方針

昨今、地球温暖化による豪雨・洪水、酷暑・干ばつといった自然災害が頻発・激甚化しており、その被害は甚大化しています。当社グループにおいても、このような気候変動が事業活動に大きな影響を与える重要な環境課題であると認識しています。
当社グループでは、気候変動問題を含む環境対応を重要な経営課題の一つとして位置付け、2021年9月に行動指針「小田急グループ カーボンニュートラル2050」を策定するとともに、脱炭素社会の実現に向けたロードマップを作成し、省エネ、電化・水素化、再エネ化を進めています。当社グループにとって、省エネ車両の導入やECO運転の実施、新規物件への先進技術導入、EV・FCVバスの導入、PPAを活用した再生可能エネルギーの確保など積極的に取り組むことは、気候変動によるリスクを抑制するだけでなく新たな事業機会の創出につながると考えています。
このような課題認識のもと、当社グループでは事業活動を通じてCO2排出削減に努め、様々なステークホルダーとともにカーボンニュートラルの実現に向け取り組んでいます。

ガバナンス体制

当社グループでは、環境長期目標を含めた行動指針「小田急グループ カーボンニュートラル2050」を策定し、取り組みを進めています。この推進に関する事項の審議および気候関連のリスク・ 機会についての特定を行う機関として、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。 また、取締役会および取締役社長はサステナビリティ推進委員会から報告を受け、目標に向けた進捗状況や気候関連のリスク・機会などを監視し、必要により指示を出すことにしています。サステナビリティ推進委員会で審議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図り、取り組みを推進しています。

目標

指標 対象範囲 目標
Scope1、2
CO2排出量 削減率
当社グループ(連結) 2030年度:2013年度比 50%削減
2050年度:実質ゼロ

環境戦略

UPDATE 1 脱炭素社会の実現

Carbon Neutral Carbon Neutral

Action1 小田急グループのCO2排出量を実質「0」へ

小田急グループは省エネルギー化の推進と再生可能エネルギーの活用により、2050年までに事業で排出されるCO2排出量実質「0」を目指します。

鉄 道

小田急グループ交通網の再生可能エネルギー導入

2024年度より小田急全線をはじめ、箱根、江の島・鎌倉、大山エリアの小田急グループ交通網(小田急電鉄、箱根登山鉄道、箱根ケーブルカー、箱根ロープウェイ、江ノ島電鉄、大山観光電鉄※1)は、運行に使用するすべての電力※2を再生可能エネルギー100%に切り替えます。

※1 大山観光電鉄は環境長期目標の対象外

※2 運転用電力をはじめ駅や信号機、踏切等を含む列車運行のために使用する全電力

複々線化事業の効果

複々線化事業の効果
複々線による効果

複々線化事業の完成と列車増発により平均混雑率の低下や所要時間の短縮により旅客サービスの向上が図られています。また、列車の詰まりの解消や省エネ化により、CO2排出量を削減しています。

車両の省エネ

車両の省エネ
省エネ化が進む車両

小田急グループ鉄道各社は、VVVFインバータ制御装置の採用や照明のLED化などの車両の省エネ化を推進しています。

回生電力の有効利用

回生電力のながれ
回生電力のながれ

電車がブレーキをかけたとき発電し生まれる回生電力は、運行している他の電車のエネルギーとして再利用されます。一方、使い切れず余った回生電力は一時的に貯蔵し再利用しています。小田急電鉄の全ての車両は回生ブレーキを装備しています。

環境にやさしい駅

太陽光発電システム、トップライト、光ダクト、地中熱ヒートポンプシステム
各駅の省エネ設備

東北沢駅、下北沢駅、世田谷代田駅は、太陽光発電システム、トップライト、光ダクト、地中熱ヒートポンプシステム等の各種省エネ設備を装備した環境負荷の少ない駅です。今後も地域特性にあった環境にやさしい駅の建設を推進します。

風力発電(駅施設)

箱根ロープウェイ・大涌谷駅
箱根ロープウェイ・大涌谷駅

国立公園内に立地している箱根ロープウェイ・大涌谷駅は、2013年4月にリニューアルされ、風力発電システムが採用されました。発電した電気は駅施設の電力の一部として使用しています。

駅施設の省エネ

人感知多機能券売機
人感知多機能券売機

各駅の照明、ホームの行先表示装置や駅構内の各種掲示板のLED化や人感知多機能券売機の採用など駅施設の省エネを推進しています。

保安施設の省エネ

信号機のLED化
信号機のLED化

小田急電鉄の全ての信号機、踏切のせん光灯についてLED化が完了し、メンテナンスの省力化と省エネ化を達成しています。

オンサイトPPAによる太陽光発電設備の導入

海老名エリア
海老名エリア(2024年着工予定)

再生可能エネルギーのさらなる活用を目指し、オンサイトPPAによる太陽光発電設備を設置、さらに東京電力グループ、出光興産と地域の脱炭素に向け連携開始。

小田急沿線自然エネルギー導入マップ

小田急沿線自然エネルギー導入マップ
 

駅や商業施設上に太陽光パネルを設置する等再生可能エネルギーを活用し、CO2削減に取り組んでいます。

自然エネルギー活用の取り組み

不 動 産

ZEH・ZEB化の推進

ZEH・ZEB化の推進

小田急不動産では、住宅事業における環境負荷低減のため、断熱性・省エネ性能の向上や太陽光発電を設置した戸建住宅の建設、新築分譲マンションヘの段階的なZEH-M(ゼッチ・マンション)の導入等を推進しています。また「ZEHビルダー※」に登録し、2025年度のZEH普及50%を目標に取り組んでいます。オフィスビル等では、快適な室内環境を実現しながら建物で消費する年間の一次エネルギーの低減を目指すZEB化を推進しています。

ZEH普及目標および実績

小田急不動産 実績 ZEHビルダー 普及目標
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2025年度
0% 0% 0% 100% 50%

※ ZEHビルダーとは、国が掲げている「ZEH ロードマップ」の意義に基づき、自社が受注する住宅(新築注文住宅、新築建売住宅、既存改修)のうち、ZEH、Nearly ZEH、ZEH Orientedが占める割合を2025年度までに50%以上とする事業目標を掲げるハウスメーカー、工務店、建築設計事務所、リフォーム業者、建売住宅販売者等を指す。

新宿駅西口地区開発計画

「A区」計画建物(イメージ)
「A区」計画建物(イメージ)

新宿グランドターミナルの一体的な再編を象徴する大規模開発。「A区」の事務所用途において、2023年12月に建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)評価を取得し「ZEB Ready」を達成しました。ワークプレイスとしての機能性と環境配慮を両立させた、高機能なオフィス空間を目指します。

商業施設(太陽光発電システム)

経堂コルティに設置された太陽光発電システム
経堂コルティに設置された太陽光発電システム

2011年4月にオープンした商業施設「経堂コルティ」は屋上に太陽光発電システムが設置され、発電した電気は、空調や照明設備などの電力に使用しています。

商業施設(LED照明)

小田急百貨店町田店ファッションウォーク
小田急百貨店町田店ファッションウォーク

2018年、町田駅ビルの全館リニューアルを実施し、ショップ内、共用通路とも照明装置をLEDに更新。リニューアル前と比較して約7%の電力削減を実施しました。

バス・タクシー

EVバスの導入

EVバス
神奈川中央交通 平塚営業所
EVバス
小田急バス 武蔵境営業所
EVバス
立川バス 福生営業所
EVバス
江ノ電バス 湘南営業所

当社グループが保有するバスの約15%※1にあたる約500台のEVバスを、国や自治体の補助を活用しながら2030年度までに導入していきます。

※1 2024年3月現在(環境長期目標非対象の神奈川中央交通(株)を含む)

ハイブリッドタクシー

ハイブリッドタクシー
小田急交通

小田急交通では、環境性能が高いLPG-ハイブリッドシステムを採用した車両の導入を推進しています。この車両は健常者、身体の不自由な方を問わず、全ての人に優しいユニバーサルデザインタクシーです。

Action2 脱炭素社会に向けた地域課題の解決

再生可能エネルギーの発電や循環により地域の脱炭素社会の実現に貢献します。

小田急でんき・グリーンプラン

グリーンプランの仕組み
グリーンプランの仕組み

グリーンプランは、森林由来のJ-クレジットの環境価値を付加することで供給された電気の使用に伴うCO2排出量を相殺して実質的にCO2フリーの電気とする仕組みです。

太陽光発電

喜多見発電所
喜多見発電所

喜多見発電所は喜多見電車基地はじめ周辺施設の屋上や屋根部分約8,400㎡のスペースを活用した世田谷区内で最大規模の太陽光発電所であり、毎年60万Kwh以上を発電します。

EV専用駐車場

EV専用駐車場スペース
EV専用駐車場スペース

環境負荷の小さいEV自動車の普及を支える交通インフラとして、EV充電装置を設置した駐車場を整備しています。

Action3 環境にやさしい公共交通へのシフト

鉄道やバスは他の乗り物と比較して、CO2排出量の少ない環境にやさしい乗り物です。今後も利便性の向上と環境負荷の低減を推進します。

鉄道・バスの環境優位性

鉄道・バスの環境優位性
出典:国土交通省ウェブサイト

旅客輸送において、各輸送機関から排出される単位輸送量当たりのCO2排出量を比較すると鉄道は自家用車の約1/6であり、鉄道・バスは環境に優しい乗り物です。

CO2排出 削減貢献量(Scope4)

旅客輸送機関別 単位輸送量当たりのCO2排出量

小田急グループの交通網(鉄道、ケーブルカー)の2023年度の単位輸送量あたりのCO2排出量は、12g-CO2/人kmであり、年間排出量では自動車輸送と比較して121万t-CO2の排出削減に貢献しています。

削減貢献量の算定について

MaaSの推進

オンデマンド交通「しんゆりシャトル」
オンデマンド交通「しんゆりシャトル」

MaaSを推進することで、自家用車などの移動手段を持たなくてもストレスフリーで最寄りの駅、商業施設へ移動することが可能になり、環境負荷の低減にも貢献します。

環境定期制度(路線バス)

立川バス
立川バス

立川バスの通勤定期をお持ちのお客さまに同伴される家族の方は、土・日・祝日等に限り、割引運賃で乗車できる制度。自家用車からバスへのシフトに貢献します。

SHONAN PEDAL(シェアサイクリング)

SHONAN PEDAL(シェアサイクリング)
江ノ島電鉄

SHONAN PEDALは、湘南地域で展開されている電動アシスト自転車のシェアリングサービス。環境に優しく、地域住民の身近な交通手段として、また湘南観光の周遊交通手段として活躍しています。

駐輪場・駐車場の整備

高架下駐輪場
高架下駐輪場

駅周辺の保有土地を活用し、駐輪場や駐車場の整備を行っています。自宅最寄りの駅までのアクセス利便性の向上を図り、鉄道利用促進に貢献します。

その他の取組み

環境配慮型建物(グリーンビルディング)の推進

当社グループでは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、環境に配慮された不動産に対し付与される認証の取得を推進しています。

認証名・内容 施設名
ZEB Ready(BELS★★★★★)
建物で消費する年間の一次エネルギーから50%以上削減に適合した建築物
  • 新宿グランドターミナル(A区 事務所用途)
  • 新宿喜楓ビル
  • 小田急不動産ロジスティクスセンター蟹江

グリーン経営認証の取得

当社グループでは、公益財団法人交通 エコロジー・モビリティ財団が推進する環境保全を目指した認証制度の取得を推進しています。運輸業界における環境負荷の低減につなげていくための制度です。
(対象:トラック・バス・ タクシー・海運・港湾運送・倉庫等の事業者)

バス 小田急バス株式会社
小田急ハイウェイバス株式会社
神奈川中央交通株式会社
株式会社東海バス
旅客船 株式会社小田急箱根

環境月間 グリーンライトアップ

グリーンライトアップ

「片瀬江ノ島駅」と「江の島シーキャンドル※」をグリーンライトアップ
期間:2024年6月1日~2024年6月30日
※江の島シーキャンドルは6月5日のみ