防止への積極的な取り組み」があり、その中で【小田急電鉄は、日本一安全な鉄道をめざします】との基本理念を掲げています。

小田急電鉄は日本一安全な鉄道をめざします。

題字:小田急電鉄株式会社 取締役社長 山木 利満

安全に関する基本的な方針

2006年10月、お客さまの安全を守るために「安全管理規程」を制定し、第2条において「安全に関する基本的な方針」を定めました。

安全管理規程 第2条(安全に関する基本的な方針)

  1. 社長および社員は、「小田急グループ経営理念」に基づき、安全を第一に快適で良質な輸送サービスを提供し続けることが、最も重要な社会的責任(CSR)であることを認識し、事業を安全に持続して行える体制の整備に努めるとともに、そのための役員および輸送に係る社員(以下「従業員」という。)等が実践する安全方針を次に掲げるとおり定め、必要に応じ見直すものとする。

    1. (1) 私たちは、‘人’および鉄道施設、車両が事業の基盤であり、それら相互の連携と取扱いを定めたルールが輸送の安全を支えていることを認識し、それぞれのレベルアップに努める。
    2. (2) 私たちは、自然や社会環境などの変化に対し、常にリスクを最小化するよう協働して活動することで、より安全な鉄道を築いて行く。
    3. (3) 私たちは、お客さまや沿線をはじめとした社会の信頼に応え、輸送の安全を守り、お客さま起点に立って愛される鉄道となるよう努める。
  2. 役員および従業員等の輸送の安全を確保するための行動規範は、次に掲げるとおりとする。

    1. (1) 「安全の確保」「最善の処置」
      安全を第一に輸送の安全の確保に努め、事故、災害等が発生した場合は、人命救助を最優先に行動し、速やかに最善の処置をとる。
    2. (2) 「規定の遵守」「執務の厳正」
      輸送の安全を確保する関係規程を理解するとともに、規定を遵守し、厳正かつ忠実に執務を行う。
    3. (3) 「連絡の徹底」「確認の励行」
      職務の遂行に当たっては、関係者との連絡を徹底し、打合せを正確にし、憶測によらず確認の励行に努め、疑いのある場合には、最も安全と思われる取り扱いを行う。
    4. (4) 「状況の把握」「情報の共有」
      常に輸送の安全に関する状況の把握に努め、情報は漏れなく正確、迅速に伝え、情報の共有化を図る。
    5. (5) 「改善の提案」「見直しの実践」
      常に問題意識を持ち、業務の改善が必要な場合は積極的に提案し、見直しを実践する。
  3. 第1項の方針に基づき事業の安全性向上のための施策を、中期経営計画および安全重点施策として定め、その実施に役員および従業員等は一致協力して努めるとともに、適宜見直すものとする。

  4. 前項の当該施策およびこれに基づく取り組みの実績その他輸送の安全に関する情報については、毎年度、これを取りまとめ安全報告書として公表する。

安全管理組織と安全管理体制

お客さまの安全を守るべく、安全管理規程において、社長を最高責任者とし、安全確保に関する業務を統括する「安全統括管理者」を中心に各部門で管理者を定め、それぞれの責務と役割を明確にしています。

また、この安全統括管理者を委員長とし各部門の管理者が委員を務める「統括安全マネジメント委員会」を中心に、各部門の本社および現業職場それぞれに「安全マネジメント委員会」を設け、安全に関する指示・伝達や情報連絡・共有および諸施策の検討・実施などを行う管理体制を構築しています。

安全管理の組織体系

[図]

  • 安全・技術部長については、交通サービス事業本部以外の部門に対しても、安全管理規程第14条に基づき、安全統括管理者の業務を補佐する。

安全管理体制

[図]

安全管理規程にかかわる部門

交通企画部、安全・技術部、運転車両部、旅客営業部、工務部、電気部、複々線建設部、財務部、人事部

安全管理の方法

PDCAサイクルを基本とした、安全管理を行っています。

[図]

「基本理念」「安全方針」に則った具体的な取り組みを実践すべく、安全性向上のための全社的な「安全努力目標」を設定するとともに、各部門における取り組みの方向性を整えた「安全重点施策」を策定しています。

また、毎年「鉄道内部監査」を実施し、安全管理体制が有効に機能しているかどうかの検証を行っているほか、「鉄道内部監査」の結果や「安全重点施策」の進捗状況については、「統括安全マネジメント委員会」において四半期ごとに「マネジメントレビュー(経営トップの主体的関与のもと実施する安全管理体制の評価および見直し・改善)」を実施し、継続的な改善を図っていくという方法により、安全管理を行っています。

安全キーワード:PDCAサイクル

PDCAサイクルとは、デミングらによって提唱されたマネジメントの手法であり、P(PLAN:計画)-D(DO:実施)-C(CHECK:評価)-A(ACT:改善)というプロセスにより、改善の結果を次の計画に反映させるというものです。

当社では、安全に関する種々の取り組みについて、この手法に基づき、さらなる改善に努めています。

「日本一安全な鉄道を」を目指し、「安全努力目標」や「安全重点施策」に加えて、「重点取り組み事項」を設定し、より効果的な取り組みに努めています。

当社では、「安全に関する中期経営計画【2010~2014年度】」として、「安全努力目標」と「安全重点施策」を策定しています。これは、従来からの継続的な安全・安心の追求はもちろんのこと、2009年12月に改正した「安全に関する基本的な方針」や安全対策の進捗状況・課題、安全に対する社会からの要請なども考慮しているものです。特に「安全重点施策」では、「組織・体制」「ヒト(係員)」「モノ(安全施設)」「お客さま」の4つの視点をもって、取り組むべき方向性を定めています。

安全重点施策

  1. 安全マネジメント態勢の推進
    輸送安全を支える安全マネジメント態勢のさらなる整備、拡大を進めるとともに、安全文化としての組織レベル=「仕事への意欲と責任」「仕事の規定化と文書化」「仕事の資格と訓練」「仕事の改善と伝承」の醸成を進める。

  2. 安全のスキルアップ
    輸送安全を支える人材のスキルアップを図り、ヒューマンエラーの防止を図るとともに、安全文化としての個人レベル=「安全への向上意欲」「不安全への気付きや意見」「組織での共有化と実践」の醸成を図る。

  3. 安全施設の強化
    各部門において想定されうる輸送安全に係る最大リスクについて、その低減を意識した安全施設の強化、推進を図る。また、全体としては、既に具体的に進めているD-ATS-P導入や、ホームおよび踏切での安全性向上、鉄道防災での安全性向上等、より具体的な計画を策定し推進を図る。

  4. お客さまとの安全協働の推進
    鉄道の安全を築くうえでは、利用者であるお客さまの安全に対する理解と協力が不可欠である。お客さまとのコミュニケーションを活発に行い、信頼され、協力が得られる鉄道を目指す。

2012年度重点取り組み事項

  1. 外的要因による事象に対する発生抑制および支障時分の短縮

  2. 科学的分析手法による分析、発生傾向等をふまえた対応・対策の実施

  3. 安全マネジメントの理解および、安全コミュニケーションシステムの活用の促進

  4. 緊急時・運行異常時等におけるお客さま、地域社会の皆さまとのコミュニケーション充実

  5. ホームの安全性向上、衝動軽減、利用客のマナーアップなど、顧客・社会的要請への対応

  6. 危機管理や異常時対応・体制の強化

2013年度重点取り組み事項

  1. 危機管理や異常時対応・体制の強化

  2. 外的要因による事象に対する発生抑制および支障時分の短縮

  3. ホームの安全性向上、衝動軽減、マナー啓発など、顧客・社会的要請への対応

  4. 緊急時・運行異常時等におけるお客さま、地域社会の皆さまとのコミュニケーション充実

  5. 安全マネジメントの理解および、「ガイドライン」をふまえた現状からの具体的なステップアップ、不足点の解消を意識した取り組みの推進[①再発防止対策の有効性検証、②「みんなの声」(ヒヤリ・ハット情報)の共有・活用促進、③関係規程類、教育・訓練等の形骸化防止、など]

  6. 本社と現業職場、異なる職場間でのコミュニケーション環境の向上

安全キーワード:ガイドライン

ここでいうガイドラインとは、国土交通省大臣官房 運輸安全監理官から公表された「運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン~輸送の安全性の更なる向上に向けて~」のことです。

運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン

お客さまに安全と安心を(安全報告書2013)