TNFD提言に基づく情報開示に向けて

当社グループでは、経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業にむけて~」の下、環境や社会の持続性に配慮しながら、事業を通じて地域に価値を創造し、地域の持続可能性を高めることによって、サステナビリティ経営を推進する「サステナビリティ方針」を掲げています。このサステナビリティ経営を推進するべく、当社グループに関連する社会課題をリストアップし、社会における重要度を評価・分類するとともに経営ビジョンや各事業の状況を踏まえ、6つのマテリアリティ(重要テーマ)を選定しています。
私たちの事業活動は、豊かな自然資本の恩恵で成り立っており、この自然資本を保全し持続可能なものとすることが重要であると捉えており、マテリアリティの一つとして「環境」を掲げています。
これらを経営の中心に据え、社会課題解決を通じた持続可能な成長を実現していきます。

TNFD提言に基づく情報開示

地域および当社グループの持続的成長を実現させていくためには、事業と自然環境との関連性を把握し、事業リスク、機会の把握およびそれらの対応に取り組むことが重要であると考え、この度、自然資本と事業との関連性やリスク、機会を評価し開示するためのフレームワークを提供している「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosure)」の提言に沿った情報開示をいたします。

TNFD提言は、下図のように「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標と目標」という4つの開示枠組みで構成されています。

[TNFDが要求する4つの開示項目]
TNFDが要求する4つの開示項目

ガバナンス

(1)サステナビリティ推進体制

小田急グループにおけるサステナビリティ推進体制は、マテリアリティ推進体制およびTCFDで開示している通り、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」が社内関係部門・グループ各社と連携するという体制になっています。事業と自然との依存、影響関係および、それらに紐づく自然関連リスク、機会においても、同様にサステナビリティ推進体制に基づき管理されており、取締役会および取締役社長はサステナビリティ推進委員会から報告を受け、目標に向けた取り組みの進捗状況やリスク、機会等を監視し、必要により指示を出すことにしています。

(体制図)

(2)ステークホルダーに対する方針

サステナビリティ経営の推進には、様々なステークホルダーとの健全かつ建設的な関係性の構築が不可欠です。人権尊重へのコミットメントとして「小田急グループ人権方針」を策定するとともに、人権尊重・サステナビリティに配慮した調達・サプライチェーン構築を行うため「小田急グループサステナブルサプライチェーン方針」を策定しています。これらの方針は、当社グループの従業員、お客さまや地域のみなさまを含め、当社グループ事業に関わる取引先を含めたサプライチェーン全体に適応されます。各方針の遵守を通じて、全てのステークホルダーの人権尊重およびグリーン調達の取り組みを推進しています。

戦略

事業活動により自然環境に与えるネガティブな影響を最小化し、ポジティブな影響を最大化するためには、事業と自然との関わり、関連するリスク、機会を把握する必要があります。そこで、2024年度よりTNFDフレームワークに沿って当社グループセグメントごとの依存、影響度およびリスク、機会の特定、評価を実施しています。2024年度における分析は、当社グループの事業と自然との関連性を網羅的に把握するために、主要セグメントである交通業、不動産業、生活サービス業および、これら事業の調達品生産、製造過程(上流)を対象としました。生活サービス業は多様な事業を含むため、飲食料や衣類などの調達品の観点で自然との関連性が強いと想定された百貨店業、ストア業、ホテル業、レストラン業を対象としました。TNFDフレームワークで自然関連課題の評価を行う分析手法として推奨されている、LEAPアプローチに沿って自然資本との関連性およびリスク、機会を分析、評価しています。

[LEAPアプローチ]

(1)自然資本への依存、影響項目の把握

事業と自然との接点を把握には、TNFDで推奨されている分析ツールの1つであるENCORE※1を用いて評価しています。評価結果をヒートマップで示したものが下図になります。分析結果を踏まえ、鉄道、不動産業では、重機等を用いる建設やメンテナンスのプロセスが自然への影響が大きく、生活サービス業では食品や飲料などの調達物生産過程が自然への依存が大きいと認識しています。

※1 ENCORE:国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)他が開発した、経済活動と自然との関わりである依存、影響関係を分析するツール (2024年6月分析)

[自然資本に関連する事業プロセスの特定とヒートマップ評価]

自然への影響自然への依存
インプットアウトプット供給サービス調整・維持サービス
事業名サプライ
チェーン
事業内容 陸域の
土地改変
淡水域の
土地改変
海域の
土地改変
水の利用その他
資源利用
GHG排出非GHG
大気汚染
物質
水質汚染
物質の
放出
土壌汚染
物質の
放出
固形
廃棄物
騒音に
よる生物
への
悪影響
その他有害物質除去・緩和大気関連水関連土壌関連その他
地表水地下水遺伝子
材料
木材や
布など
その他の
素材
使役動物
による
労働力
分解機能ろ過機能大気や
微生物に
よる汚染
の緩和
植栽に
よる換気
気候調節水質浄化 水流維持土壌の
流量調節
土壌の
質調節
植生によ
る斜面崩
壊の防止
洪水や
暴風雨の
防止
魚介類を
育む水域
の維持
作物の
花粉媒介
生物によ
る病原生
物の除去
生物に
よる
害虫除去
騒音・
光害低減
文化的
サービス
交通業上流車両調達
建材調達
燃料・
電力
調達
直接
操業
クルーズ
運営
鉄道敷設・
メンテ
ナンス
施設管理
鉄道運営
不動業上流建築資材
調達
直接
操業
建築
施設運営
不動産
管理
生活
サービス業
-百貨店業
-ストア業
-ホテル業
-レストラン業
上流建設
食料・
飲料生産
食品・
飲料加工
輸送
直接
操業
施設管理
施設運営
…Very High(とても重要)
…High(重要)
…MediuM(普通)
…Low(関連性低い)
…Very Low(関連性ほぼなし)
…Not Detected(不検出、該当なし)

ENCORE分析の結果から、特に依存、影響度が大きい(High、Very High)と評価された項目を、当社グループの事業が依存している重要な自然資本および、事業を通じて自然に及ぼす重要な影響と評価しました。重要な依存、影響項目と当社グループ事業の関係性をまとめた結果は、以下の図に示す通りです。

小田急グループ事業における生物多様性と自然資本との関わり

「統合報告書2024」内で開示

(2)優先地域

TNFDにおける優先地域とは、自然の脆弱性が高く、生物多様性にとって重要な「要注意地域」および、事業にとって重要な自然への依存、影響、リスク、機会が存在する「マテリアルな地域」の集合とされています。
要注意地域を把握するため、自社操業拠点および鉄道路線を対象に地域分析を実施しました。TNFDガイダンスを参考として、生物多様性の重要性、水ストレスの観点から分析を行いました。生物多様性の重要性が高い地域は、IBAT※3、QGIS※4を用いて、操業拠点1km圏内および鉄道路線上に、生物多様性重要地域(KBA)および世界保護地域データベースに登録されている保護地域に位置しているかを分析しました。また、Aqueduct Water RiskAtlas※5を用いて、操業拠点の水ストレスを評価しました。分析の詳細項目は以下の通りです。

※3 IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool):UNEP-WCNCなどが開発した生物多様性評価ツール
※4 QGIS:地理空間データを扱うためのGISソフト
※5 Aqueduct Water Risk Atlas:世界資源研究所が開発した水関連リスク評価のツール

TNFDにおける要注意地域の定義分析内容分析詳細項目
生物多様性の重要性が高い地域拠点が保護地域または生物多様性重要地域に所在するかどうかを調査保護地域区分(IUCN保護地域管理カテゴリー)
:自然保護連合(IUCN)が、保護地域を管理目的別に区分したカテゴリー
IUCN Ⅰ(厳正・原生保護地域)
IUCN Ⅱ(国立公園)
IUCN Ⅲ(天然記念物)
IUCN Ⅳ(首都生息地管理地域)
IUCN Ⅴ(景観保護地域)
IUCN Ⅵ(資源保護地域)
生物多様性重要地域(Key Biodiversity Area:KBA)
:絶滅の危機に瀕した種や固有種の生息といった観点から選定された、生物多様性保全の鍵となる地域
水ストレスが高い地域拠点が水ストレスの高い地域に所在するかどうかを調査ベースライン水ストレス:利用可能な水供給量に対する総取水量の比率であり、40%以上で高いと判断

参照:保護地域管理カテゴリー適用ガイドライン
   TNFD LEAPアプローチガイダンスv1.1

下図は、当社グループの操業拠点が多く位置する関東地域のKBA、保護地域および弊社拠点を示しています。

当社グループの操業拠点が多く位置する関東地域のKBA、保護地域および弊社拠点

※2024年7月分析
※下記サイトからのGISデータ等を基に作成
・国土交通省国土数値情報:https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html
・環境省生物多様性センター:https://www.biodic.go.jp/
・コンサベーション・インターナショナル・ジャパン:http://kba.conservation.or.jp/index.html

分析の結果、生物多様性の重要性が高い地域として、神奈川県の箱根、江の島、大山、東京都の多摩川周辺に位置する鉄道や宿泊施設、レストランがKBAまたは保護区、あるいはその両方に位置していることを特定しました。一方で、国内拠点はいずれにおいても、水ストレスが高い地域には位置していないことを確認しています。
マテリアルな地域としては、自然資本である景観や緑地等を観光資源として活用しながら事業展開している箱根、江の島が該当すると考えています。
今後は、これら重要な優先地域を考慮して自然関連課題解決の取り組みを推進していきます。

(3)リスクと機会

特定した依存・影響関係から想定される事業リスク・機会を検討した結果は次の通りです。なお、自然関連リスク・機会の特定にあたって、TNFDシナリオガイダンスを参照して当社グループ事業にとって重要な要素が将来的にどのように変化する可能性があるかを検討し、極端な二つの将来世界であるシナリオを想定いたしました。
想定したそれぞれのシナリオでどのようなリスク、機会が顕在化するのか、影響がどう変化するのかを評価しました。

参照:TNFDシナリオガイダンスv1.0
シナリオ①:保全推進シナリオ(気候変動や自然保全に関する規制が進み、市場の関心も高まった結果、自然劣化が抑制され、当社グループでも自然関連課題に対する取り組みを促進する。)
シナリオ②:劣化進行シナリオ(気候変動や自然保全に関する規制は既存の取り組み以上に発展せず、市場の関心も薄い結果、自然劣化が進み、当社グループの取り組み状況も発展しない世界)

小田急グループ事業における生物多様性と自然資本との関わり

[リスク・機会一覧]※影響項目である「気候調節機能」「GHG排出」に紐づくリスク・機会は、TCFD「戦略」内で開示

※2

リスク
/機会
項目依存・影響項目
※「-」は依存・影響項目全てに該当
事業へ影響を与えうる主な内容対象事業影響度※2
交通不動産生活
サービス
①保全
推進シナリオ
②劣化
進行シナリオ
物理リスク慢性/急性・陸、淡水、海域の土地改変
・植生による洪水や暴風雨からの
保護、斜面崩壊の防止
土地開発や植生の劣化により生態系サービスである防災機能が低下した場合、
特に山間部の拠点において洪水土砂災害被災によるコスト増加、営業停止による収入減少
・水の利用
・地表、地下水
気候変動等の影響で水不足が発生した場合
・生産に多量の水を使用する食品等の供給が不安定となり、販売量低下による収入減少
・事業活動で使用する井水が枯渇することで取水源変更など対応によるコスト増加
・文化的サービス 生態系の劣化により景観等の文化的サービスが損なわれた場合、
箱根の自然など自然資本を魅力とした観光需要の低下による収入減少
・木材や布などその他の素材
(食料、飲料品など)
自然資本の損失により食品や衣類といった取扱製品の原材料供給が不安定化した場合、
調達見直しによる対応コスト増加、調達品の不安定化による収入減少
移行リスク政策・規制・陸、淡水、海域の土地改変 保護地域利用に対し規制が生じた場合、
保護地域に位置する拠点における規制対応によるコスト増加
・非GHG排出 大気汚染物質の排出規制が強化されることで、
設備更新や削減取り組み等の対応によるコスト増加
評判・排水の放出
・固形廃棄物
設備等で事故が発生し、水質、土壌汚染物質や有害な廃棄物が流出した場合、
評判低下および賠償責任が発生
・騒音による生物への悪影響 夜間の運行や工事によって、近隣住民や周辺の生態系に対して騒音、
光、振動などの悪影響が生じた場合、評判低下および賠償責任が発生
機会製品・サービス・文化的サービス 消費者の自然に対する関心が高まることにより、
箱根や江ノ島など豊かな自然を魅力とした鉄道関連事業や
宿泊施設、飲食店において旅客・収入増加
・木材や布などその他の素材
(食料、飲料品など)
エシカル消費や環境系認証を受けた製品の需要が高まった場合、
取扱製品転換に対応することによる収入増加
資本フローと
資金調達
- 自然保全に資する取り組みの推進を通じ、
グリーンファイナンスやESG投資からの
資金調達が増加
評判- 再生可能エネルギー燃料の使用拡大や
公共交通機関の利用による環境保全への貢献を適切に情報開示し、
多様なステークホルダーとの対話を通じ、顧客の選好性拡大や投資家での評判が向上
天然資源の
持続可能な利用
- 自然資源に配慮した原材料調達や、
商品・サービスの提供により、持続可能な自然保全に貢献し、
自然資本劣化抑制によるサプライチェーンの安定化

リスク、機会の検討を通じて、自然劣化が進行することで箱根や江の島など観光地で展開している事業がリスクに晒されることが分かり、要注意地域にも該当する地域であることから、これら操業地域での事業の重要性が高いと捉えています。当社は環境ビジョンの取り組みの一つとして自然資源の保全・活用を掲げており、植林や美化清掃活動を通じた土地再生への貢献や、環境保全活動への寄付など、優先地域における自然保全活動の取り組みを進めており、持続可能な共生圏を目指しています。今回特定したリスク、機会の対応策については、今後グループ全体の事業戦略で検討すべき事項と認識しています。

環境戦略

リスクと影響の管理

当社グループでは、「小田急グループリスクマネジメント方針」※6に基づき「リスクマネジメント委員会」を軸とした推進体制を構築し、自然関連課題も含めた事業のリスクの洗い出しや個別リスクへの対応を行うとともに、主要なグループ会社で構成する「小田急グループ・リスクマネジメント連絡会」を通じて情報共有や連携を図っています。当社グループのリスクマネジメントの基本原則としては、リスクを把握し顕在化を防止する未然防止と、リスク発生時の対応を検討する事業継続活動という2つのステップにおいて、適切な意思決定を行い、実行することとしています。特に未然防止ステップでは、毎年グループ全体で統一的な手法によって重要なリスクを洗い出し、対策の実行、見直しというマネジメントシステムを導入しています。

サステナビリティ関連課題は、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」において審議されています。自然関連課題特定のため、直接操業およびサプライチェーンの上流工程のうち、調達品生産、製造過程対象として、外部ツールを活用して事業と自然との接点である依存、影響関係の評価を行っています。自然関連のリスク、機会については、関連する依存、影響項目の評価結果、生物多様性にとって重要な地域であるか、事業規模、発生可能性などの情報を元に、定性的に評価しています。自然関連課題の分析内容の更新や取組の進捗は、その他のサステナビリティ課題とともに「サステナビリティ推進委員会」で審議しており、必要に応じて取締役会、執行役員会および取締役社長に報告します。審議した事項は、当社各部・室および小田急グループ全体で共有・連携を図っています。

※6 「小田急グループリスクマネジメント方針」

指標と目標

TNFDが開示を推奨しているグローバル中核指標に基づいて、自然関連の依存・インパクトに関して、当社グループでは下記の自然関連指標・目標を選定しています。また、水質や土壌の汚染につながる物質量は、法規制を遵守して管理しています。
今後、その他の指標についても、特定した依存、影響、リスク、機会の内容を踏まえ、当社グループが管理すべき自然関連指標を引き続き検討し、情報把握および目標設定に努めていきます。

指標 単位 対象範囲 目標 2023年度実績 データ開示
廃棄物 廃棄物排出量
(収益原単位)
t/億円 当社グループ(連結) 前年度比源 5.28 HP
※統合報告書は2025年版より
取水量
(収益原単位)
千㎥/億円 当社グループ(連結) 前年度比源 0.69 HP
※統合報告書は2025年版より

自然保全に向けた取り組み

事業と自然との関わりを分析した結果、要注意地域に該当する地域が事業にとっても重要な観光資源を有する地域であること、上流の建材や飲食料、衣類などの自然資本が自然への依存、影響が大きいことを特定しました。
当社グループは、美しい地球環境と優しい社会を未来の世代に引き継ぐことを使命として、「小田急グループカーボンニュートラル2050」を策定しています。本指針は「環境ビジョン」「環境長期目標」「環境戦略」の3つの柱で構成されており、気候変動対策の他、資源循環社会の実現、自然保全と活用の取り組みを進めています。
ここでは、自然資本への重要な依存、影響、リスク、機会に関わる当社グループの取り組み事例を紹介します。

(1)箱根地域の自然資源の保全、有効活用

ナチュラルミネラルウォーター「箱根の森から」による寄付

箱根にある当社グループのホテル敷地内で採水した天然水と足柄茶葉など沿線の自然の恵みを生かし、「箱根の森から」ブランドのナチュラルミネラルウォーターと緑茶を商品化し、小田急沿線を中心に販売しています。売上金の一部は「箱根町資源保全基金」に寄付され、箱根旧街道杉並木の保護や、仙石原すすき草原保全等、箱根地域の自然保全に活用されます。
「“ごちそうさま”を、箱根の森への“ありがとう”に。」をコンセプトとして、お客さまとともに、世界に誇る観光地「箱根」の自然環境を未来につなげていく本取り組みは、2009年度から継続実施しています。

箱根の魅力が分かる観光体験を提供

箱根の自然保全と事業拡大を両立させるため、箱根の自然の魅力の発信ができる観光プランを提供しています。例えば、環境保全への貢献と観光を両立する、エシカル旅プランを展開しています。収益の一部をお客さまが旅行中に排出するCO2相当量のJクレジット購入と箱根町の環境保全等への寄付に活用しております。地元の宿泊施設と連携した鉄道切符とのセット販売等も行っています。
また、「自然体験」をテーマに新たな箱根の楽しみ方を地域事業者と共創・発信していく拠点として、「HAKONATURE BASE(ハコネイチャーベース)」を開業し、地元ガイドと行くネイチャーツアーの開催などを通じて富士箱根伊豆国立公園の魅力を発信しています。

HAKONATURE BASE(ハコネイチャーベース)

(2)資源の有効利用

上水の再利用

電車を洗浄する際には、大量の水を使用します。当社の喜多見検車区では、車両洗浄による排水を有効利用するために中水設備を設けています。この設備によって浄化された中水は、喜多見車両基地内および喜多見車両基地の上部にある「きたみふれあい広場」のトイレの洗浄用水として再利用しています。

喜多見車両基地

水使用量削減に向けた取組み

ホテルでは、多量のリネン類の洗濯が発生します。小田急ホテルセンチュリーサザンタワーでは、洗濯で使用する水使用量の削減や洗剤による水質汚濁を防止する一環として、連泊でご宿泊をされるお客様を対象に、カードによる意思表示をもとにベッドリネン(シーツ)、タオル類の交換不要のご協力をいただいています。
また、すべての客室の水栓とシャワーに、環境に配慮した節水装置を設置しており、水使用量の削減に貢献しています。

メッセージカード

東京の木多摩産材の利用

森林が水や大気の浄化、CO2吸収や災害防止などの機能を発揮していくには、伐採、利用、植栽、保育という循環が必要です。明治神宮の最寄り駅である参宮橋駅のリニューアル工事では「多摩産材」をふんだんに使用し、木の温もりを感じられる駅に生まれ変わるとともに、森林資源の有効活用にも寄与しています。

小田急線 参宮橋駅

食物残渣の飼料化

当社グループから排出された食品残渣をリキッド飼料に再飼料化し、養豚農家へ提供しています。この飼料で育った豚を「優とん」ブランドでOdakyu OXの店頭や小田急百貨店の贈答品として販売することにより、食品リサイクルに貢献しています。

食品リサイクルのしくみ

(3)生物多様性の保全

「トキ保護基金」への寄付

小田急商事株式会社(Odakyu OX)では、絶滅の危機にあるといわれている朱鷺(トキ)の保護増殖と野生復帰に向けた環境づくりや試験研究などへの支援を目的とする「トキ保護基金」の活動に賛同し、「特別栽培米佐渡産コシヒカリ」と「新潟県佐渡ヶ島米コシヒカリ」の売上金の一部を同基金へ寄付することで活動に参画し、佐渡の自然保護やトキの増殖に貢献しています。本取り組みは、2006年度から継続実施しています。

絶滅の危機にあるといわれている朱鷺(トキ)

神奈川県「森林再生パートナー制度」に賛同、寄付

公益財団法人小田急財団では、神奈川県「森林再生パートナー制度」に賛同、寄付を行っており、神奈川県清川村宮ケ瀬にネーミングライツ森林として「小田急の森」を保有しています。これにより、森林の保全(生態系サービスの防災・保水機能)や年間約50tのCO2吸収に貢献しています。期間:2022年3月1日~2027年2月28日

ネーミングライツ森林「小田急の森」

「駅からはじまるいきもの探しいきものGO」の実施

鉄道横断型社会実装コンソーシアム「JTOS(ジェイトス)」※1の第一弾として、生物多様性ビッグデータから自然環境保全に取り組む株式会社バイオームとネイチャーポジティブ※2な社会の実現を目指し共創した取組みであり、スマホカメラでいきものを撮影するだけで名前を判定できる、いきものコレクションアプリ「Biome(バイオーム)」を活用し、アプリを通じて、参加者には鉄道沿線を巡りながら楽しく生き物のデータを集めていただき、集まったデータと各駅の所在地情報などと組み合わせて分析を行うことで、各沿線の垣根を越えた生物多様性の見える化を目指すネイチャーポジティブイベントを実施しました。
期間:2023年9月23日(土)~2023年12月10日(日)

※1 JR東日本スタートアップ株式会社、東急株式会社、株式会社西武ホールディングス、当社で構成
※2 企業・経済活動による環境への負荷を抑え「生物多様性を含めた自然資本を回復させる」ことを目指す取り組み